第5話
「はぁ!!!」
「やあ!!!」
「いけええええ!!!」
「てりゃあ!!」
「おりゃあ!!!」
勇者の掛け声と共にやられていく魔物たち。様々な形をした魔物たちが勇者の手の元で命を散らし等しく肉の塊へと変わっていく。その数が増えていくごとに迷宮の奥深くへと勇者たちが進んでいっているという何よりの証明に代わっていった。
勇者の力はすごいものだな…と創太は心の中で思いながら、そして羨ましがりながら1日であっという間に10層のボスの扉へと着くと団長から指示がかかった。
曰く『創神の塔』第10階層のボスはコカトリスと言い、飛ぶ全長10mの怪鳥で基本突進と風を起こし吹き飛ばすぐらいしかできないが 体力が減ってくると麻痺の針を含んだ突風を打ってきて流石にボスという名前の通り強いらしい。
ステージもギミックらしいギミックは無いがステージを二等分になるように崖があり、崖の高度は優に5000kmを超えるといい、絶対に落ちるな、近づくな。と団長は念押ししていた、コカトリスは危なくなったら崖を超えた反対側に逃げるそうなので、そこを魔法で攻撃するのがベターらしい。
「勝てないという事は無いと思うが、迷宮は何が起こるかわからん!これは訓練ではないっ!各自気をつけてくれ!!!」
「はい!!!」
という声で迷宮ボス前の扉が開かれ、コカトリス討伐が始まった。
開幕に見えるのは異形な形の鳥。それも正気を忘れたかのように大きい。まるで諧調という言葉が最も似合うその鳥は、人にダイレクトに恐怖を与える見た目と、甲高い鳴き声で勇者たちを震え上がらせた。
だがさすがは勇者の名を異世界でもらっただけはあり、最初は順調に討伐が進んでいっている、特にすごいのは例の四人組らしく、団長が言うには一番勇者の力がかかっているのはこの4人組らしい、中でも一番強いのは友樹らしく、数か月もしたら団長よりも強くなると団長は言っていた、ちなみに4人組のステータスはこの通りらしい。
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ステータス
坂上 友樹 職業 勇者 レベル15
筋力: 2500
体力: 2330
耐性: 2120
敏捷: 2280
魔力: 2590
魔耐:2570
スキル
聖属性魔術 LV3
火属性魔術 LV2
光属性魔術 LV2
魔法剣LV5
剣術 LV5
体術LV5
高速魔力回復
限界突破
全言語理解
称号
異世界者 勇者
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ステータス
斉藤 竜太郎 職業 拳闘士 レベル 14
筋力: 3110
体力: 2310
耐性: 2840
敏捷: 960
魔力: 1580
魔耐:2530
スキル
粉砕破
波動拳
金剛
風魔術LV2
火魔術LV2
全言語理解
称号
異世界者
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ステータス 職業 回復師 レベル 15
雪風 優香
筋力: 840
体力: 1290
耐性: 1510
敏捷: 1670
魔力: 2850
魔耐:2580
スキル
風魔術LV3
回復魔術LV5
光魔術LV3
高速魔力回復
言語理解
称号
異世界者
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速水 凜
ステータス 職業 剣士 レベル 14
筋力: 1230
体力: 1590
耐性: 880
敏捷: 2160
魔力: 1540
魔耐:1320
スキル
風魔法LV4
剣術LV7
言語理解
称号
異世界者
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勇者4人組はみな感極まっていた。勇者の一角を確実に担える強さを4人それぞれが持っている。
斉藤はバリバリの拳闘士、拳で戦う近接系。
速水は刀。速いスピードで敵を切るスピードファイター、剣道をやっているのがここでは反映させられているのではないか。
一番すごいのは坂上だった、見てみると称号の欄に勇者があったので一番勇者の恩恵を授かっているのは坂上らしい。
そして優衣は回復魔法や光魔法などの後方支援が感極まっていた、このパーティーでは一番重宝されているのではないか。
◇
『創神の塔』第10階層ボス。コカトリスの体力が3割を切った。勇者であるクラスメイトも顔を緊張に埋める。
「今から竜巻ブレスがくるぞ!総員。衝撃に備えろ!!」
とコカトリスが竜巻を放つモーションに入ったとたんコカトリスが不審な動きを見せた。それが、創太、ひいては勇者たちの不幸の始まり。
————そう、これが本当の恐怖の始まり。
「ギョガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
という謎の奇声を発したとたんコカトリスと体が発光し始め、煙がコカトリスから出てきた、と同時に団長から。
「お前らああああああああああああああああ!!!!逃げろおおおおおおおおおお!!!!!!」
という声の中でその化け物は姿を現した。
創太は勇者の中でも一番後ろにいたため、真っ先にひくことができたために余裕が生まれていた。そしてその煙の先が見たいという感情が引き起こしたのが創太のステータス欄に書いていた『解析』の存在。
これであれば煙の先にいるあのコカトリスを『解析』できるのでは?という考えの元。無我夢中で『解析』を発動させようと念じてみる。すると何か別の意思が働いたように頭の中で断片的な情報が巡る。
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ステータス
コカトリスエンペラー
筋力:4270
体力:6510
耐性:5200
敏捷:3200
魔力:1050
魔耐:3070
スキル
LV10ミニコカトリス召喚
全状態異常属性ブレス
緊急時筋力・体力・魔力・耐性・魔耐ステータス倍
魔鳥の咆哮
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(ヤバい、こいつは倒せない!!クラスの皆が束になってもっ!!!)
