第3話 「一人暮らし?」

 〇二階堂 泉


「一人暮らし?」


 晩御飯。

 みんなが揃ってる所で…あたしは切り出した。


「うん。一人で暮らしたいんだ。」


 姉ちゃんは口を開けたままあたしを見て。


「でも…泉、料理できないじゃない…」


 困ったような声で言った。


「何かあったのか?」


 兄ちゃんに顔を覗き込まれて…何となく目を逸らしてしまった。


 …兄ちゃんの父親が、早乙女千寿…さんだと知って。

 続いて…あの公園で会う男が…その息子であるに違いないと気付いて。

 あたしは、家に居辛くなった。

 母さん。

 どうして、父さん以外の人と…?



 あたしはブラコンだ。

 ファザコンよりも酷い。

 兄ちゃんが大好きで、兄ちゃんに褒められたくて、色々頑張ってしまうような単純な奴だ。

 その兄ちゃんが…あたしの大好きな父さんの子供じゃないって事は、酷く重くあたしにのしかかった。


「いいんじゃないか?」


 そう言ってくれたのは、意外にも父さんだった。


「…いいの?」


「社会勉強って事で。」


「…ありがと…」


「高校出てからでしょ?」


 姉ちゃんは嫌そうにそう言ったけど。


「…早く出たいんだ…」


 あたしがつぶやくと。


「ああ…陸が昔住んでた所、最近改築して空きがあるって言ってたわよ。」


 母さんは、茶碗に視線を落としたままで言った。


「…そうなの?」


「ええ。一人暮らしにはちょうどいい広さ。」


「…そっか…じゃ、明日聞いてみる。いい?」


「ええ。」


「ちょ…ちょっと待って。なんでこんなにスムーズに?」


 兄ちゃんが、箸を置いて言った。


「まず、どうして泉は一人暮らしがしたいんだ?」


「……」


「泉、理由もなく家を出たいって事か?」


「…それは…」


 あたしが言葉に困ってると。


「いいじゃないか。」


 父さんが、笑いながら言った。


「海も空も家を出る事なく、うちに居てくれて…それはそれで嬉しいが、挑戦や冒険はしたくないのか?って気にはなってたんだ。」


「仕事が冒険だらけなのに、他でそんな気になるかよ。」


「ははっ、本当だな。」


「親父。」


「海、せっかく泉が家を出てみたいって言ってるんだ。尊重してやろう。」


「……」


 父さんの言葉に、兄ちゃんは何も言えなくなった。


「…ありがと。」


 あたしはそう言って、席を立つ。


 食器を片付けて部屋に上がると、姉ちゃんが来た。


「…何?」


「んー…聞きたい事は色々あるけど、あんたにも何か思う事があるんだろうからね。」


「……」


「寂しくなったら、無理せずに帰ってくんのよ?」


「…うん。」


 姉ちゃんはそれだけ言うと、手を振って出て行った。

 あたしは唇を噛みしめたまま、少しずつ荷物をまとめ始めた。



 * * *

 〇二階堂にかいどう たまき


「…たぶん、俺と紅美の話を聞いたんだと思う。」


 俺がそう言うと、しきは小さく溜息をついて目を閉じた。


「…どうして…紅美は気付いたのかしら…」


「おいで。」


 手を伸ばすと、織は素直に腕の中にやって来た。



 新婚の頃は、この寝室に海と空も一緒に寝ていた。

 それでも広く感じていたのに、海が一人で寝るようになり、海の代わりに泉が加わって…それもわずか数年。

 空も泉も自分の部屋で寝るようになった。

 二人きりの寝室は手が届かないんじゃないかと思うほど広く感じたが、歳を取ってベッドのサイズを変えて一つにした。



「…今さら新婚みたいだな。」


 織の頭にキスしながらつぶやくと。


「…あたしと結婚して、後悔した事ある?」


 思いがけない言葉。


「何だそれ。あるわけないだろ。おまえは?何か不満が?」


「不満なんて…ずっと大事にしてもらって…」


