B.M.FーーーーBreak.My.Fate
@decade454
第1話
ーーー私は、公園近くの路地を走っていた。「何か」に追われていたからだ。
何に追われているかはわからない。しかし、確かに追われているのだ。そして捕まったら「何か」されるーーーどうなるかはわからないけど確実に碌な事にはならないーーーそんな確信があった。だから逃げる。逃げる。捕まらない為に。
ーーーーガッ
迂闊だった。自分を追ってくるものに気を取られて、目の前の小石に気づかず転んでしまった。
「くっ・・・」
追ってくる「何か」は止まった私に気づいたのだろうか、心なしかその足を早めていた。
「ひっ・・・」
急いで立とうとするが挫いてしまったのかなかなか立てない。そうこうするうちに「何か」はすぐ近くまで来てしまっていた。
ーーーー助けて、神様。
そんな祈りが通じるわけがないと思っていながらも、この状況では祈らずにはいられなかった。
そして、「何か」が私を捕らえようとしたその時。
「見つけた」
少年のような少女のようなどちらともとれるような中性的な声と共に快音が響いた。
「・・・・え?」
そこにいたのは、一人の人間とどこか苦しんでいるように見える「何か」だった。人間の方は年の瀬は私と同じくらいだろうか、しかし性別がわからない。すると少年ーーー仮に少年としておこうーーーが振り返って「大丈夫ですか?」と聞いてきた。頷くと、「ここは危ないから早く逃げてください」と言われた。言われるがままに逃げようとしたが少年が気になり「あなたは?」と尋ねた。少年は「私は大丈夫です。いいから早く逃げてください」と返した。しかし、自分と同じくらいに見える人を置き去りにしていいのだろうかと思い、立ち止まってしまった
「なにしてるんですか!早く逃げてください!」
「でも、あなたが・・・」
「私のことはいいですから!・・・ん?うわっ、もう立ち直ってきたのか」
少年の視線の先を見ると、そこにはさっきまで苦しんでいたようだった「何か」が立ち上がっていた。
「あーもう仕方ないなぁ!こうなりゃもう自棄だ!ちょっと乱暴しますよ!付いてきて下さい!」
「え?」
「いいから!」
少年は私を掴むと、公園に入り、トイレに私を押し込めると、物凄い剣幕で「いいですか、ここで私が来るまで待っててください」と言った。私は少年の気迫に押されてコクコクと頷かざるを得なかった。それに納得したのか少年はトイレから出ていった。そこで気が抜けたのだろうか、私の意識は闇に堕ちていったーーー
少年?side
はあ、とりあえずこれであの人は大丈夫かな?じゃ、あとはアレを片付けるとしますか!
「ヘイ、へい、そこのやつ」
私の声に気づいたのだろうか、そこにいたヤツは私の方へ向かってきた。
「私をあの人の代わりに捕らえようって心算かい?残念だけど、私はそんなにやわじゃあないよ」
そう言いつつ、私はバッグからいつもの得物を取り出し装着する。
『ゲーンドライバー!』
『セット!』
『トランスジェニック!』
「Die Verwandlung!」
瞬間。私の身体から衝撃波が発生し、ヤツを吹き飛ばす。それと同時に、私の身体は、世間で言われる化物の様な姿となっていた。
「貴様を破壊する!」
同時に翔ける。ヤツを殴ると同時に腕のボタンを押す。
『sword』
腕から生えた剣でもってヤツを斬る。が、効果はないようだ。
「さてさて、お前の正体はなんだ?いや、正体がないのが正体、ということか?」
考えながらもヤツが動かない様に斬撃、蹴り、殴打を織り交ぜて攻撃する。しかし、怯みこそするが効果はない様だ。
「ふむ、これはなんというかアレだな、手順を踏まなきゃダメな感じか。正体不明で有名な奴と言えば・・・・」
やはり平安時代の大妖怪、鵺だろうか?鵺と言ったら弓で退治されたらしいが・・・やってみる価値はあるか。腕のボタンを押して武装を切り替える。
『bow』
腕の剣が消え、代わりに弓が生成される。矢をつがえてヤツ目掛けて打つと
「Gyaaa?」
効果はあったようだが決定打にはならなさそうだ。ふむ、では弓を鳴らしてみよう。そう思い弦を鳴らす。
「Gyaaa!」
ヤツが苦しみだした。どうやら弓というよりは弓が鳴らす音に弱いらしい。それならそれで考えがある。
「これを使うとしよう」
竪琴のような弓が描かれた注射器を取り出しドライバーに刺す。
『セット!』
『トランスジェニック!』
『フェイルノート!』
再び衝撃波が発生。同時に私の身体は、右腕が竪琴のごとき弓となっていた。
フェイルノート。円卓の騎士、トリスタンが使ったと言われる弓である。「竪琴を弓にしていた」という珍妙極まりない弓だがヤツ相手には最高に相性が良い武器だろう。竪琴を掻き鳴らすように弓を撃つ。ヤツがのたうち回っている。やはり音が効くのだろう。一気にトドメを刺すこととしよう。
「さて、お前の正体が何かは結局わからなかったが、とりあえずこれで閉幕にしよう」
腕のボタンを押す。
『セット!』
『ブレイク!』
『フェイルノート・エンド!』
右腕の弓が輝き、荘厳な音と共に無数の矢がヤツの体に突き刺さる。
「GYAAAAAAAAAaaaaaaaa・・・・」
断末魔をあげながらヤツが消えていく。経過観察が必要だろうが、とりあえずこれで破壊できただろう。
『セット!』
『トランスジェニック!』
人の絵が描かれた注射器を刺し、私は元の姿に戻る。
「さて、あの人を迎えに行かないとな・・・」
気づけば公園から離れていた。少し急ごう。
〜公園のトイレ〜
さて、あの人は大丈夫かなっと。トイレのドアを開ける。そこにあった光景は私の予想を超えていた。何故なら、あの人が倒れていたからだ。とりあえず脈と心臓を確認する。両方問題なし。呼吸を確認する。問題なし。恐らく、気絶してるか寝てるかのどちらかだろう。しかし個々に放置するのもどうかと思うし起こすことにする
「おーい、大丈夫ですかー?」ゆさゆさ つんつん
身体を揺らしたり、ほおをつついたりしながら反応をみる。
「ん・・・」
どうやら気づいたようだ。
「気づきました?」
そう尋ねると、しばらくぼんやりしていたようだが急に赤面し、
「な、な、何すんのよー!?」と叫ばれた。
「えー!?」
何故なのか
〜私side〜
身体が揺さぶられる感覚がする。ほおを突かれる感覚する。
「おーい、大丈夫ですかー?」
あの少年の声が聞こえてきた。
「ん・・・」
目を開けてみると、相変わらず少年なのか少女なのかわからない少年(仮)がこちらを見ていた。
「気づきました?」
どうやらあの「何か」はなんとかなったようだ。・・・ところでこれはどういう状況なのだろう?確か、私は少年にトイレにいるよう言われて・・・・そこからどうなったんだっけ。
少年の問いかけから考えると気絶していたのだろうか。でもどうやって起こしたのだろう?そこで先程の感覚を思い出す。もしかして、少年が・・・・そう思うと、私は羞恥が抑えられず思わず
「な、な、何すんのよー!?」
と叫んでしまった。
「えー!?」
少年も何故か叫んでいた。
第1話A「Who are you?」
終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます