24. 怪談七だけ長さぶっちぎってますが構成通りです
◆
昨日、国研から先生を置いて逃げ出した後のことは覚えてない。
いつの間にか自分の部屋で布団を引っ被っていて、朝だった。
先生はどうなったのだろうか。
学校から連絡は来ていない。
土曜だし、行く必要も無かった。
スマホを見ると、うーみんさんから大量のDM。
見ていくと、最初は成果の報告だった。
teilorにツイッターのアカウントを明け渡してもらったと言う。それで㊙情報とのDMを発見。運営上の事務的なやりとりが中心的だったが、少なくとも先生は㊙情報をマナちゃん及びハルカちゃんとみなしていた。また、teilorなりに整理した組織図、各ツイートの
……それらに何度か目を通したけど、ゴミさんがクラスタに所属している証拠はなかった。
もっと重要なこと、次の怖い話への手掛かりも判明。やはりテーマは
だから、
すなわち、どうやったら怪談を更に
先生は大学で受けていたマーケティングの
㊙情報は大いに感心していた様子だった。ぜひ取り入れたい、と。
あともう一個、ハルカちゃんについて重大な、しかし現時点では使い道のない事実が判明。
うーみんさんの報告のうち、良かったのはここまで。
:オッチマさん‼‼‼‼ 早く起きてください‼‼‼‼‼‼
:㊙情報
:㊙情報が
その言葉の意味を知る為に、ソコツネさん㊙情報のホームを開く。
午前三時半頃を
ソコツネさん㊙情報@sokotsunemaruhi
カスの役にも立たない数学教師シバタはソコツネさんに対しテストの点数を不当に下げる・
ソコツネさん㊙情報@sokotsunemaruhi
コイト@struggle_ka以下出会い厨のクソ男どもは、ソコツネさんにヤリモクで近づき、全員が人を食らうマタイ塚に誘き出されて呑みこまれた
ソコツネさん㊙情報@sokotsunemaruhi
二年四組のゴミキモオタことハラダは、ソコツネさんに告白してフラれたことで
ソコツネさん㊙情報@sokotsunemaruhi
東中一のマヌケであるヤマダは、持ち前の喧嘩っ早さでソコツネさんに挑み、輪ゴムの付喪神に髪を引きちぎられ、すげーブサイクに仕上がった
ソコツネさん㊙情報@sokotsunemaruhi
ソコツネさんはある日クラスで輪ゴムをバシバシ当てられていた時、それがクラスの誰の手によるものでもないことに気付いた。ソコツネさんが
ソコツネさんはお前らに気付いた
ソコツネさん㊙情報@sokotsunemaruhi
ソコツネさんはお前らが自分にしてきたことを決して忘れない。
必ず復讐しにやってくる。
月曜を待て
一見意味不明・
ソコツネさん㊙情報は、ソコツネクラスタを攻撃したのだ。
面白さとその裏の恐怖で支配してきた子分を、その親玉が
発狂、そうとしか言いようがない。
ボクはすぐうーみんさんにメッセージを送る。
オッチマ:すいません、遅くなりました。見ました
オッチマ:teilorの取り込みが
すぐ返事がくる。
:正直、、、わかりません
:確かにオッチマさんのお友達は国研での様子からteilorが調略されたことを知らないはずはありませんが
:組織を必要としていたなら、teilor一人を切り捨てればいいのに、、、警戒するにしてもやることが
:でもタイミング的にはこれ位しか思いつかない。でも、全然別の理由の可能性も捨てきれません、、、
別の理由。
しばらくメッセージが
オッチマ:タイミングはteilorだけど、目的は別なのかも。クラスタを切り捨てるだけにしてはツイートに手が込み過ぎています。例えば…彼女たちに何らかの計画があるとして、先生から漏れる情報で邪魔されるのを恐れて、次の段階に入ったとか…
:これも計画のうちってコトですか⁉⁉
:
:まあ、それでも何がしたいのか全然わかりませんが、、、
それもそうだ。
それから土日はteilorの情報とクラスタのリアクションの分析に費やすことになる。
しかし、teilorと㊙情報の交流はそれほど多くなく、こちらから話しかけてみても返事はない。また表からわかるクラスタの活動も鈍く、個人間のDMでやり取りが行われているようで、そちらについてもほとんどわからなかった。
◆
何の
仕方ない。㊙情報の言うように何か起きるのは
朝は早く出て、SHRが始まるまで木工室にいた。早いうちに行ってもタナカがいるし、遅く行けばユキ達までいるから、教室にはいたくなかった。
二階に上がり、教室へ続く廊下まで来ると足が止まる。
『貴方達はただ膨れ上がる問題とリスクの前に恐怖し、ひれ伏していただけだ」』
すぐに目を瞑り、頭の中を過ぎ去る影を振り払おうとするが、うまく行かない。
マナちゃん、ハルカちゃん、タナカ、ユキ、ゴミさん、ソコツネさん。
段々息が苦しくなってきた。
今吸ったか、吐いたのかわからない。
そのままずっと動けないかと思ったけど、ドンッと背後から強い衝撃を受ける。
驚いて見ると、白い顔のソコツネクラスタ構成員:2-4レフト=ヒラバヤシさんが無言で通り過ぎて行った。ボクのことなんて気付いてもいないように張り詰めた様子。まあ、その方がこっちの気分的にも都合がいい。
お陰で足が動き出すきっかけになり、教室に入れた。
SHRが始まると、学年主任の先生が来る。
アルガ先生は体調不良で
四名が欠けた教室。
ハラダ、先生、ソコツネさん、そして、マナちゃん。
マナちゃんもいなかったけど、その説明はなかった。
クラスタの子達は“おまじない”を行い続け、それ以外のみんなは
男子も女子も、イトウさんみたいな明るい子達も同じ。
ユキはとっておきの
◆
一限、古文、一人対策会議の始まり。
重要なのはマナちゃんまでいなくなった、ということだ。
怪談の仕込みに入ったということ、それも授業に出られなくなる程の。
ボクももう授業に出ている場合では無いのかも。
急がなきゃ、時間が無い。
対策ノートにまとめたマナちゃんの次の手に繋がるはずのヒントを見る。
幽霊。
御柱。
生贄。
広告。
㊙情報の七つのツイート。
ソコツネクラスタ。
何の関連も見えないこれらをどうにかして繋いでいく作業。
何故ハルカちゃんはボクらの前に姿を現したの?
