【短編】言うは難くも花と咲く
CarasOhmi
言うは難くも花と咲く
#1 昼時・カラカルの本音
どうして、そんな楽しそうな顔で遊んでるのよ。どうして不安そうにしていないのよ。 私が、どれだけ心配したか解かってるの。どれだけ不安な気持ちだったか、解かってくれないの。
キュルルとの旅、楽しかったよ。
大きなセルリアンに追われたときも、レッサーパンダの見栄っ張りに振り回された時も、水の上でゆらゆらと置いてけぼりにされたときも。パズルが完成したときも、ビーストから一目散に逃げたときも、ヒリヒリする料理を食べたときも、木の上でかけっこを眺めたときも。
スリリングで、わくわくして、知らないことが沢山で、一緒に遊んで、友達も増えて……サバンナにいた頃じゃ、こんなことなかった。「馬鹿馬鹿しい」「興味がない」「怪しい」「怖い」そんな気持ちで避けてきた色んなことを、キュルルとの旅では沢山知れて、本当に楽しかったよ。
終わっちゃうんだよ、この旅は。キュルルがおうちに着いたら、終わっちゃうんだよ。
もっともっと一緒に遊びたい。もっと色んな所に行って、まだ見たこともない景色を沢山見せてよ。アンタの描く絵をもっと見せてよ、アンタの変な遊びをもっと教えてよ。
イヤよ、お別れなんて。もっと一緒に遊ぼうよ。
どうして、そんな楽しそうな顔で遊んでるのよ。どうして不安そうにしていないのよ。私が、どれだけ寂しいか解からないの。どれだけ一緒に居たいのか、解かってくれないの。
ずっと一緒に旅をしてきたのに、おうちの子と会えたら、もうそれで良いっていうの。おうちなんか見つからなければ良かったのに。アンタが帰る場所なんか、無ければ良いのに。
……私は、アンタが悲しむ顔なんて見たくない。だから、おうちを見つけてあげなきゃいけなかった。けど、だからって、お別れしたいわけないじゃない。なんで解かってくれないのよ、馬鹿。
……キュルルなんか大嫌い。もう知らない。顔も見たくない、会いたくも無いんだから、もう勝手にしてよ。
こんなにアンタが大好きなのに、本当に大切な友達なのに、そんなことにも気づいてくれないアンタなんて、大嫌いよ。
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