17. 進行ぼんやりし過ぎ? 塩梅が難しい
◆
:つまりteilorは完全にお友達の行動を
:
:ツイッターを見る限り、、、クラスタもまだやる気満々ですし
「はあ……」
ボクはお母さん達の寝室のクローゼットの中で溜め息を吐く。
灯りはスマホ一つの今も真っ暗だが、先を思って気分も暗い。
「ミハルー! スマホー! スマホー!」
一階でナツヤがボクを探して怒鳴っていた。
去年キャンディクラッシュをやらして以来、ちょくちょくボクのスマホを借りようとしてくる。
部屋にいるとドアをバカ殴りされて集中できないから、こういう時は隠れるしかない。
オッチマ:説得は難しいのでしょうか…
:諦めるのはまだ早いですヨ😖❗ネタがないなら作りましょう😎❗❗
:例えば、、、ちょっと
オッチマ:なるほど!
ネタを作るということ自体考えもしなかった。
うーみんさんはいつも役に立つアイデアを教えてくれる。
やっぱり大人の人はすごい。
彼にガッカリされないようボクも頭を使ってるところを見せなきゃ。
オッチマ:こちらの方でも一つ、手を考えました
オッチマ:クラスタと、もしかしたらネタも何とかなるかもしれません
:おお😋❗❗
「おいー! スマホー! 貸せー!」
体が冷えて眠い。
ナツが飽きるかお母さんが怒るか、どちらにしろまだしばらくかかる。
ボクはLINEの友だちリストを開き、じっくりと眺め始めた。
◆
土日を挟んだ週明け。
教室に飛びっきり早くやってくる、一人で。
ユキには電話で『数学の宿題を机に忘れてきたから先に行ってやってる』と言い訳したけど、ちょっと疑われた。
当然、目的があってのこと。
「おはよう、タナカくん」
通学鞄を自分の椅子に置いてから
三列離れた窓寄りの後方の席に腰掛けている、室内には他に彼だけ。
「……何だよ」
今ある唯一の敵との
いつ来ても朝はハラダと大声でオタク話をしていたけど、こんなに早くから来ているとは思わなかった。
来るまで待ってから場所を移動しようかと考えていたけど、ここで話そう。
「あのね、先週のことだけど」
タナカは鼻から大きく
まずはハラダのことで関心を引く。
「ハラダくんがどこに行っちゃったのかはボクも知らないんだ、ごめんね」
嘘はつかない。質問にも答えるつもりだ。
信用を得たいのと、後は相手がどこまで知ってるか確かめる。
「アイツとは何を話してた? フジモリのことで……」
「え? うん、相談してたんだ。あ、笑わないでね、ちょっと、呪いのことで」
タナカは笑わなかった。
顔をしかめて俯く。
黙りこくるのは、それでもうハラダがどうなったか
「どうしたの?」
机を一列分、彼に近づく。
「何でもない……」
平静を装った声。
感情を隠したいのが半分で、余計なことは言うまい、が半分。
かき回そう。
「嫌な気持ちになったらごめん。聞いちゃったんだけど、ハラダくん、お母さんと喧嘩してたって。お母さんもあまり探している様子は無いって。ここだけの話、先生もさ……どうかしようって気はないみたい」
それを聞いてもタナカは驚いたりはしない。
しないけど、赤らんだ顔がギュッと
成功した。
「……誰もハラダがいなくなったことを気にしてねえ」
それは、呪いのせい?
と、聞く寸前で思い留まる。こちらの知識の程度はまだ隠しておきたい。
「おかしいよね、最近、色々。シバタやハラダくん、ソコツネさんの周りも……荒れてるし。どうしてこんな風になっちゃったんだろう」
「全部フジモリとアズマ……アイツラのせいだ」
鳥が鋭く鳴くような声で答え。
しかも、それぐらいボクが知ってることも前提としている感じ。
「そうなのかな、確かに怪しいとは思ってたけど」
タナカは下を向いたまま、机に広げた何かを見ている。
何かの資料かな?
