第2話B「仮面野郎」
no side
時間は深夜。といっても深夜に入り始めたばかりーーー午後8時くらいである。あるモノが徘徊を開始した。その姿は嘴のついた仮面を被り、そこまで寒くないにも関わらず真っ黒なコートで全身を覆っている点を除くと、普通の人間に見える。、彼ーーーとりあえず彼としておこうーーーは特に目的もなく歩いてるようだ。そして、彼の近くを通った人間は奇怪な格好に驚いた顔をするがそれだけであり、何事も無く通り過ぎ、すぐにそんな人物がいたことを忘れる。そして、時が流れ、時計の針が0時を指すと、彼は針のようなモノを出し、たまたま近くを通りすがった通行人にその針を刺した。通行人は二人組で、そのうちの一人に針が刺さった。当然刺されてない方の通行人が声を荒らげながら文句を言う。
「おい何してんだよアンタ」
しかし、彼はその声を気にした様子もせず、針を刺した方へ動く。奇妙なことに、針を刺された方は微動だにしない。まるで魂が抜かれたように。その様子に苛立ったもう一方がさらに声を荒らげながら彼を掴む。
「なあ聞いてんのか!?」
しかし、彼は全く気にしていない。そして、刺された方も動かない。それに気づいたのか、刺されてない方は刺された方に呼びかける。しかし。
「おいお前も何か言え・・・・あん?」
刺されていない方がふと気づくと、掴んでいたはずの彼の姿が無くなっていた。慌ててあたりを見回すと、彼はいたが、代わりに刺された方がいない。そして、彼が掴んでいたところには、謎の白骨死体が落ちていた。
「なっ・・・テメエ、何しやがった!」
彼の仕業としか思えない状況に刺されてない方が尋ねる。しかし、彼はそれを意図に介した様子もなく、そのまま立ち去る。
「待ちやがれ!」
刺されてない方が追いかける。しかし、彼は歩いてるはずなのに何故か追いつけない。そして、曲がり角を曲がった所で彼の姿は無くなっていた。
「何なんだよ・・・何なんだよこれはぁ!?」
白骨死体と彼しかいない路地で彼の慟哭が響いた。
side out
綾side
「謎の仮面野郎?」
「うん」
晩御飯を食べ終えた私は妹ーーー如月 渦と話していた。話題が学校の話になった時、そんな話が渦の口から飛び出した。
「なんでも、変な格好した人が深夜に徘徊して0時になったら、針のようなものを近くの通行人に刺すらしいんだけど、その刺された人が消えて、謎の白骨死体が残るんだってー」
「へー」
謎の白骨死体ねえ。
「それって、周りに人がいたらどうなるの?」
「なんか、針を刺した人以外に興味はないみたいな態度なんだってー。だから周りに人がいてもお構いなしみたいだよー」
「それで、針を刺した後は刺された人が消えて、死体が出てくると」
「うん。それに追いかけても相手は歩いているのに追いつけなくて、曲がり角を曲がると消えるらしいよ」
「ふーん。あ、死体は刺された人のなの?」
「いや、どうも違うらしいよ」
「ねえお姉ちゃん、これって・・・」
「まー本当なら間違いなく怪異でしょうねー」
「やっぱり?」
「害意があるかは微妙だけどね」
「怪異だったとしたら、どんな怪異なのかな?」
「多分仮面かコート、又は両方が本体の怪異じゃないかしら。多分人に取り憑くタイプね。複数いるかはわからないけど、肉体の寿命が来たから、乗り換えたってとこねきっと」
「でもなんで0時なんだろう?」
「さあ。儀式的意味があるのかもね」
そんなことを話してると、お風呂が沸いたことを示すチャイムが鳴った。
「ふーん。あっ、じゃあ私お風呂に入ってくるー」
「いってらっしゃい」
お風呂に行く妹を見ながら、私はパソコンを起動し、依頼フォーラムを開いた。
「新規依頼無しか・・・ん?」
ページを切り替えてメールボックスを見たところ、見たことのあるアドレスからメールが来ていた。
「これは・・・連太郎か」
連太郎。如月 連太郎と言い、私達の親戚だ。警察に勤めていて、たまに流しても問題ないような噂や、怪異関連の情報をくれたりする。今回は後者のようだ。メールを開く。
「なになに・・・『最近流行っている変な仮面野郎の噂だが、恐らく本当だ』。へえ、なるほど?『その仮面野郎らしき人物に出くわして、恐ろしくなって俺のところに来た人が何名かいる』。複数人いるなら確かに信憑性は上がるなあ」
連太郎は変わりものというかなんというか、こういう事件を好むので、よくこのテの事件を回されている。私にもその影響は大きく、事実連太郎を介した依頼もよく受ける。この前の「正体不明」も連太郎が から頼まれた例の一つだ。
「『だからお前にこの怪異の調査、できれば破壊を頼みたい』。まあそうだよね。じゃあ返信するか」
連太郎に向けて『その依頼承った。報酬はちゃんと払えよ』と送信する。すぐに返信がきた。『了解。今日から頼む』と来た。・・・今日からかよ。まあいいや、風呂場にいる渦に向かって言っておく。
「渦ー!私今から依頼の調査に行くから先寝といてー!」
ちゃんと聞こえたようで、すぐに渦から
「わかったー!お姉ちゃん頑張ってねー!」
と帰ってくる。その返事を聞いた後私は鍵を閉めて外に出た。時刻は夜9時。仮面野郎はもう出現しているだろうけど、特定の場所に現れるわけじゃないから探す必要がある。・・・紫に協力を頼むか。
side out
紫side
最近「仮面野郎」という噂が流行っているらしい。なんでも、そこら辺の通行人に奇妙な格好をした人物が針を刺すと、その通行人が消える、という噂だ。奇妙な格好というのが嘴のついた仮面をつけて、大して寒くもないのに全身を黒いコートで覆ってるというものだから、「仮面野郎」らしい。僕はその噂を聞いた時本当なら怪異だろうなーくらいにしか考えてなかった。しかし、どうやら本当の怪異だったらしい。
依頼人が来たから、という理由と綾が動き出したからという理由からそう判断した。どちらも片方だけだったら冗談やフェイクの可能性があるが、(それでも依頼された以上調査するけど)両方の条件が揃って冗談やフェイクというのは考えにくい。それに、依頼者にも嘘をついてるような様子はなく、本気でその仮面野郎を怖がっているようだった。だから僕も動くことにした。ただ仮面野郎は噂から判断すると現れる場所に規則性がないようだから、どこにいるか探しにくい。そもそも現れていない可能性もある。綾と協力して探しても難しいだろう。今は現れている時間帯だが、どうしたものか・・・。そもそも噂で容姿がはっきりしているのに仮面野郎が日々話題にならないのはそもそも現れていない可能性を除くと、何らかの方法で0時以外は人に認識されても取るに足らないものとして扱われるような偽装をしているのだろう。そうなるとSNSもあまり役には立たない。とすると
「・・・全部虱潰しに回るか・・・?」
これしか方法がないように見える。仮面野郎はこの地域の噂だから二人で協力すればどうにかなるかもしれない。とりあえず連絡しよう。綾に電話をかける。
『もしもし』
「綾か?考えてみたんだが、仮面野郎を見つけるには虱潰しに探すしかないと思う。お前はどうだ?」
『私も同じ意見かな。どうする?一旦集まってから探す場所をそれぞれ決める?』
「そうしよう。そうだな・・・市役所の屋上でどうだろうか?」
『そこでいいわ。じゃあ、また後で』
「ああ」
電話を切る。さあ、市役所に向かおう。
side out
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