———創太は分かった。『解析』の影響かわからないが、平均ステータス2000の坂上ですらコカトリスの二分の一の力を出せていたかというとそうではない。魔物のステータスと人のステータスではその力の元が大きく違うのだ。そして次に見えたのはスキル。断片的な情報の中でも、『ステータス倍』という文字に創太は危機感を覚えた。ステータスが二倍というのは、ただただ力が二倍になるだけではない。と創太は知っていたのだ。迷宮でひたすら後ろで勇者たちの戦いを観察していた。創太だからこそだ。
創太はすぐさま困惑しているクラスメイトに状況を分からせるため、大声で叫んだ
「みんな!!!!逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
という創太の発した声に、
「な、なんだよ落ちこぼれがっ!!!俺たちに指図するなっ!!!」
などとクラスメイトの一人が言い放つ。まだ状況が分かっていない愚か者らしい、
と同時にコカトリスエンペラーが煙の中から姿を現した。
「ピャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
という威圧を含んだ鳴き声と共にクラスメイトの皆が我に返り。
「ううっ、うわああああああああああああああああああっ!!!!」
と一斉にクラスメイトが9層へ続く階段まで逃げ始めた、その中でも残ったのはたった5人 四人組と創太だ。
「団長!俺も戦います!!」
と身の程知らずの勇者がしゃしゃりでる。確かに強いかもしれないが、相手はその「強い」坂上友樹の2倍のステータスを持つ化け物だ。ここでならそれは”英雄的行動”ではなくただの”蛮勇”だ。
「馬鹿言え!あいつは50層にいるボスだ!お前のステータスの2倍以上はあるっ!分かったなら早く逃げろ!俺たちが時間を稼ぐ!!」
と言われ勇者と4人は渋々逃げた。が、創太だけがここに残った、理由は簡単だ。体が軽い。まるで自分が自分じゃなくなったみたいに、体が強化され、進化し、生まれ変わったような気持ちが、恐怖心をも消し去る。そして自らのステータスを肌で感じ、戦場の中でステータスを確認する。
「小僧!お前も早く逃げろ!!」
———体が…軽い…。
————なんだこれ…思考がクリアになっていく…。
———ステータス…なんだ?これ…
—————これなら…、できるかもしれない。
創太だって死にたくない。死にたくないという事は何よりの命題だ。生物として、そして死へとつながる脅威なのなら、それは排除するしかないのだ。生命として。
そして今、偶然。たった数粒の砂を掴む偶然であるが、確かに創太は掴んだのだ。自分の”可能性”を。
そう、全てはあの時。『解析』でコカトリス・エンペラーを”見た”時に———
「いいえ団長。これを見てください」
と言いつつ見せたのは僕のステータスプレートだった。進化した、落ちこぼれのステータスプレート。その数字が表すのは、化け物の証明。たった今掴んだ可能性の真価だ。
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ステータス
来宮 創太 職業 無職 レベル 4
筋力: 4270000
体力: 6510000
耐性: 5200000
敏捷: 3200000
魔力: 1050000
魔耐:3070000
スキル
偽装LV∞
解析LV∞
称号
異世界人 Ω
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「お前 そのステータスは??」
「約束してくれませんか?1つ。このステータスを他言無用にすること。もちろん王女にも王にも誰にも言わないこと。2つ、帰った後も僕の味方になってくれる事。もちろんいろんな面で使わせていただきます。その代わり僕もできる事をなんでもやりましょう、武力行使なんかももちろんやります。…どうですか?」
「あ、ああ。分かった。確か名前は…」
「ナカミヤ ソウタです」
———これが創太の「可能性」。全ては偶然。偶然であり必然。そう、あの時。コカトリス・エンペラーをステータスを「見た」際に発動したのだ。創太の持つ『スキル』<RIA BOOST>が。その能力は『自分の現在のステータス』と『相手のステータス』を”かける”能力。
