第5話 真っ白
真っ白。
左右上下。
目に映る景色はすべて真っ白。
とりあえず、分かっていることはVRゲーム用のヘッドセットが無くなっていて目の前がすべて真っ白ということだけだ。
ヘッドセットが無くなっていることから、多分現実なのだろう。
とりあえず手足を動かしてみるか。
うん、とりあえず動く。
次は歩いてみるか。
実は床がないってこともあり得るからな。
床を確認しながらっと。
特に下に落ちるということもないし、床がないということもなかった。
周囲には……床はあるが壁がないな。
どこまでも真っ白な空間。
歩いてみたはいいが、これは終わりの見えない散歩だな。
とりあえず座って、現状を整理してみるか。
ゲームをプレイしていて気がついたら白い空間に。
この空間の中で歩くことはできる。
歩いてみるとどうやらかなり広い空間のようだ。
10分ほど歩いたが今のところなにもない。
駄目だな、現状が好転しそうな要素はないようだ。
こういう時は一度眠ってしまうのがいいのかもしれない。
一度眠って目が覚めたら、もしかしたら自分の部屋ってこともあるだろう。
暑くも寒くもない心地よい温度ではある。
遅い時間までゲームをしていたのもある。
どうやらすぐに眠れそうだ。
現実逃避も含めて少し眠ろう。
そう思ったら急にうとうととしてきた。
どれくらいの時間眠っていたのか、久しぶりにゆっくりと眠ることができた。
淡い期待は打ち砕かれたか。
白い空間に変化はなしか。
「おぬし、凄まじい度胸だな」
後ろ?
白髭の筋肉質な男。
誰だ?
「この状況で10時間も熟睡とは」
どうやら結構な時間を眠っていたらしい。
「度胸があるのかただの馬鹿なのか」
微妙な評価を得ているようだ。
なんにしてもとりあえずは挨拶か?
ここにきて初めての自分以外の何かだ。
しかも言葉が通じる。コミュニケーションがとれる相手は貴重だ。
「おはようございます」
「うむ?」
「今は朝ではありませんでしたか? 言葉が通じるようだったので朝の挨拶をと」
「ん、ああ。おはよう」
どうやらこちらの習慣も通じるようだ。
この状況についても確認してみよう。
「いきなりで申し訳ないのですが、教えていたただけませんでしょうか。ここはどこでしょうか?」
「む?ここか?」
「はい」
「ここは儂の作った世界じゃな」
「?」
「そして儂が閉じ込められている世界でもある」
「??」
「まあおぬしのいた世界の知識で考えてもわからぬことだらけだ」
「私のいた世界?」
「そうじゃ、地球といったかの?」
「では、ここは地球ではないと?」
「そうじゃな、地球ではないな。というかおぬしの言う地球とやらは厳密にはもう存在しておらん」
「???」
地球が存在していない?
嘘にしては壮大な話だ。
壮大すぎて今のこの状況だと危うく信じてしまいそうだ。
地球が存在していないとは……
ん?
厳密には存在していない?
「厳密にはとおっしゃいましたが?」
「ふむ、地球にあったほぼ全ての物は変わらず存在している。ただ地球という土台だけが無くなっている」
「?」
「直前に警告があったであろう? 地球はガンドラルに飲み込まれたのじゃよ」
「?」
「よくわからないという顔じゃな」
「そうですね、おっしゃっている単語の意味は一つ一つはわかるのですが、話を総合すると理解が追い付きませんね」
「まあ、おぬしが理解しようが理解しまいが地球はガンドラルに飲み込まれて無くなったということじゃ」
まったく理解が追い付かない。
どうやって事実を確認するか。
先ずはここから出ないことにはどうにもならないか。
なにせこの男以外は全面真っ白。
なにかを確認する術も情報もない。
「ではもうひとつ教えて下さい。この真っ白な状況を解決するにはどこに行けばよろしいでしょうか?」
「今のままではどこに行っても無駄じゃな」
「今のままでは?」
「そうじゃ、今のままではな」
「では何かしらの方法はあるということでしょうか?」
「ある」
「その方法は?」
「儂を倒すことじゃ」
「?」
「まあ、その前に儂の配下全てを倒してからじゃがな」
「?」
「まずは第一の配下ランガーじゃ」
腰に刀?
外見はまさにモーガン・フ○ーマンだな。
「では全てを倒したその先で待っておるぞ」
白髭の男が消えた?
ランガーと呼ばれた男は?
刀のようなものの柄に手を掛けた!?
「参る」
な!?
斬られた?
…………。
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