何故とっくに終わったオマツリのハナシを年を
これまでの怪談を
クラスタを切り離して、何をさせる気?
疑問は次から次から湧いてきて、答えは一つも出ない。
やっぱりダメだ、ボクの頭じゃ全然ダメ。
うーみんさんは。うーみんさんは結論が出たんだろうか。
うーみんさんに送る文面を考えながらぼんやり黒板の方を向く。
若い男のナガタ先生が板書中。
時々“おまじない”が行われる以外はみんな黒板をノートに書き写していた。
普通だ。
でも、違和感。
耳を澄ますと、呼吸・衣擦れ・石油ストーブの微かな唸り……以外に何か。
何かが聞こえる……すごく小さい、小さい、音。
その音は授業中絶え間なく続き、
二限、三限と一人対策会議が進まない一方、
段々そちらに注意を取られるようになり、じっと聴くうち、わかってきた。
声。
「え、つまり………だからこの……………を……」
淡々と、ボソボソと、男の人の声。
「……この……三角形………の和は」
実は聞き慣れたそれの正体まで理解した瞬間、それは起きた。
キョロキョロと教室を見回していたボクの視界に急に“異常”が入ってくる。
何気なく椅子に座っている男子生徒。
その左の膝から下が、無い。
「がっ」
と、その男子は短い悲鳴を出して床に倒れ込む。
左足は穴からずるりと抜けて、潰れて真っ赤になった足が出現した。
「痛い痛い痛い痛い!!」
足を抱えてのたうち回る男子――クラスタ中級構成員:優ッキーナ=ネモトに教室は
どうして、何故、と。
頭に
ヒラバヤシさん。
彼女は机の下で拳を小さく握り、唇をわずかに動かす。
自分でも真似てみてその意味を理解した。
――やった。
◆
お昼には全校がうるさくなっていた。
授業中に怪我人や行方不明者が続出、先生達は青ざめて走り回っている。
放課後には『明日は休校になるかもしれない』と噂されていた。
どうしてこんなことに。
推測はあるけど、自分で結論を出したくなかった。
とにかく早くうーみんさんに相談しなきゃと思い、最後の授業が終わると、焦る気持ちのままカバンの一番下に手を突っ込む。
「ミハル」
『しまった、誰かに見られるかも』と思ったのと、名前を呼ばれたのは同時だった。
声の主はユキ。ゴミさんも後ろに控えている。
何も言えず黙って見ていると、堅い表情のまま彼女は口を開いた。
「何をしようとしてるの?」
「……この前」
嘘は、つけない。
「この前話したオカルトに詳しい知り合いにソコツネクラスタや今学校で起きてることを相談する。でも……その後はマナちゃんを探すことになると思うよ」
「またあいつのこと?」
やっぱりユキは怒る。
ただ、いつもの
「もう止めなよ。あいつに構ったって何もいいことないんだから」
「あのね、でも、あの子が色々やってるのは間違いなくて……止めないと大変なことになっちゃうから……」
「それで迷惑するのは誰。ミハル? 私? トッコ? あいつを止めなくても、ミハルの大事な人達さえ守れればいいでしょ。自分に関係ない人達のことまでミハルが気にする必要はないんじゃない?」
「ボクは、みんな、大事だよ。マナちゃんのことだって」
耳がキーンとなるような、感じ。
マナちゃんの“圧”とはまた違った、ユキの壁のようボクに立ちはだかるオーラ。
背後でゴミさんもあわあわと手をこまねいている。
「何であんな奴のことを……!」
思わず息を呑む。
「どうして、ミハル。あいつが何をしたと思ってるの? あいつに何をされたの?」
「それは……」
「ミハルが大切なのは誰。私達? あいつ?」
答えが見つからなくて、答えられない。
ユキも沈黙を貫く。
きっとボクが何か言うまで喋ることはない。
「ユ、ユキちゃ……そ、そんなに詰めなくても」
見かねたゴミさんがユキの袖を掴んで宥めようとしてくれるが、怒りがおさまる様子は無い。ほとんど音のしなくなった教室で、ぐるぐる頭を巡らす内、どんどん気分が悪くなってくる。
……。
ほとんど音のしなくなった?
その違和感に気付くと、急に血の気が引いてきた。
首を動かさないまま耳を澄ませて、確信する。
「モ、モロズミさんだってじ、事情があるんだから……」
「ダメ……!」
ユキを説得する為、前に出ようとしたゴミさんを咄嗟に制止する。
「ミハル、まだトッコのこと疑ってるの!?」
それがまた
授業が終わったばかりの教室がこんなに静かになるわけないんだ。
「三角形………内角の和は……百八十度」
微かに聞こえるシバタの声。
それをかき消すようにユキが吸気し、前進しようと足を浮かす……不味い!
「動かないで!」
「えっ!?」
ボクが叫んでユキが一瞬怯むのと、その傍の机の脚が消失するのは同時だった。
◆
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