「大事にしたくもなるさ。実年齢よりずーっと若く見えて可愛い嫁さん持ってたら、誰だって毎日張り合いが出るだろ。」


 俺がそう言うと、織は小さく笑って。


「そんなの、あたしは…あなたの帰りが遅いと心配。誰かに誘われてやしないかって…」


「50のオッサン、誰が誘うんだよ。」


「あなた50歳に見えないもの。」


「織も44に見えない。」


「ひどーい。44じゃないもの。」


「ふっ。43には見えない。」



 初めて…織に会った時。

 俺は22歳で、織は15歳。

 恋愛対象になるはずもない年齢だった。

 俺にとって、織は『お嬢さん』でしかなく。

 お嬢さんを守る。

 それが任務。

 恋なんて…あり得なかった。


 坊ちゃんと二人きりだった生活から、一気に大勢が済む敷地内への環境の変化。

 それに戸惑いながらも…垣間見せる無防備な笑顔。

 どこか不器用で、だけど必死に気持ちを伝えようとしてくれる…


 一度は傷付けて信用を失くした事もあったが…無邪気に腕を組まれたり、抱きついて来られたり…

 特に、海を出産してからの織は一気に大人びて…毎日、気持ちを抑える事に必死だった。


 やり場のない気持ちをどうにかするために、気のない女性と付き合った事もある。

 だけど…結局は上手くいかなかった。

 毎日織の笑顔を見て、その声を聞いて、気持は膨らむばかり。

 いつか…誰かの物になってしまう。

 そう思うと、自分の立場を呪った。

 …若かったな。



「…何考えてるの?」


「…おまえがボタン外した夜の事。」


「やっ…もう!!どうして今それ!?」


 織が起き上がって、顔を赤くした。


「夢みたいだったと思って。」


「…も…もうっ…泉の事…考えてるのかと思ったのに…」


「あいつは大丈夫だよ。」


「……」


「少し離れて、考える時間をやろう。」


「…うん…」


 織をギュッと抱きしめる。



 あの時、まさか織が俺を好きだと言うとは思わなかった。

 俺の中で…織はずっと早乙女くんを好きだと思っていたから。



「…いつから俺の事好きだった?」


 まるで若造だな。

 聞いておいて、自分の青さに笑いが出る。


「……昔過ぎて忘れたわよ…」


「ついこの間だろ?」


「何十年前?」


「その証拠に、おまえ全然変わってない。」


 首筋に唇を落とす。


「…環…」


「…久しぶりに名前で呼ばれた。」


「……海のために風鈴をつけてくれた時…」


「ん?」


「環って、モテるんだろうな…って思った。」


「…そんなので?」


「うん…それから…母さんの命令でデートして…」


「懐かしい。」


「もう、環がそばにいない生活なんて…考えられなくなった。」


「……」


「愛してる。これからもずっと…この気持ち変わらない…」


 …ああ。

 俺は、なんて幸せなんだろう。


「…俺が先に言おうと思ったのに…」


「ふふっ…残念ね…」


「…愛してるよ。」


 仕事上…どうしても、現場では夫婦としての顔は出せない。

 信じ合っているつもりでも、こうやって話してみればお互いやきもきしている事を知ったりもする。

 だけど一度つないだ手を離すつもりは、俺にはない。

 死ぬまで…

 いや、もし生まれ変わったとしても。

 俺はまた、織に出会う運命にあると思う。


 * * *


 〇二階堂 泉


「あ…あのっ…」


 いきなり、声をかけられた。

 振り向くと…髪の毛の長い…絵描き。

 つまり…

 早乙女。


「…何。」


 あたしは無条件に冷たい声を出してしまった。

 たぶん、目つきも悪い。


「あ…えーと…僕、早乙女 園といいます。」


「…公園で絵を描いてる人ね。」


「はい。えと…美術学校の一年で…」


「…一年?」


 …て事は、あたしより一つ上?


