第26話 司 聖秋

司は青い手帳を繰りながら、ばつ印の付いた名前を久々に見返した。

「レイ、レム、ヨシ、コウ・・・八月一日、お前は生きられるはずだ。シオン、B.Eとその家族のところへ行けばいい。普通に生活していれば、人が勝手についてくるはずだ。

他の連中も・・・消える奴は放っておいても消える、か。」

雨が上がったばかりの野っ原に寝そべった。青臭い匂いがたちこめて、気分が良かった。

「特別な力なんかがあったって、結局行き着くところは同じだ。みんな死ぬ、私も死ぬ。なにも変わりはない。」

太陽が眩しかった。空は限りなく青く、流れる雲は白く黒く気まぐれに移ろう。

「やっと、終わるのか。」

気が遠くなりそうだった。いつにない息苦しさを覚え、視界が霞んで行く。

百合の花が傍で揺れていた。堪らなく似合わない白という色が、光を見た最後だった。


同級生たちが群がったとき、そこには既にトレードマークとも言えた青い玉と共に、彼の命も永遠に失われていた。

「司、司っ!」

眠るように、という言葉がこれほど似合う死に様もなかった。彼は限りない幸せの中息絶えたように、僅かに微笑みを湛えていた。


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