第37話
そうして初めて地上での夜を過ごした創太達だったが、朝食を食べ、身支度をある程度済ませたら、一雫の助言でギルドに向かうことにした。一雫曰く、
「ギルドの依頼は朝早くにある程度は無くなります。そこで…」
等と説明と悪だくみを言っていたので今回は創太だけでギルドに行くことになった。
「こんにちは。ギルド王国本部へ」
との声で迎えられたのは昨日創太の所為で皆が倒れていたのにただ一人生き残って登録してくれたギルド譲だった。
「ああ、ソウタ様。今回はどんなご用件で?」
「依頼を受けたいんだが、どんな依頼があるんだ?」
「ええ、ソウタ様のランクですと採取系と呼ばれる薬草なんかの回収、もしくはゴブリンやコボルトなどの討伐系が受けられます。依頼達成を証明するためにゴブリンであれば角、コボルトであれば牙などがあげられますね。」
「そうか、ちなみに受ける依頼の個数に制限はあるのか?」
「ええ、一応5個までという制限がございますが、大体の方は3個で収めるぐらいだと聞いております」
「そうか、じゃあこの依頼とあの依頼も受けよう」
と受けた依頼はまさかの5個。ギルドで同時に受け付けられる最大数だ。
「あの…大丈夫ですか?そんなに」
若干朝からどんちゃん騒いでた冒険者たちが見つめている。少し調子に乗るなよ!という目をしているのは気のせいなのか分からないが、創太は迷うことなくすらすらと答える。
「ああ、問題は無い。それと依頼の角やらなんやらだが、これでいいか?」
と答えながらバッグの中を探る。すると
「あっ、あった。これでいいか」
ギルド譲が少し困惑する。無理もないだろう、だって依頼を受けてからそれを達成するのに1分とかからないのであればだれでも困惑するだろう。
「は、はい。これで依頼は完了です。お疲れ様でした。」
といつも通りの受け答えをしているはずだが、何処かぎこちない所があるのはやっぱり困惑しているというのもあるのだろう。だがしかし
「それとまだあるんだがいいか?えーっと、あったぞ」
と見せてきたのはコボルトの牙50本とそのほか依頼のアイテム類全てだった。
一応これの種明かしをしておこう。創太が探っていたあのバッグだが、実は一雫が独自に創ったテレポートバッグだった。それを一方が創太、一方を我アルとユリアが持っていき、アル、ユリアがその場で魔物を倒し解体、サポートなどは全て一雫とその配下精霊がやっているから問題ない。ということであったが、そんな事を気付く奴はこのギルド本部にはおらず説明のしようがない、そういうことだ。
「コボルトっていうのは巣を作る生き物か?」
「は、はい。その通りです」
そして困惑しているギルド譲もこのタネには気づいておらず、ただ困惑するのみだったが、さすがに少し落ち着いたギルド譲はいつもの定型文に戻り始めた。創太も巣を作る生き物だということはさっき念話で知ったぐらいだが、そんな事はギルド譲には知る由もないことだ。
「で、ではこの依頼は達成されました。まずはゴブリンの依頼の報酬金850コルとコボルトの報酬金1020コルとそのほか採取系の依頼の報酬金1530コルです。確認されましたか?」
そういって目の前で数えてくれ、きちんとあっていたので創太はそれを全てバッグに入れる。
ちなみにここで創太達は一雫からのレクチャーによって知っているお金の価値だが、こうなっている。
1コル=街貨
10コル=鉄貨
100コル=銅貨
1000コル=銀貨
10000コル=金貨
100000コル=白金貨
1000000コル=王金貨
となり、1コル=日本円にして1円の価値だとなる。
「そしてEランククエストを1月の間に5回クリアしたのでソウタ様にはDランクに上がることが出来る権利がありますが、いかがいたしましょうか?」
「ああ、その事で少し時間をくれ、いいか?」
「はい、大丈夫ですよ。そして残った45本ですがあの看板で売ることが出来ますので行ってみるとよいかもしれません」
「ああ、ありがとう。また行ってみることにする」
そうして一直線にギルドから出ようとしたその時。酒臭く、がたいのいいオッサンが5人ほど創太の周りを囲み
「よお、兄ちゃん。少し付き合えよ」
厄介ごとがまた舞い込んできたことに創太はため息をつくのであったが、まだ創太は知らない。それが創太の、怒りの琴線を引いてしまう事を、創太すらもしらないのであった――――。
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