「美術学校って、桜花のデザイン科?」


「あ、違います…日野原の近くにある…」


「えっ。」


 つい、眉間にしわを寄せた。

 日野原の近くにある美術学校の一年って…


「…何歳?」


「…16です。」


 あたしより年下!?


「あー…老けて見られるんで…」


 口に出してないけど、表情で伝わったようだ。

 うん。

 あんた、老けてるわよ。



「えっと…」


「……」


 あたしは早乙女を、上から下まで舐めるような目で見た。

 こいつには…

 兄ちゃんと同じ血が流れてる…



「名前…教えてもらっていいですか?」


 何なの。

 早乙女。

 どこまであたしを苦しめる気?

 あんたの父さんと、あたしの兄ちゃんは、親子なのよ!!


 ふっ…と。

 暗い気持ちがあたしを支配した。

 …こいつも、壊れたらいいのに。


「…あたしは、二階堂 泉。18よ。」


「…二階堂?」


「ええ。これ、携帯の番号。」


「えっ。」


 あたしは一人暮らしをするにあたって入手した携帯の番号を紙に書いて、早乙女に渡す。


「いつ電話してもいいから。」


「あ…いや…」


 ハッキリしない早乙女。

 顔は真っ赤。

 何、あんたあたしを好きなの?

 ふん。

 いいわ。

 その気にさせておいて、こっぴどくふってやる。

 あたしが苦しんでるのより、もっともっと。

 あんたも苦しめばいい。

 それから…


 あんたの父親も。



 * * *


 〇早乙女 園


「あたしは二階堂泉。」


 …泉さんの、凛とした姿を思い出して…頭の中がぽわぽわする。

 携帯の番号まで…くれた。

 なぜか冷たい目で見られたけど…

 公園で絵を描いてる人ね。って…覚えててくれた!!


 …て言うか。

 二階堂って。

 まあ、うちの市には多い苗字だけど…

 父さんのバンドの、もう一人のギターの人も…二階堂さん。

 あそこには、僕と同じ年の紅美と、一つ下のがくがいるけど…どちらも泉さんに似た感じないし…

 まあ、親戚とは限らないか。


 小腹がすいて、キッチンに降りると、リビングで父さんが何かを並べてた。


「…何やってんの?」


「んー?写真の整理。」


 父さんのバンドは、誰もメディアに顔を出してない。

 だから、こうやってテーブルの上に並んだ写真に、みんなが笑顔で写ってるのは…珍しい気がする。

 メンバー仲がすごくいいからか、昔はしょっちゅうホームパーティーなんかがあったよなあ。

 そう思いながら、一枚の写真を手にする。


 僕たちが大きくなるにつれて、そういう会に行かなくなって。

 今じゃ、親だけが集まって楽しんでいる。


「…二階堂さんてさあ…」


「んー?りくがどうした?」


「……」


 核心をつこう。


「二階堂 泉さんって…陸さんの知り合いにいる?」


 さりげなく言ったつもりだったけど、父さんはハッと顔を上げて。


「知り合いか?」


 僕の顔を見た。


「えっ…あ、いや…華月さんの親友って…」


「ああ…泉ちゃんは、陸の姪っ子だよ。」


 …二階堂陸さんの、姪っ子。


 って事は…

 陸さんの、兄弟の娘。

 ええええええ!!

 意外と近い!!気がする!!

 自然と顔が緩んでしまったのか、父さんは僕の顔をじっと見て。


「…おまえ…そんな所まで俺に似なくても…」


 額に手を当ててうなだれた。


「えっ…なっ何も別に…」


「…好きなんだろ?」


「……」


 そう言われて、たぶん僕の顔は真っ赤になってしまったのだと思う。


「…そうか。でも…ちょっと難関だな。」


「え?どうして…?」


 父さんは写真に視線を戻すと、しばらく黙ってしまった。

 ええと…なんでだろう。

 陸さんの姪っ子…だから?