もう一列、近づこうとする。
「オマエもその仲間だろうが」
とぼけた返事を刺す
「仲間? まあ同じ部活だったけど。でも何してるかわからないし」
受け流して足を進める。
「二人とも何考えてるんだか、さっぱりだよ」
マナちゃん達の手下のようにも関係ないようにも思わせる言い方。
タナカはまた鼻をピーと鳴らして不満を表す。
「決まってる」
近づいたことで彼が
緩やかなデフォルメの効いたタッチ。
開かれたページには二人の人物が描かれている。
それは女の子で、
「アイツラは……狂ってるんだ」
一人は灰色の髪のカールした二つ分けに黒いリボンで、もう一人は
うーん、これは。
「……それ、アンチョビとまほ? 原作で
ガルパンのキャラクター。
女子高生が戦車で戦う有名なアニメの。
「悪いかよ!!」
何気ない独り言のつもりだったけど、こちらを噛みつかんばかりの勢いだ。
話を広げる材料になるかと思ったのに。
カプ
「あ、あ、ボク、テレビしか見てなくて! え、映画とかには出てたの?」
そう言い訳すると、彼は
「ボクかよ」
「えっ?」
一瞬身構えたけど、タナカの肉で細まった眼が何かを思い出すように上を向くのを見てピンとくる。
「ねこにゃー」
彼は聞こえるか聞こえないかぐらいの声で試すように呟いた。
記憶を振り絞る……確か、猫耳で、長い金髪にグルグル眼鏡の。
「え、あのオタクのチームの子だっけ? あの子もボクだったけど。そう言えば他の学校にはいたっけ?」
「他にはいねえよ」
タナカはまだ堅い顔をしていたが、唇だけは歪めて満足そうに頷いた。
アニメや漫画が好きな子とは、しばしばこの手のクイズに正解することで
一歩前進。ここからだ。
「ねえ、ハラダはどのカップリングが……」
「お、おはよう!! モロズミさん!!」
うっ!
驚いて振り向くとゴミさんが戸口に立っていた。
口元をわなわなと震わせ、細い肩をいからしている。
後ろには他の生徒がやってくるのが見えた。
「うん、おはよう」
今日は終わり。
ボクは無言でタナカに目配せしてからゴミさんの近くに行く。
「だ、大丈夫? お、大声がしたから……」
「うん、平気」
どっちかって言うとゴミさんの声の方にびっくりした。
彼女は体に力を入れたまま、キツい三白眼にタナカを映す。
「アイツには、あ、あんまり近づかない方が、い、いい」
吐き捨てるような口調。
「そ、そう?」
“敵”の関係者への
「う、うん……。よくわかんないけど、最近、他にもた、大変なんだよね?」
他?
ソコツネクラスタのことだろうか。
「ああ……多分、大丈夫だよ」
ゴミさんがマナちゃん達の関係者だった時を考え、
ボクの視界には教室に集まってくるクラスのみんな。
続々と入ってくるみんなの内、浮かない表情の子たちがいる。
一人、二人、三人。それはどんどん増えていく……。
◆
「クラスタ、今日は様子が変でしたね」
「変?」
アルガ先生は、余裕を保ちつつもボクの報告を待ち詫びていたようだった。
今日は国研に入った時から、右のこめかみに手を当てて考え込んでいる。
どうやら放課後になっても状況を掴み切れてない。ラッキー。
「ええ、ソコツネさんやボクらにも何もしないし、クラスタのメンバーと
「誰と誰かは、わかる?」
何人か
「内容は? ……モロズミさんにも詳しいことはわからないのかな?」
「すいません。今はクラスタの子と話せるような場合じゃ……」
「そうだったね」
先生は残念そうにかぶりを振った。
疑われている?
わからないが、
「他には何かあった?」
「いえ」
「そう」
立ち上がり通学鞄を背負って、頭を下げる。
「それでは、失礼します……」
「はい、じゃあね」
◆
よし。
国研の外、誰も見てないのを確認してからガッツポーズ。
今日は様子見だけだから目的は
タナカとも進展はあったし、後は……。
「マナちゃん?」
ボクが呼びかけると、目の前の角から彼女がひょっこり顔を出す。
「はいはい登場! マナだよ~」
「うん。今日もちょっとだけね」
二人でわずかな帰り道を歩き出した。
この時間もとても重要。なるべく次の怪談を聞かないと。
「それじゃ、昨日の続きだけど」
「えー」
マナちゃんはつまらなそうにぶうたれる。
「ミハルちゃんそればっか。もっと楽しい話しようよ」
「楽しいって……」
「ただでさえ弱いのに
アドバイスされてるけど、この子が一番の悩みの種なんだよね……。
でも、考えてみると、この頃楽しいことってあんまりない。
「うーん、何だろ。マナちゃんはある?」
「やっぱりミハルちゃんかな」
「えっどういうこと?」
回り込んで顔を覗き込むと、下半分にマスク、上半分にヘラヘラ笑いでそばかすをキラめかすいつものスタイル。
「友達になれて嬉しいって意味だよ」
う、嘘くさ。
「そうなんだ、ボクも嬉しいよ」
「笑顔が引きつってるよ。まあそういうところがカワイイんだけどね」
マナちゃんはそう言うけど、ボクは結構本当に嬉しかった。
そりゃ多分本気じゃないけど、彼女も心のどこかで友達を求めている、クラスの仲間の一人なんだと再確認できた。
アルガ先生やクラスタの子達も今はちょっと暴走気味だけど、きっと仲良くできるはず。みんな、仲間だから。
マナちゃんもみんなも、ボクが守らなきゃ。
靴を履き替えながら、何となくすぐにでも駆け出したかった。
「じゃ、また明日ねマナちゃん!」
「はいはい、じゃーね」
◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます