冒険者パーティーをクビになったのでお嬢様と一緒になんでも屋を開きます

@sasaki_kure

第1話 お嬢様と結婚

 俺とフィレアは見慣れた街を歩き城に向かう。この国の貿易は、この王都が中心に行われており、家具や食器、防具や食べ物などが沢山ある。

 どうでもいいかもしれないが、俺の装備は3年前に倒したドラゴンの素材で作った双剣、完全魔防のローブ、ローブの中にはミスリル鉱石で出来たプレートと腰当、足には軽くて丈夫なフェンリル(体を雷で覆っているライオンのような魔物)の皮でできたブーツを履いている。

 俺が許可した訳じゃないが、フィレアは俺の腕に抱きついて歩いている。


「なぁフィレア、歩きにくいんだが」


「えぇー、じゃあせめて手を繋がせてください」


 いや、触って欲しくないんだが。


「・・・・勝手にしろ」


「はーい!」


 周りの目が痛い、フィレアは王都では美人冒険者として有名だから、釣り合わない俺といるのが気に入らないのだろう。

 別に俺だって好きで一緒にいるわけじゃないんだけど、変わってくれるなら今すぐ変わって欲しい・・・


「アーシャさん、着きましたよ」


「んあ?」


 目の前に広がるのは王都の中心に位置し、異様な存在感を放つ巨大な城だった。


「マジで来たのか・・・」


「それじゃあ行きましょうか」


 門番をしている兵士の間を通り、城の中に入っていく。外から見た通り、中はとても広く全ての部屋を回るのに一日はかかりそうだった。

 俺はフィレアに導かれるまま玉座の間に来た。

 すでにフィレアが帰ってきたことが王に伝わったのか、王は玉座に座ってフィレアの横にいる俺の事をじっと見つめていた。


「お父様、ただ今戻りました」


「おかえり、フィレア。早速だが、そこにいるものが前にお前が好きになったというものか?」


「はい、アーシャ・ンドルクさんです」


 え、聞いてないんだけど?ってかいつの間に王に伝わったんだよ。こいつ少なからずパーティーにいた頃はずっと俺らと一緒にいたぞ。


「国王陛下、我が名はアーシャ・ンドルクと申します」


 俺は、なんでか知らないが国王に自ら名乗り、膝をついていた。


「うむ、本題だが、うちの娘がお主に好意を抱いてるそうなのだが、お主はうちの娘のことが好きか?」


 その質問、答え一択しかないよね?絶対逃げ道ないじゃん!


「はい、理由はありませんが、私はフィレアを愛しています」


 ごめん、好きでもないのに理由なんて見つかるわけないわ。んで、なんでフィレアは顔を赤くしてんだよ、俺がいつお前に好きって言った?


「そうか・・・分かった、俺もそこまで鬼じゃない。娘が決めた相手なら婚約を認めよう」


 まじかぁー、別に嬉しくないわけじゃないけど、好きでもない人と婚約してもなぁー


「ありがとうございます、お父様」


「娘のことを頼んだぞ」


「はい」


 はぁ、もういいや。今更やっぱりやめるなんて言えないし、フィレアは泣いてるし、まぁ好きになる理由が今は見つからないだけで、後々好きになっていくだろ・・・多分。




「というわけで、国王の娘フィレアと婚約することになりました」


「アーシャ、よくやったな!これでこそ俺の自慢の息子だ!」


「ほんとね、これでお金にも困らないわね」


 本当呑気な両親だよ。

 俺はフィレアと婚約することになった次の日、早速その事を両親に伝えに行った。もちろんフィレアも一緒に。


「フィレアちゃんも、貴族なんかじゃなくてアーシャみたいな子で良かったのか?」


 ん?親父、言ってることが矛盾してるぞ?


「いいえ、アーシャさんでなければいけないんです。私が初めて好きになった人ですから」


 フィレアも頼むからあんまり話を広げないでくれ!


「フィレアちゃんと婚約したってことは、私達は王族になるってこと?」


 母さんは金に目がくらみすぎ。


「少なからず、お父様から何かしら地位を頂けると思います」


「そうなのね!良かったわ!」


 うわ、もう目がお金になってるよ。


「それで、結婚式はいつになるんだ?」


「結婚式ですか、まだ決めてませんでしたね。どうしますか?アーシャさん」


 結婚式ねぇ~、途中で知らない男が乱入してきてやっぱりフィレアが好きだ!って言って連れてってくれたりしないかな?


「それは、おいおい考えるよ。まだ婚約したばっかなんだし」


「それもそうですね」


 フィレアはそう言って俺の方に頭を傾けた。


「私は幸せ者ですね」


 もういいや、暗示でもなんでもいいから好きになればいいか!

 俺はフィレアが好き、フィレアが好き、フィレアが好き・・・


「俺もフィレアと結婚できて幸せだよ」


 そんなこんなで、俺の両親への報告も終わり城に帰って来る頃にはあたりは暗くなっていた。帰って早々、俺とフィレアは一緒に風呂に入り、一緒のベッドで就寝した。


 ♦♦♦♦♦♦♦


 あれから数日後、俺とフィレアの結婚が世界中に知れ渡った。

 それを聞いた元パーティーリーダーがありえない!と城に直接抗議して来て、国王からこの王都からの永久追放が命じられた。こいつはほんとに馬鹿だと思う。

 まぁそんなイベントもあり、結婚式の日にちや両親の高い地位についてなどが色々決まり、騒がしかった城も、徐々に静かになっていった。


 俺達が婚約して約1ヶ月後、俺とフィレアの結婚式が行われた。

 この国でも結婚をする時に指輪を交換するのが主流だが、指輪には少量の魔力を込めて、それには永遠の愛や、これからの祝福などの願いが込められる。

 つい先日にこの指輪を作ってもらったのだが、俺は永遠の愛の願いを込めた。

 なんでかって?

 それはもちろん、フィレアのことが好きになりたいからだ。1ヶ月間、俺はフィレアの色々なことを知ることが出来た。なぜかは分からないがフィレアのことを知っていくうちにだんだんとフィレアに好意を抱くようになっていた。

 だからせっかくの結婚式が曖昧な感情で行われるのが嫌だったから、その願いを込めた。


 そのおかげもあってか、指輪を交換した瞬間、フィレアが好きという感情が俺の中で形成され、やっと婚約してよかったと思えた。

 たった1ヶ月前に突然好きと言われ、流れで結婚ということになったが、それも全て神が予想していたことだった。俺とフィレアが結婚するのは初めからそういう運命だったのかもしれない。


 こうして、世界で1番スピード婚の夫婦が今日誕生した。

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