<RIA BOOST>の発動条件は『相手のステータスを”見る”事』。
つまり先ほど何が起こったかというと、『解析』でコカトリス・エンペラーのステータスを”見た”事で<RIA BOOST>の能力が発動し、
「創太のステータス」×「コカトリス・エンペラーのステータス」をかけた値がたった創太のステータスとして相成ったのだ。
(僕も存外、チートだ。それが今分かったよ。この力があれば、無双も夢じゃないな)
と創太は内心高笑いを上げながら。団長は創太へと指示を出していく。団長は創太のステータスに驚きながら、けどなぜか無条件に信用しているような素振りのままに指示を出していく。
「ソウタ、お前は好きに動いていい、ただし5分間持ちこたえてくれ。後の処理は俺がする。俺は動ける者、魔法を打てる者を引き連れて合図と同時に一斉に魔法弾を発射させる。その隙に逃げろ」
「分かりました」
創太はコカトリスエンペラーと対峙しながら。倒そうか、目立たないでおこうかなどと心の中で考えていた。
(さてどうしようか、僕は多分こいつを倒せる力がある…が、僕が倒してしまうと面倒なことになる。あの王女は厄介だ。あの王女も王国も僕たちにウソをついている。予測だが間違いないと思う。何が起こるかまだわからないからまあ死なないように手加減しようか。今は手加減したほうがいいな、まだ目立ちたくはないな……それに僕の能力は…おそらく、極度に特殊だ、どうなるか分かったものじゃないんだ。だから————)
「ギョエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!」
となめたように威圧してくるが、あの威圧は自分よりステータスが下の奴しか聞かない、だから創太にはただの五月蠅い声にしかならない。
そして戦闘をしたことがない一般人でも、圧倒的ステータスを持つと。
「うるせえよ—————」
と、戦闘ではなくなる。それを言葉で表すなら『虐殺』。筋力約40万の怪物が ステータス5桁しかない鳥を思いっきり殴ると、
「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!」
とあの怪物とは思えない弱弱しい奇声をあげ一瞬で倒れた。
(もう体力の6割を切っている———ハハハハハハハ。なんだったんだ。これが、圧倒的なステータスの差だとでもいうのか…ハハハハハ)
冷静に頭で考え、一歩ずつ行動していく創太。
ここからは戦闘とは呼べない、言葉通りの『蹂躙』だった。体力を一定にして、回復したら殴る。ステータスが倍になろうが、石化ブレスを打とうが全てが効かず。ただただ創太は無心で殴っていた、こうして手加減しながらも5分後。団長が動けるクラスメイトをかき集めてきた。
「待たせたな、ソウタ!——魔法弾っ!!!撃てぇぇぇ!!!」
と同時に様々な種類の魔術が飛んでくる。
(やっと肩の荷が下りる)
創太がそう思い、油断した隙にだ…ふいに魔術弾が飛んできた。
(えっ?…)
創太の方に向かって。
(えっ、えっ、えっ、何で、何で、何で!。一歩先は崖だ、なんでっ、なんでっ!!何で何で何で!)
————気を抜かなかったら、こんなことになってはいなかったかもしれない。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
———けど実際に、この異世界で現実として起こってしまった事実。
という創太の声が最後、創太は崖から真っ逆さまに落ちて行ってしまった。
(死にたくないっ!!!)
その足掻きすら届かない。チートのステータスですら意味をなさない。絶対の絶望。
————これが『運命』という言葉なのかもしれない。それが運命なのなら、それが例え絶対のステータスであっても、成すすべもないのかもしれない。
そして創太は『奈落』へと。落ちていった。
———これがどうなるのかなんて、誰にも分りやしない。『運命』という言葉すら。奈落の底までは届かない。その光も、希望も、何もかも、深い絶望に勝ることはないのだ。
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