第1話B「Are you ready?」

 


 〜私side〜

「落ち着きました?」

「はい・・・先程はすみませんでした・・・」

「まあいいですよ、確かに私のやり方も問題がありましたし、おあいこってことで」

 どうやら少年は私が倒れていたのを心配してくれて、私を起こそうとしてたようだ。しかしほおをつくのは如何なものか。揺さぶられて起きない私も私だが。しかし気になることもある。そもそもあの「何か」はなんなのか。そしてどうやって「何か」を撃退したのか。どうやら近くにはいないようだけど。だから聞いてみよう。

「あの」

「はい?」

「あの『何か』はなんなんですか?そして貴方は何者なんですか?」

「あー、その質問は話すと長くなるんですけど・・・もう遅いですし、とりあえず帰りませんか?送りますよ」

 そう言われて時計を見ると、もう8時だった。私が追われていたのが6時くらいだったから、かなり長い間気絶していたのだろう。

「それでも気になるんですけど。長くなってもいいので教えてもらえませんか?」



 少年?side

「それでも気になるんですけど。長くなってもいいので教えてもらえませんか?」

 うーん、困ったなあ。ヤツを倒したはいいけどこのままここにいてもいいことないしなあ。どうしようかなあ。・・・仕方ない。やりたくなかったけど事情が事情だし警告して効果が無かったらこの手を使うかあ。

「教えても良いですけど、一つ、貴方に忠告があります」

「はい?」

「このことを知ったら、貴方は日常でない領域に踏み込むことになります。そこに踏み込んだら、もう戻れないーーーとまでは言いませんが今までの生活とはかなりかけ離れたものになるでしょう。それでも聞きますか?」



 〜私side〜

 元の生活とはかなりかけ離れたもの・・・。確かに、今までの生活がガラリと変わるのは確かだろう。あの「何か」からはそんな気配がした。けれど、それ以上に、あの「何か」について聞かないと、私は気が済まない。あの「何か」はおかしい。まるでこの世のものじゃないようなーーーそんな気配を感じる。だから、知りたい。正体を暴いて安心したい。人は「正体不明」を恐れる。幽霊の正体見たり枯れ尾花ーーーーけれど、正体不明の正体を知ると安心する。自分の常識に収まるからだ。収まらなくても、正体不明の正体そのものはわかる。不明であることの恐れは消える。だから、私は知りたい。私は覚悟を決めた。

「知りたいです」

「どうしてですか?」

「不安だからです。自分を襲ったものの正体がわかればその不安が晴れるかもしれません」

「むしろ大きくなるかもしれませんよ?」

「それでも、です。私はそれでも知りたいんです」

「・・・・はあ。わかりました。それならば教えましょう」

「本当ですか!」

「ただし!」

「?」

「今日はもう遅いです。連絡先を渡しますので明日話しましょう」

「・・・わかりました」

 今すぐわからないのは不満だが、確かにもう遅い時間帯だ。両親も心配しているだろう。だから、少年の提案に乗ることにした。

「送って行きますよ。貴方の家がどこら辺にあるか教えてもらえませんか?」

 確かに、どうにかして「何か」を撃退してくれた少年だ。送ってもらった方が安全だろう。

「ではお言葉に甘えてお願いします。XXX町のXXX-aです」

「わかりました。では乗ってください」

「え?」

「だって、足挫いてるでしょう?なら、背負った方が楽じゃありませんか?」

 確かに、足をくじいたらしく、立っていると痛い。しかし、少年(仮)に背負われるというのは・・・・。そんな逡巡をしていると不意に身体が浮く感覚。

「へ?」

「私も早く帰りたいので背負わせてもらいますよ」

「な、な、な・・・」

「おっと、叫ばれると困るので叫ばないでもらえますか?」

 何を言っているのだ、この男!普通異性(仮)に急に背負われたら叫びたくもなるだろう!

「いや、気持ちはわかりますけど私も早く帰りたいんです」

 だからって・・・

「とりあえず、飛ばして行くので、注意してくださいね!」

 え?ちょ、うわあああああ!

 その後の記憶はあまり無い。気づいたら家の前についていた。

「はぁ・・・はぁ・・・疲れた・・・・」

「では、私はこれで。おっと、これを忘れてました」

「え?」

「これが私の連絡先です。明日、好きなタイミングで来てください」

 と言われて紙を渡された。確かに、住所が書かれている。

「わかりました。送っていただいてありがとうございました」

「まあ、放置するわけにもいきませんしね。普通ですよ、ふつー」

 人を背負って気絶するレベルで走れるのは普通で無いと思うが。まあ突っ込みたいとこはあるけど、助けてくれたのは事実だし、感謝もある。ここは引きさがろう。

「それでは!」

 そう言うと、少年は、目にも留まらぬ速さで走っていった・・・あ、私少年の名前聞いてない。明日聞こう。とりあえずいまは・・・眠りたい・・・・家のドアを開ける。

「ただいま〜・・・・」

 今日は疲れた・・・


 side out



 少年?side

 はあ・・・疲れた・・・。成り行き上仕方ないとはいえ私のことを教えるってことになっちゃったからなー。それにヤツも倒せたかどうか今更だけど不安になってきたし。そもそもアレであってたのかって疑問もあるしなー。とりあえず今日は帰って飯食って風呂入って寝よう!というわけで急ぐぞー!


 〜自宅〜

「たっだいまー!」

 そう言いつつ勢いよくドアを開ける。

「おかえり〜

「やあ愛しの我が妹よ〜。早速で悪いが飯をくれ。背中と腹がくっつきそうだ」

「また変身してたの?」

「まあまた怪異が出たからな」

「ふーん。まあいいや。後で話を聞かせてよね」

「ああ」

「とりあえずご飯でしょ?はいこれ。今日は焼き鯖定食だよ」

「お〜いつ見てもお前の料理は美味しそうだな!そして実際に美味しい!」

「でしよ」

「じゃ、いただきます!」

 ガツガツムシャムシャ。およそ女子が出す音では無いと思うが、あの変身はエネルギーをアホみたいに使うから仕方ないのだ。

「ご馳走さま!いや〜美味しかった!」

「お粗末様でした。洗っといてね」

「はいはい」

 食器を持って行って水洗い後スポンジでこする。こすった後に皿を置いて終了。

「じゃ、風呂入ってくるね〜」

「あ、沸かしてるからちょっと待ってー」

「ん、りょーかい」

さて、風呂が沸くのを待つ間何をしようかな・・・今日の話でもするか

「じゃ、今日あったヤツの話をするかー」

「どんなのだったの?」

「一言で言えば、『正体不明』だな」

「なにそれ?」

「わからなかったんだよ。なんかこう形があるのにわからないようにされてる感じ?みたいな」

「ふーん、わからない怪異ねえ・・・」

「ま、怪異なんて基本的にはわからないものだらけだけどさ、アレは特によくわからなかった、倒せたかもはっきりわからないくらいに」

「そんなに?」

「ああ。襲われてた子が居たんだが、その子もヤツの正体を仕切りに知りたがってて、結局教えることになっちった」

「そうなんだ・・・その子も災難だったね」

「まあね。で、その子明日ここにくると思うから、よろしく!」

「えぇ!?急にも程があるよ!」

「仕方ないだろ!やたらと知りたがってたしほっといたら首を勝手に突っ込みそうで危なかっかしい感じだったんだよ!」

「まあいいけどさ・・・ところでその子の名前は?」

「あ・・・聞くの忘れた・・・まあここにくるヤツなんて、宅配とかを除けば私が直接住所教えた奴くらいだから大丈夫でしよ!」

「はあ・・・まあ仕方ないか。お姉ちゃんだものね」

「どういうことよ」

そんな話をしていたら、風呂が沸いたチャイムが鳴った。

「お。じゃあ入ってくるね〜」

「はーい」


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