ふたりがケンカする度に、浮上してくる問題があった。どちらが、告白をしたのか?
素敵なシチュエーションでの告白は、ふたりの記憶を遡っても間違いはない。
しかし、何故、この問題が勃発するのか……? それは、互いに意識の相違があるからだ。自分が告白された側なんだと思っているのだ。
では、その当時を振り返ってみようか……?
卒業式、別れの季節に交わす言葉、その瞬間、ふたりはロマンチックモードに突入する。
ふたりが、お互いの言葉を、いい意味で意識して、その反応を、いい意味だけで捉えてしまう。
何度、読んでも、そこに明確な解答はないというのに、どういうことか……? そういうことだ!
どちらが告白をしたのか……?
そんな些細なこと、もう、どうでも良くなるかもしれませんよ。
こんな、素敵なふたり、わたしだって、憧れてしまう。
「かわいい」には、たとえば
動物や赤ちゃんに対する感想としての「かわいい」があり、
女性(の顔)を評しての「かわいい」があり、
洋服やアクセサリーを見ての「かわいい」があり、
と、いろいろあるけれど……
こういう小説に対しても、「かわいい」と
いっていいように思うわけです。
細かい描写はほとんどしていないのに、
登場人物たちの「かわいい表情」が見えてくるのですから。
ところで本作は、ちょっと面白い構造になっています。
たとえるなら、映画の『カメラを止めるな!』のような。
(もちろん、タイプは違いますが)
その演出によって、
若いカップルの告白、という単純明快なモチーフに
ひとひねりが加わっていて、読後感も爽快です。