第7話 学校





翌朝、メイは異様な音を感じて飛び起きる。

壁掛け時計から察するに時刻は未だ朝の6時半。


ガタンッ


寝惚け眼を擦りながらも、音の方へ顔を向ける。

どうやら郵便受けに何か入れられた様だ。


欠伸を漏らしながら身体を伸ばし、立ち上がる。

若干千鳥足ながらも玄関に向かうつま先が、何かに引っかかった。


「ちっ!邪魔っ...!」


ガンッ


『ぐへぇっ...!!』


どうやらメイの寝起きは最悪らしい。

床で寝ていた(何故か)ランをつま先で蹴り、壁に叩きつけたのだ。


気を取り直し、郵便受けの中身を確かめる。


中には厚めの封筒が一通。

封蝋には盾の前に双剣が交差するハンターズギルドの紋章が刻印されていた。


『どうやらハンターズギルドは仕事が早いらしいな。』


背中を痛そうに庇いながらランが言う。


が、それを無視して封筒の中身を慎重に引き抜く。

そこには2枚の紙と2枚のカードが入っていた。


入学案内書

学生証

ハンターズギルド公式規約

ハンターズギルド公認ハンター証


見落としが無いように、慎重に1枚ずつ熟読するメイ。


まずは入学案内書だ。

簡単な地図と入学試験の日時、内容が書かれている。


(あぁ、試験があるんかぃ!)


推薦の癖に試験がある事に悪態をつきながらも、しっかりと内容を確認する。


日時:帝歴223年4月7日

場所:ドレイム領国内・『アンソロポジー魔術学園』第一グラウンド

内容:クラス分けに伴う座学・魔術・体力の各分野の試験


(ざ、座学っ!)


メイは勉学において、この世界では5歳までの記憶しかない。

魔術と体力はなんとかなるであろうが。

そして試験日について。


(4月7日って...丁度三日後やんけ!)


思わず不慣れな関西弁が出てしまう程に急である。


そして学生証。

アンソロポジー魔術学園学生証と書かれた下に、メイという名が書かれ、いつの間にか撮られた顔写真がある。


(と、盗撮やんけ!)


この世界に盗撮やら人権やらの概念があるのかはわからないが、芽衣の暮らしていた現代社会では犯罪に数えられる事も少なくない。


ハンターズギルドの公式規約は、何やら難しい事がつらつらと書いてある。

その中でも、メイに重要な部分は『3年契約』の所だ。


・ハンターズギルド推薦で次の学校へ入学した者は、そのハンターズギルドへの3年間の勤続、貢献義務がある。

『アンソロポジー魔術学園』『マーシャル国際武術学園』『ソーサリー魔法学院』『プラクティカル工学院』



そして最後の方に書いてあるお決まりの台詞。



・これらを破る、守れない場合、ハンターズギルドへの所属を解除する。



(まぁでも、毎日ギルドに来いって訳でもないし良いかな。必要なら『秒』で行けるし。)


そして公認のハンター証にも顔写真と、デカデカと記された『D』の文字。

最低ランクの証だ。


ハンターランクは『D』『C』『B』『A』『S』のランクがある。

勿論『S』が最高で、大公や侯爵クラスでもSランクは居ない。

なので、Sランクは『国を動かせる』とも言われるくらいの逸話がある。

それほど実力と信頼を兼ね備え無ければいけないという事の裏返しにもなるが。


例によって、メイはそんなこと梅雨知らず呑気に欠伸をしていた。




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