第49話
全ての槍がまるで別人になったかの如くそれは動き、敵を蹂躙した。
機械のロボット3000体。その造形やモデルはどこかやはり現代の地球に存在するアニメや漫画のロボットを再現している。大きい物から人型の物まで、様々な形や大きさのロボットが魔物を殺そうと大地を鳴らし大気を震わせる。
動力は魔力。周囲の魔力を吸い込み半永久的な稼働する。それは主の命令である”魔物を殺す”為に生まれ半永久的に動き続ける殺戮マシーン。
ロボットの持つ槍が魔物を射抜く。ロボットの刀剣が魔物を切るのではなく潰している。ロボットの持っている槌が大地ごと魔物を大地の染みに変えている。
それを見て、国民は何を思うんだろう。まるで蟻を踏みつぶすかの如く魔物を蹂躙していく、それを見た国民は、何を思うんだろう。
「あ、あれは、な、なんだ―――」
「でも、私達の、敵では、ないと―――」
そこで響くのは、神の声。国民を導き、繁栄を与えたであろう神の声。
(―グリューンの国民達よ、静まり給え…)
(――我は神成り…これは私の恵みだ……)
(―――だから静まり給え……グリューンの子らよ……)
「か、神よ…」
「おお…神よ…」
国民の皆がそれに続き、神の声を聞こえ、そして導いてもらえることを喜び、ただ拝み、祈り、そして歓喜した。
「「「「「ウオオオオオオオオーーー!!!」」」」」
国民の声が響く。それはまるで竜の咆哮を思わせる、そんな声量で、国民が雄叫びを上げる。そしてそれは、冒険者や兵士などの最前線で戦っている者も同じように……
そしてそれを天から見上げる。人であり神であるこの中宮創太という人物は鼻で笑っていた。
「神の名前を出すだけで、ここまで人って変わるのか~、その浅はかさに思わず笑らしまうなぁ……んじゃ、もう一回いっとくか。」
創太は神を語り、そして戯言をグリューン王国の民へとぶつける
「我が使徒が負けるということはないが、それでも我に人の努力というものを見せてみよ、グリューンの子らよ」
(……我が使徒が負けるということはないが、それでも我に人の努力というものを見せてみよ、グリューンの子らよ)
そうやって創太がからかい気味に声に出すだけで、結界内のもう一つの効果。マイクやスピーカー効果によって神秘的な、まるで神を思わせる声が飛んで人々に伝わる。
「そして勇者よ、神の使命を全うしてくれたまえ」
(……そして勇者よ、神の使命を全うしてくれたまえ)
「最後に我は名乗ろう。我は、創無神。・・・創無神 アルファス成り!」
(…最後に我は名乗ろう。我は、創無神。…創無神 アルファス成り!)
そう言い残し、創太はスピーカーを切った。国民の声の雄叫びが今一度、ここまで聞こえてくる。それを聞いて創太は“やっぱこいつらチョロいな”と思わざるを得なかったのは、言うまでもない。
ちなみになぜシャネル婚約者のアルファスの名を名乗ったかというと、完全に思い付きである。別にどうでもいいや~という思いの表れなのかもしれない。
「あれ?…これ数が増えてないか?多分さっきのは様子見程度だったのかもしれんな…よし」
そういうと創太は槍を5000本程即興で作り、地上へと投下させる。
「さて、もう少し前線も持ちこたえられそうだし…俺もそろそろ降りますか」
そういうと創太は、神術「the clouds―(ザ・クローズ)」を切り、乗っていた透明の、まるで雲の様な魔術で作られた板が消え、創太は真っ逆さまに落ちていく、だが創太は焦りを知らず、ひたすらに戦闘の為の準備を開始する。
「黒、白。準備は?」
「「はい、大丈夫です。主」」
「それじゃあ行くか。顕現」
そういうと黒の剣が、白の銃が、まるでそこにあったかのように顕現し、手に吸い付くように握りしめる。
そうして紐なしバンジーどころの話じゃない高さから降り、そろそろ地上が見えてきた所で、創太は召喚する。
「来いっ!ザッハーグ!」
{お呼びか、主よ}
「ああ、俺を載せて雲の上少し上ぐらいで人々には見えない所だけを飛行してくれ、そしてその眼で魔物を見つけ、お前の判断で魔物を倒せ、以上」
{ああ、了解した。主よ}
そういうとハーグは音速の壁を少し超えたあたりまでスピードをグンッと一気に上げた。創太には相当のGがかかっていることだろうが、創太はお構いなしで何も感じていない様に空の散歩を楽しむ。
「じゃあ俺はそろそろ降りるぞ。空の散歩、楽しかったぜ!」
「主にそう言われるとは、ありがたい限りだ」
そう言い残して創太は消えた。ハーグはただただ主の命を全うしようと、ひたすらに魔物を狩りつくそうとさらに高度と速度を上げ飛んで行ってしまった。
「さて、着いたわけだが…一雫」
「マスター。ご用件は何でしょうか?」
「今お前何してる?」
「ちょっとマスターがやり過ぎたおかげで軽くギルド本部から事情聴取というか軽く尋問ですね。吹き飛ばしてやろうかとも一瞬思いましたが」
「OK。もしもやり過ぎていると思ったらお前の判断でやって構わないが、今はこっちの方を優先してくれないか?」
「YES。マスター。仰せのままに」
「じゃあこのスタンビートはどうせ人為的に起こさせたものだろ?魔法陣なんかで魔物をひたすら出すようなものがあると俺は睨んでいるが、どうせ見つけてんだろ?」
「YES。マスター。地図の方転送します。その区域にはこれよりも強い魔物がいる事でしょうが、そこは木が鬱蒼と茂っており、多少地形が変わってもバレないことでしょう」
「ありがとう一雫。世話をかけるがよろしく頼むぞ」
「YES。マスター。大丈夫でございますので派手にやってもらっても大丈夫です。ではマスター。後の事はお任せを」
「OK一雫。じゃあ任せた」
そういって創太は念話を切り、白と黒を再び握りしめ、森の中心へと歩き出す。それはまるで、三文芝居のヒーローの様にしっかりと一歩一歩を踏み抜き、悪の向かうところへと――――。
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