第42話

時はユリアがランクアップ試験に勝利したその時、グリューン王国では……



「た、大変です!国王様!」


「うむ、どうしたのだ」


「魔物が、スタンビートを起こしました!それも万の大軍で!AランクやSランクもいるとのご報告を承っておりますっ!」


「何!どこで起こっているんだ!」


「そ、それがグリューン草原の奥にございます、マリアナ神殿の方からとのご報告が」


「ということは、スタンビートは…ここに」


「は はい、その様でございます」




それには王の執務室で資料を持ちながら神妙な赴きで聞いていた王女も思わず資料を落とし、顔の筋肉に力が入っていない、それほどにこのスタンビートは王国にとって厄介で、面倒で、グリューン王国に一世一代の危機だった。




ちなみにスタンビートとは魔物が大軍で押し寄せてくるという災害の様なもので、村などがこれで破壊させる例も少なくは無い。原因は不明だが大体少なくても500~1000体、今回は3000~5000体レベルで、少なくともここまでの数は過去最高だろう。




「ま、まずはギルドマスターに報告し、緊急依頼として扱うよう指示を出せ、報酬は言い値を払わせて構わん!王国の最低限の守り以外の兵士を迎撃に当たらせろ!部隊長、隊長クラスの者共には宝物庫の武具を貸出を許可するっ!全力でこのスタンビートを止めろ!」



「は、はい!分かりました!すぐそのように各所に伝達いたします!」



こうして兵士は去っていった。一層の焦りを残しながら。



「この王国はどうなるんだ、こんな時に!我にはこのグリューンで統一するという使命があるのだ!ここで、ここで邪魔されるわけにはいかん……」



王は一人、執務室の椅子に座りながら、こんなことを思っていた。焦りと焦燥、それに理不尽に対する怒りが、その傲慢さから溢れてくるように。





だが王は知らない、人を越えた化け物を、人を超え、神になった者が偶然いることに。まるで因果に導かれているかのようにこの問題を解決してしまうことも、そしてこの者がまた、グリューン王国にとっての台風の目であることもまだこの時は知らなかった……。

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