第32話
「フヒ……フヒヒ、あいつが あいつが悪いんだ。あいつがでしゃばるから……フヒヒ…フヒ……」
と言いながら、王城を少し離れた先の角で丸くなりながら意味の分からないことを言っているのはクラスメイトのその人だった。何故こんなところで自己弁護をしているのかというと理由は簡単、あの魔術はその人が放った火魔術だった、創太を奈落へ落とし、創太の運命を変えてしまった。
そこにツカツカと足音が一つ、一つとやって来る。翔太はブツブツという物言いを止め顔を前に上げる。すると……
「やあやあ、君があのクラスメイト殺しか~、どうだい?今の気持ちは?」
「お……お前…は」
「いやいや~しゃべらなくても結構だよ、人・殺・しィ~~」
「う・う・うわあああああああ!!!!、お、俺は悪くないィィィ!あ、あいつがぁぁぁ!で、でしゃばるからぁぁぁぁ!、でしゃ……ばる…か…ら…」
とそれは自己弁護であり、子供の癇癪ででもある・・・そんなことを相手に言葉としてぶつけても何一つ表情を変えずにその者は提案をする。
「雪風 優衣……でしょ~、欲しい?」
その言葉にクラスメイトはピクッと反応する。そして希望の目を向け、その者に問うた
「出来る…のか?、そんな事―――」
「う~ん 出来なくはないけど・・貴方が私の目となり耳となり、手となり足となることを誓えば、その対価として雪風をあげるよ。でも今決めてねっ、そこでウジウジするぐらいの手足ならいらないかな~」
「わ 分かった、な なるから、雪風を手に入れるためなら…どんなことだってする」
「言ったね。じゃあ契約だ、僕は君を手足としてこき使う。その代わり、対価として雪風優衣をキミに与える」
「お、俺はその者に忠誠を誓う、対価として雪風優衣をいただく」
そう2人は誓うと首、腕に紫の丸い円が体から浮かび上がってきた。
「な、なんなんだよ!これは…」
「これは契約魔術、私のオリジナル魔術で、一種の奴隷みたいな感じになるけど、心配はしなくていい。これは僕もかかっているし、契約内容はただ一つ、さっき言った通りの事を厳格に順守すれば基本自由だけど、もしも契約が違われた場合、多分死ぬだけじゃすまないけど、多分大丈夫だよね~」
その言葉にクラスメイトは生唾を飲んだ、そしてクラスメイトは理解する。こいつはおかしいと、もう常人には分からない、ネジが数本とかそんなレベルじゃない。数百本レベルで抜けていると理解しながら、それでもやらなければならない。そう思えると同時に思い出すのはあの時の事。
自分が少し夜遅くに起きてしまい、トイレに行こうとして中宮創太の部屋の近くを通ろうとして見た。見てしまった。優衣が創太の部屋にノックをかけているところを。そして翔太は完全に理解した、優衣はあの中宮創太の事が好きなんだ…と、だからこそこんな悪魔の様な要求も呑めた。要は完全に焦りだ、でもそれだけでいくらクラスの嫌われ者と言っても実質殺すことが出来た。
「アハっ!嬉しいよ!じゃあ早速だけど命令だ。今ここで起こったことすべてを誰にも言わない事。そしてクラスメイトの信頼をある程度回復、もしくは維持させておくこと。そして次の命令を待て、よろしくねっ!人殺しさん。」
こうして神をも恐れる悪魔の所業に手を貸したクラスメイト。優衣はそれに気付く間もなく水面下で着々と進めているにも関わらず、ただひたすらに、我武者羅に創太の後を追う。
―――まだ誰も気づくことなく、これから起こる災難も知らずに……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます