怪談三:ソコツネさん
5. ショボい怪談ばっかだし霊能者役もこんなもんでいいか
◆
ピロリ、と
それからウゥンと唸ってオーブンが動く。
六時直前、めざましテレビで最初の占いが始まる頃、ボクは大抵レンジの前。
向かいのシンクにもたれ、
調理中は火元から目を離すな、というのがお母さんの教えだ。レンジは違う気がするんだけど、火なんだって。
ふすまのパンをトーストしたら
そうしたら母さんとナツヤを起こしに行く。
父さんはもうテーブルについてタブレットで新聞を読み
抜き足差し足で二階へ。ナツヤは大声出すと暴れるから。
散らかった部屋で
目覚めたお母さんはベッドに座り、何か言いたげにぼんやりとボクを見つめる。
「言い忘れてたけど……」
「何?」
「今日ナツとまた新しい病院に、
「うん」
運が悪い。
普段は病院の日はもっと
◆
「今年は叔母さんちのが五歳で、
「大ダメージだ」
「本当それ。髪の毛引っ張ってくるし、クソガキ」
お喋り以外にも、
彼女の松葉杖が踏み固まってツルツルの雪の上に乗ると、下り坂だし
「いつ戻ってくるの?」
ユキの年末年始は祖父母の家で、確か
「
「一日ぐらい遊ばうよ。勉強会でもいいけど」
遊ぶ時は基本ポケモンか
勉強はユキが数学の先生、こっちは国語。
ボクは続けざまに聞く。
「もうフェローチェはゲットした?」
ポケモンはいつも別のバージョンを買って、お互いの方に出ないのを
どこか山の方を見ていたユキが髪の尾っぽを
「トッコの予定も聞かないと」
「あ、そうだね」
陽の当たるところに出たユキから手を放し、ボクは次の言葉を考えた。
「三人で何しようか」
「学校着いてからでいいでしょ」
トッコ……ゴミさんはポケモンをしない。
◆
「そう、フジモリさんが」
「マナちゃ、彼女も謹慎でストレスが溜まっている、のかもしれないです」
「そうね。先週の金曜の話だっけ?」
「あ、そうです」
「うーん。まあ生徒指導の先生には
「それで、これからどうしたら」
「え? ……これは彼女の問題だと思うんだけど。モロズミさんはどうしたいの?」
「えと、あの、このままじゃ彼女、もっとすごいことしそうで、心配で」
「意外」
「えっ」
「てっきり彼女を怖がってるのかと思ってた。優しいのね」
「……同じクラスだし、大事になる前に、何とか止めたいんです。でも、こんなこと初めてで、どうしたらいいか……」
「その気持ちがあれば大丈夫」
口の中の泣き言が引っ込んだ。
アルガ先生が微笑むといつも
「大切なのは誰かを助けたい気持ちだからね。例え
「……はい」
「でも、ちょっと大げさじゃない? まだ謹慎をサボってるってだけなのに」
「そ、それは」
「あ、もう
「ないです」
ボクは頭を下げて
◆
一冊は横向き。
もう一冊は
マタイ塚では
ただ、彼女のことでわかったことは少ない。
彼女の友達からそれとなく最近の
代わりに
これまでの二回を振り返ると、彼女が事を起こすには変なもの有りきだ。異次元の穴や名前を取る塚、何であんなもの達があるのか知らないけどそこに彼女の
けど、穴は
と、ここで
スピーカーからチャイムが鳴り、また五十分
みんながざわざわしだすのに合わせてボクの
「何だそれ」
初めボクへ向けられていると思わず無視していたけど、視線を感じて右隣を向く。
「ノート」
と、
「み、み、見ないで欲しいんだけど」
ノートを閉じても彼は変わらずにこちらを見てきた。
「何やってんだお前」
「べ、別に……」
どう
教室が一段とざわつき、二人して騒ぎに注意を取られる。
教室の後方、
一人の女子生徒が膝立ちで自分の机の中に右腕を突っ込んでいる。
クラスのほとんどが教科書を片付けたりロッカーに行きながら、その様子を眺めていた。
やがて彼女の腕がのっそりと引き抜かれる。その手にはベージュ色の消しゴム大の
近くにいた子たちがさっと
彼女はもう二度机に手を入れ、合わせて七個もの卵を取り出す。それから一つ、木の枝に張り付いたままのを
ボクらは彼女の口が大きく開かれるところを思い描く。
スポンジ状の
ヤスリのように
「おらっ!」
寒い風が吹いて現実に帰る。
両手の卵は窓から投げ捨てられた。
窓の先、中庭のテニスコートで卵がどうなったか見届けた後、ソコツネさんは何食わぬ顔で教室を出ていく。
クラスに
両手の埋まった彼女がどうやって窓を開けたんだろう……ノートの言い訳も忘れてそんなことを考えていると、オタク男子がソコツネさんの机を見ながら言った。
「あのブスならツイッターに
そのまま彼は教科書を取りに行き、話はそれで
◆
放課後、やっと一人になれる時間が来る。
まだ家には帰らない。お母さんにもユキ達にも委員会があると言った。
ボクはこそこそと一階の木工室に向かう。
そこは人気が無くて、これからの調査に打ってつけの場所なのだ。
もちろんストーブは使えない。だからコートとカイロで寒さ
入口の戸から一番遠い窓際の壁にもたれて座り、ボクは通学鞄の
東中ではスマホは持ち込み
隣のオタクに言われて思いついたけど、マナちゃんにはツイッターに
手掛かりもある。コイトさんだ。彼から
コイトさんの垢はすぐ見つかった。同じ名前のは幾つもあったけど、
……最後の
まずは
個人垢をノートにリストアップ。
今度は彼のツイート。
検索バーに
その垢のbioがこれ。
うーみん
@wuming0512
アニメと音楽が好き💖💖💖ベテラン馬の骨😎あとはオカルトも少し👍👍
……んん?
◆
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