第15話
アルスはその顔を強張らせながら語った。
「一代目創無神、シャネル・ヘイズは女性だった、小さい辺境の村で生まれたそうだ。シャネルは特殊な力を持っていた、それが魔力の続く限り様々な物を創ることができる。そんな能力を持っていて困った人がいると見過ごせない、そんな優しい人だったという。
ある農民が木のクワが無くて困っていると聞いたら、すぐ飛び出しては魔力を使い鉄のクワを差し出し、貧しい所の赤ちゃんが泣いていたら、おしゃぶりや 遊べる物を差し出したり…そんなシャネルだったが、年齢を重ねるごとにその美貌と相まってか「聖女」と村の中では呼ばれるようになっていった。
そこに目を付けたのはグリューン王国の王だった。
シャネルが18歳の時、国王が直々にシャネルを王妃として迎えようとするが、シャネルはそれを拒み、それを聞いた王は大層怒り、部下に命じてこの村を焼きうちにし、さらに兵を動員し村の住人を切ってしまった。シャネルの父 母も全て切り、焼いてしまった。
シャネルはこの村をもう壊さない事を条件に国王の王妃になった。ちなみに国王は大層な女好きらしく、気に入った女全てに手を出しているらしい。使い物にならなくなった女は優に3ケタを超えているほどの下種野郎らしく、さらに政治は国王の支持者が政治的有利になる法しか出さず、戦争をしては領土を今も広げようとしているので、国民はめちゃくちゃになり、強盗 恐喝は当たり前 女を道端で襲う 何てことも日常茶飯事だ。魔物ももちろん、荒廃しきった街に向かっては人々を襲っていた。さらに疫病が発生し、日夜病気で死ぬこともあった。
国民はいつも恐怖していた。
でも王はそんなこと知らず、日々宴をしては酒を大臣たちと飲み明かし、飲み食いしては寝る そんな日々に嫌気がさしたのか、シャネルは隙を見ては王宮を抜け出しては街に降りていた。 が、街の有様はひどい物だった。
「ひどい・・・」
困っている人は見過ごせない性格なシャネルなので、魔力がもつ限り食料をひたすら魔力が枯渇する寸前まで様々な物を作り続けた。
それを見ていた人が次々と集まり、そして、
「おおおおお!!」
「すげええええ!」
と寄ってきては、様々なものに手を伸ばし始めた。
「うめえよおおお!!」
「うまい! うまいっ!」
と夢中になって食べてはそのひとたちは笑っていた。気づけば みんなが笑っていた、それを見て、聖女と言われたシャネルは思った。
(ああ、いいなあ、みんな、こんなにも笑っている、こんな姿をみるのは久しぶりだなあ・・・)
シャネルは隙を見ては抜け出して人々に食べものを作り、薬などを出しては人々に振る舞っていた、気が付くとシャネルの周りにはいつも人々がいて、笑いが絶えない、そんなところになっていった。そしてまた、シャネルは思った。
(いいなあ、幸せだなあ)
だが、その幸せは一気に崩れることとなる。シャネルが何回も隙を見て抜け出していることを夫である王にばれてしまい、
「あんな下等生物共とかかわりあうな!!」
とシャネルを地下に幽閉した。
「そう言えばお前は 魔力の限り物を作る事ができるんだったよな?」
と王はシャネルにひたすら武器を作る事を命じた。
シャネルはひたすら武器を作ると同時に シャネルはあの笑顔を思っては胸が苦しくなりながら、それでも何もすることが出来ない自分を悔い 恥じた。何もできない自分を呪いながら。
(自分にできる事は もうこれしかないから)
シャネルは地下でひたすら、神であるプリムに祈りを捧げた。ひたすら、眠る間も全て祈りを捧げた。その祈りを見て、プリムはある加護を捧げた。という、
一つ。魔力の回復スピード上昇。1秒に2000回復するようになった。
シャネルは生まれつき魔力量が多い、そして魔力は使えば使うほど魔力量の上限が上昇するため8000もの魔力の上限があった。
二つ。魔法の全適正。読んで字のごとくではあるが、全ての魔法適正の上昇。
三つ。転移魔法。
四つ。称号『Ω』の譲渡。
………これすなわち シャネルが神の器に達したということ。
この能力を夢の中でシャネルがプリムに会い、この能力を貰ったと思えばすぐに転移の力で街に降りた 街は相も変わらず荒廃しきっていた。だが
「おーーい シャネルちゃーーーん!!」
とシャネルに助けられた人々は生きており
「またおいしい物作ってよ」
「シャネルお姉―ちゃん!!」
(本当に 本当に良かったっ)
シャネルは人々に食べ物や道具 薬 衣服などを作っては配って、魔力を回復しては何かしらを創り、配っていた。こうやって人々を笑顔にしていたが、シャネルはその中に一人の20代くらいの青年と目があった。すると、
「大変だ!こっちに魔物の群れが!」
これを聞いた瞬間、シャネルはどうしたらいいか迷った だが、
「すぐに俺の剣を持ってきてくれ、頼む」
「おい アルファス いくらお前でも…すごい数だ、軽く50はいる」
「でも行かなくちゃならない みんなが死んでしまう、それだけは…だめだ」
「私もお手伝いいたします、アルファス様」
「おおこれはシャネル様、お気持ちはありがたいですが貴方も立派に僕の守る人だ。これほどの物を我々に与えてくださり、また助けてもらうとなれば、もう顔も上がりますまい」
「私には全属性に適正があります、と言ったら?」
「おおっ!そうですか、では私だけではいささか不安なので是非!お願いしたい、私だけでは守れないかもしれないので」
そしてシャネル達は魔物の居る場所に来た。
「それではお願いします、シャネル様」
「ふふ、シャネル でいいですよ、アルファスと私も呼びますので」
「おお、それでは失礼して、シャネル」
「では最後の確認です、シャネルは後方で魔法支援・攻撃・回復などをお願いしたい」
「任されました、前方に出ます。援護をお願いします」
シャネルはうなずくと、アルファスは前に出ていった。シャネルも必死に援護していたが、シャネルの心の中にはさっきからモヤモヤしていた。胸の中がきゅうっと締め付けられ、心はふわふわした。
(何でしょう、この気持ち)
あとで気づくことになるが、このときシャネルはこの青年に…恋をしてしまった。シャネルは年頃の乙女だったのだ。恋をしても自然なことなのだろう。
アルファスは20代の真面目な青年で、正義感があふれているがちゃんと物事を判断ができ、仲間を守るためなら非情な判断もできる。そんな心の芯をまっすぐ持った青年で、シャネルと同じ正義感の持ち主だ。
そして魔物を倒して街に帰った後も、シャネルとアルファスは仲睦まじい関係に発展していった。そして
「俺と一緒にいてくれ、シャネル」
「はい、アルファスっ!」
アルファスのプロポーズにより、こうしてシャネルとアルファスは夫婦となった。遠く深い森に2人で隠居することになった。
こうして5年。シャネルとアルファスは幸せな家庭を築いていた。
子供にも1人恵まれ、幸せな生活を育んでいた。
だが、その幸せはまた不意に消え去ることとなる。
国王はシャネルの事が大層気に入っていたらしく、シャネルがいなくなったと同時にまた執拗に、まるでネズミのように追いかけてきた。そして見つけた・・・見つけてしまった国王はシャネルが夫婦で住んでいると知ると、また森を焼き尽くし子供を殺した。そしてアルファスをも殺してしまおうとした。
(せめてアルファスだけでもっ!!神様。なんとかっ、何とかアルファスだけでもっ!!神様っ)
{シャネル、シャネル――私は、私はプリムです。あなたの声、確かに届きました…力を与えましょう。だが一つ約束してくませんか?あなたを私が助けた後、あなたはこちらに…天界に来てくれると約束してくれませんか?}
(分かった、だからアルファスを助けてっ!、私にできる事ならなんだってするっ!!)
{確かにあなたの声、聞き届けましたよ―――――}
シャネルは神にも劣らない力をプリムからもらい、その力を持って、シャネルは敵を全て撃退した。
「大丈夫 アルファス!」
「ああ…何とかな、大丈夫だったか、シャネル」
と同時にシャネルの体が透けていくと同時に、体が発光した。
「おいシャネル…お前」
「ご飯はちゃんと食べるのよ、ちゃんと寝て、ちゃんと起きて、そして…幸せに暮らして。それが私の最後の願い、あなたにだけ贈る。最後の願い」
「おい、シャネル!何かあったのか」
「今から私はちょっと行かなければならない所があるの、もう戻ってこれない。だから…ごめんね アルファス」
と同時にシャネルがだんだんと透けていき。
「だから、幸せに、いつまでたっても・・・・私はあなたが大好きですっ」
と精いっぱいの笑顔を残し、シャネルはこの世界から消えた。
「シャネル!シャネルーーーーーー!!!!!」
というアルファスの叫びを残して
「後は現地で直接聞くといい、創無神シャネル・ヘイズから、僕が知っているのはこれぐらいだ」
「そんなに深かったのか…でもプリムが絶対の神なんだろ、なんでシャネルの事はみんな知らないんだ?」
「単純だ。プリムが偽装しているんだよ、でも一応地上には創無神として書き記した本があると思う。地上では邪典とか呼ばれているかな、探してみると良いよ」
「へえーー」
「じゃあ、創無神の義を始めようか」
とアルは創太のの体に触れると同時に魔力を送り、創太を気絶させようとアルの金色の魔力が送られる。
「ちょ、アル、お前っ」
そして創太は意識を手放した。
「行ってらっしゃいっ、創太君。シャネル様の元へと」
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