第二章『創無神生誕』編
第6話
「うっ、ううううう!!!」
創太は痛みと共に目覚めた、創太はまず周りを見回し、それで気づいた。
「こ、ここは…迷宮?」
そう、ここは迷宮。それも5000mもの奈落を落ちてきた。創太はおのステータスを以て何とか耐えたが、それでも創太の体には骨折が数十本、すでに出血多量。もう考える事もできない。
「ああ、ああああああ。」
こうして創太は、また眠りに落ちていく……。
◇
そうして創太が目を覚ます時、その目の前には—————
「……魔獣…」
そこには涎を垂らし、4足歩行で歩く灰色の狼。
「い、嫌だ、やめろ、やめろ――」
創太は必死に抵抗する。だからこそ、だからこそ創太は、動かない体を動かして戦おうとする、だが創太の疲弊と、5000m下の奈落、この創神の塔の最終層第100層の魔獣の強さを創太は知ることになる。
創太はその体を魔力でコーティングし、そして何とか動ける体をその狼――魔狼へと向ける。
「グルゥゥゥゥゥゥ」
魔狼がそうなく、それは餌の様子を確かめるためと、殺せる算段を付ける為。
(今しかない!)
魔眼は使えない、使うとそれが隙になる。つまり殺されるという事を意味しているという事になるのだ。
「はああああああああ!!」
創太は叫び、一気に加速する、それは疲弊した体を引きずり、今の全てをぶつけた渾身の一撃、それは魔狼へと―――――届いた。届いたが、それでも。
(殺せなかったっ……)
こうして創太は、その意識と共にその体を闇に落とした。それは、創太の敗北を意味していた。それは、創太が一番感じていたことだろう―――。
◇
(あれ…ここは…)
こうして創太は目を覚まして、最初に目にしたのは……腰より下にあるはずの足2本が、魔狼によって食いちぎられている光景だった。
◇
「う、うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ああっ———」
こうして起きて、まるで赤子の産声の様に声をあげた創太だったが、それは悪手であった。
「グルッ?グルグルゥゥゥゥゥ……」
こうして、近づいてきたではないかと、こうして創太は心の中で悪態を吐く、だが創太の中で襲ってくるのは、ヒドイ空腹感と、虚無感と、脱力感。あとは足がないことによる痛みがずきずきと創太を蝕む。
————ガブリ。
その、ありきたりのような、そうでない様な音が聞こえてくると同時に、創太をもう片足が—————無くなった。
「ぎゃあああああああああ!!!!!!!!!」
創太は叫んだ、けどもう魔狼は動じない。ひたすらに「餌」を食らうだけ、それは生きるという事だが、今の創太にはそれは絶望だ、だからこそ、考える事もできない。今創太にできる事はたった一つ、そう。心で感じ、感情をただただ自分の身に感じる事だけだ。
◇
(何故?俺なんだ?俺がなぜこんな目に?)
(あいつは、あいつは何故俺を食っている?何で?何故俺を?)
(何故?俺を崖から落とした?誰が?なんのために?どうして?)
(あいつは、今、今俺を食っている…何故俺を食う?)
(俺は……何のために……生きている?)
(俺も、生きたいんだよ、飯を食って、笑って、生きたいんだよ)
(俺の敵…それを死を、俺の存在を認めない奴が全員敵だ!だからこそ、俺は…俺は…)
創太は思った、何故?と、今、創太を食っているあの狼を、何故崖から落としたのかと、そして……何故生きているのか、と。そして気づいた、創太の生存欲求に。それが人間を超える、創太の想い。だからこそ、
創太は、日本という安全で、身の危険がほとんどない世界から離れ、違う世界に来て2日目に、この世界の理不尽さを知る。その理不尽は創太の心を粉々に砕き、壊す。そしてその心は、まるで名刀に作られた刃が如く。堅く、強く、美しく。そして鋭く。
(そうか……狼は、狼は、生きるために食っているのか……)
(じゃあ、俺は、俺は……生きたいっ………)
その思いは、もう届かない。届きはしない。だからこそ、だからこそ。
(ああ、生きたかったな……本当に……)
こうして創太は——————死んだ。
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