第2話 何でも屋計画

 結婚式から数日後、俺とフィレアは城でのんびりと新婚生活を送っていた。

 フィレアと結婚したことで、国王から王位を継がないかと言われているのだが、行動が縛られるのが嫌いな俺は断ろうと考えていた。


「お父さん、俺は王位を継ぐつもりはありません」


 玉座の前で俺はそう答えた。


「理由を聞いてもいいかな?」


「はい、俺は行動が縛られるのが嫌いで、王位を継ぐ、国王になった場合当主として城にずっと居なければならないというのが嫌だからです」


「ふむ、だが国王になったからと言ってずっとこの城にいる必要は無いんだぞ?」


「と言いますと?」


「国王という肩書きをしょってくれればそれで良いという意味だよ」


「では、この城にずっといる必要は無いと?」


「ああ、冒険者を続けたいのであれば続けても良いし、城ではなくまた別の家を立ててそこでフィレアと暮らしたいというのならそれでも良いぞ」


 なんだよ、そういうことなら別に継いでもいいか。でも今すぐって訳では無いみたいだし、ゆっくり考えるか。


「分かりました、フィレアとも少し話し合って改めて決めたいと思います」


「良い返事を待っておるぞ」


「はい」


 俺は国王に深く頭を下げると、玉座の間をでた。俺が玉座の間を出るとそこにはフィレアの姿があった。


「クルシオさん」


 フィレアはいつもの様に俺の腰に手を回して抱きついてきた。


「するフィレア、これからどうする?」


「これから?」


「うん、俺は冒険者をしながら何でも屋をやりたいんだよね」


「何でも屋?」


「うん、旅をしながらそれぞれの街で何でも屋を開いて依頼を受ける。これならのんびりとした生活ができるかなって思ってさ」


「旅をしながら・・・楽しそうですね」


 フィレアは少し考えるように言ってから笑顔で振り返った。


「それじゃあこの後のことは旅をする方向でゆっくり考えていこうか」


「そうですね!」


 俺とフィレアは手を繋いで自室に戻った。



 そしてまた2週間後、旅の経路や商業ギルドの登録についてなどを話し合い、今日いよいよ城を旅立つ日だ。

 ちょうど2日前国王に王位を継ぐという話をしてそれと一緒に何でも屋を始めることを話した。国王は俺がついているならフィレアも大丈夫だろうと行くのを許してくれた。そして昨日、時期国王として俺の名が広められ、俺は国王となった。だが、俺が旅をするということもあるため、俺が新国王となるのは1年後ということになった。

 そんな次の日、俺達はいつもよりも早起きをして馬車に荷物を詰め込み、国王に挨拶をして城を出た。

 初めに向かう街はここから12キロ程先にあるニーベルンという街を目指す。ルートとしては山道を通っていくのだが、魔物が出る可能性もあるため、向こうには翌日の昼に着く予定だ。馬の手綱を握るのは俺で、その隣にはフィレアが座った。

 

 城を出てから数時間、フィレアは俺の肩で寝ている。俺はできるだけ魔物が接近してきてるのに気づけるよう、自分のスキル気配察知を半径800メートルで張り巡らせる。

 すると、その範囲で何かが反応した。数は10いや、20はいる。動きからして魔物のような知性のない動きと言うよりも人のように陣形を組むような動きをしている。


「フィレア、起きろ」


「ん・・・アーシャさん、ハグしてください」


「今はそういう暇ないんだ、俺の気配察知に20人くらいの人の集団が入ったんだ」


「人ですか?」


「多分、盗賊か何かと類だと思う。俺らが旅に出るって言うのを聞きつけて待ち伏せかなんかしてたんだろうな」


「捕まえるんですか?」


「このままだと襲われるからな、逆にこっちからおびき寄せて捕まえる。ハグはそれが終わってからな」


「分かりました、やりましょう」


 俺達はその場で馬車をとめ後ろから物を取り出すような仕草をする。

 すると、木々の間からボロボロの服を着た男達が出てきた。


「俺達は盗賊だ、痛い目に会いたくなきゃその馬車と装備をここに置いていけ」


 こいつら、知らないような顔してるけど絶対俺とフィレアだって分かってるな。


「嫌だって言ったらどうする?」


「力づくでも奪う」


 俺が少し挑発気味に言うと、男どもは額に青筋を浮かべて脅してきた。


「フィレア、どうする?」


「そうですね・・・最近動いてなかったので軽く運動替わりにはなるんじゃないですか?」


「だそうだ、俺達はお前らに馬車も装備も渡すつもりは無い」


 俺とフィレアはそれと同時に剣を抜いた。


「そうか、残念だな早くも新国王様が死ぬことになるとは・・・お前ら殺せ」


 盗賊共は腰から剣を抜き出し、俺たちに向かってきた。


「フィレア、1分くらいでいいか?」


「いえ、30秒で充分です」


「それじゃ討伐数が多い方が勝ちな」


「私が勝ったら今日1日言うことなんでも聞いてもらいますからね」


「ああ、それじゃあ・・・スタート!」


 俺の合図とともに俺達は2人で一気に盗賊たちに向かった。

 この戦いが終わるのには30秒もかからなかった。俺は勢い余って数人殺してしまったが、討伐数は9、フィレアは魔法を使ったものの全員気絶させて討伐数は11、この前勝負はフィレアが勝った。


「やったー!」


「魔法使うなんてずるいぞ!」


「別に使っちゃダメなんてルールないですもん」


「はぁ、なんでもかぁー」


「はい、何でもです」


「くっそ・・・んで、こいつらどうするか」


「縄で縛って木にでも吊るしておけばいいじゃないですか?」


 フィレアはそう言ってバックから縄を取り出した。


「お前、王女なのに残酷なこと考えるよな」


「盗賊相手に自費なんていりませんから」


「じゃあそうしとくか」


「はい!」


 俺は殺してしまった盗賊は燃やして土に埋め、他の盗賊達はまとめて縄で縛り、木に吊るした。


「よし、それじゃあ少し休憩してからまた出発するか」


「そうですね、それじゃあまず約束のハグを」


「はいはい」


 俺はこの後フィレアに休憩する暇もなく、色々なことをしてあげた。

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