 眉間にしわを寄せたままで、僕もその場でじっとしていると。


「…陸の実家は、特殊なんだよ。」


 父さんが、僕に背中を向けたままつぶやいた。


「…特殊?」


「ああ。これ、あまり知られてないから…言うなよ?」


「う…うん…」


 父さんは前髪をかきあげながら僕に向き直ると。


「…ヤクザなんだよ。」


 真顔で言った。


「………え?」


「ヤクザ。二階堂組って、今は…看板も出してないかもしれないけど、昔は大きな門の前に掲げてあった。」


「ヤクザ…ヤクザって…」


 すごく思いがけない言葉が出てきて。

 そのせいで、僕の頭の中には、水戸黄門とか、桃太郎侍とか、テレビでやってた再放送の時代劇がグルグル…


「お…おひけぇなすって?」


「何のテレビだよ。」


 父さんは小さく笑って、また写真の方に向いた。


「…もし、泉ちゃんの事を本当に好きだとしても…信じてもらうには、指を切れって言われるかもな。」


「えっ!?」


「…………ふっ、冗談だよ。」


「なっ…なんだよもう!!」


「ははっ。でも…それぐらいの覚悟がいるんじゃないかな。誰を好きになるとしても、相手を守るって気持ちは自分の何かを失くしてもいいってぐらいの覚悟がいるし。」


 …なんだろ。

 父さん、やけに…しみじみと語るなあ…


「…母さんと出会った時も、そう思ったの?」


「母さんは世界一強いからなあ。俺が守ってもらう立場に…」


「父さん…」


「ははは。冗談だよ。母さん、柔道は強いけど、それ以外は不器用な女の子だったから…年上だけど、俺が守らなきゃって思ったな。」


「大恋愛?」


「……」


 僕の質問に、父さんは…何だか穏やかな顔になって。


「大恋愛…そうだな…いや、母さんとは…大恋愛って言うよりは…」


「よりは?」


「…いや、これはお前にはまだ早い。」


「なんだよー!!期待して聞いてたのに。」


「あ、お茶入れてくれ。」


「もー。」


 父さんのリクエストで、お茶を入れる。


 …そういえば、父さんと母さんの馴れ初めなんて、聞いたことないなあ。

 知りたいと思ったこともないけど…今は、ちょっと気になる。

 いつか僕も結婚して、子供が生まれて…どんな風に出会ったの?って聞かれたら…


『父さんは公園で絵を描いててね』


『そう。で、母さんに一目惚れしたんだよ』


『えっ、一目惚れだったの?あなた』


『そうだよ』


 …なんて…

 ああ、もうすでに泉さんと結婚する気でいるなんて…


「…園。」


「ん…えっ、何?」


「何か入れたのか?」


「え…?」


 父さんに指摘されて自分の手元を見ると。

 妄想のあまり、僕はお茶をティースプーンでかきまぜていた。



 * * *


 〇早乙女千寿


「……」


 赤くなった園の顔を思い出して、少し…切なくなった。

 俺も、織に恋していた頃は…あんな風に純粋だったんだろうか。

 …うん。

 純粋だったな…



 父親が浅井 晋だと知って。

 当然のように用意されていた茶道の世界から、全く別の未来が自分にはある。

 そう思えて…何もかもが変わった。

 だけど、俺を本当の息子のように愛して育ててくれた父さんに…ずっと後ろめたい気持ちがあった。

 俺が親父に憧れる事は、家族に対して裏切りになる気がした。


 そんな、もやもやした気持ちを持ち続けて。

 気がつけば、俺だけが立ち止まったまま、歳月は流れていた。

 焦った。

 悩んだ。

 家のために…

 母さんがそうしたように、家のために生きるべきなのか…。


 そんな時、織に出会った。

 透明感のある、白い肌。

 一度見たら忘れられないような…少しブルーがかった大きな瞳。

 衝撃的だった。

 初めて会ったのに、自分の生い立ちを話してしまうほど…俺は、織に自分の事を知ってほしいと思った。


 そして、織もそうだと知ってからは…織がいてくれるなら、俺はどこへでも行ける気になった。

 自分の立場も捨てられる。

 家族には…すごく申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど…

 夢を追いたい。

 本気でそう思えたのは…織のおかげだ。


 織を抱いた日の事は…今でも忘れられない。

 お互い、たどたどしかったが…お互いを欲する気持ちが止まらなかった。

 …まさか、その一度で…織が妊娠なんて。



 事実を知らされていなかった俺は、訳も分からず織から別れを告げられ。

 隣のクラスだった陸に、織に会いたいと詰め寄ると…


「おまえ、自分が何したか分かってんのかよ!!」


 そう言って…殴られた。

 何度も何度も…陸は泣きながら俺を殴った。



 そのまま…織に会いに二階堂家に行って…初めて知った。

 ヤクザ。

 だけど、そんなもの関係ない。

 俺は…織と子供と…それだけでいいと思った。


 だけど、所詮…俺はガキだった。

 夢を掴む事が…織への愛だと。

 そう思う事で、全ての事から許されようとした。

 しばらくは抜け殻だった。

 もう、あの声も、あの笑顔も。

 二度と手が届かない。



 何とか踏ん切りをつけようと、がむしゃらにギターを弾いた。

 時間が薬になったのも事実。

 だけど…スカウトされたバンドに…陸がいた。

 陸と居ると…自然と情報が耳に入る。

 子供の名前は…海。

 俺の子供。

 だけど、違う…。

 苦しかった。

 どうにかなりそうだった。

 だけど陸は。


「現実から目を背けてどうする?」


 敢えての…荒治療。

 一緒にバイトをしながら…海くんの話を聞かされたり…

 織が…結婚する話も聞いた。



 狂いそうだった。

 バンドも辞めようか悩んだ。

 それでも…家を捨ててまで、織への愛で夢を掴もうとしてきた事を…

 ゼロにしてしまうのか?

 織が誰と結婚しようが…

 俺の愛は、確かにそこにあった。

 なら…構わないじゃないか。



 ある日、公園のそばで声をかけられた。


「この子、ちょっと見ててもらえますか?」


 背の高い、男の俺が見ても惚れてしまうような…いい男だった。

 その男は、三歳ぐらいの男の子を俺に預けて、どこかへ消えた。

 …まさか、このまま消えるつもりじゃないよな?

 そう思ったのは一瞬で。

 子供の顔に目を落として…愕然とした。

 織に…そっくりだ。

 じゃあ、今の男が…織の結婚相手か?

 それが分かった途端、俺の中で何かが解決した。


 なんだ。

 織は幸せなんだ。

 俺が居なくても。

 …良かった。

 本音でも、強がりでもあった。

 その後、思いがけず織とも会えて…海くんと三人の時間。

 俺は血を分けたけど…父親ではない。

 そう思えた。



 織への気持ちを鎮める事が出来て。

 もう、誰も好きになれないかもしれない。

 そう思ったはずなのに…世貴子にも、一目惚れだった。

 真っ直ぐ伸びた背中。

 小さな本屋の中であふれた正義感に。

 俺は自分がドラマに登場している気分になった。



 世貴子とは…大恋愛じゃない。

 …じゃあ、なんて答えよう。

 織との恋が、情熱的だったとすると…世貴子とのそれは、穏やかな愛。

 実際…世貴子は海くんが俺と織の子供だと気付いた時は、嫉妬で苦しんだと言ったが…今でも時々、道場で海くんに会う事があると言う。

 そんな時には、彼の成長を心から喜び…それを俺に伝えてくれる。


 俺より三つ年上で、だけど全然そう見えなくて。

 俺が守ってあげなきゃな…なんて思ったけど。

 本当は、ずっと俺が守られている。

 包容力のある女性だ。



 あの時…織に届かないと苦しんだ気持ちが、今は届かなくて良かったと思う。

 燃え上がるような気持ちだけが、愛じゃないと知った。



 …世貴子は、俺がこんなに惚れてるなんて、知らないだろうな。

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