第3話

「勇者たちよ。魔王を討伐してください!!!!!」


その言葉、グリューン王国の王女の言葉で創太達2-4の生徒たち26人が順々に目覚め始めた、創太は早めに気が付いていたので状況を整理しておく。冷静に、でもどこか喜びを隠しきれない顔をして



(多分ここは地球では…ないか、それでいて……やっぱりファンタジー世界?異世界転移なのか?…)


創太はかすかに笑みを浮かべながら、でもそれでもと思考を巡らせる。だがいくら考えてもそれ以上の結論は出ないまま、喜びをかみしめている。



そしてクラスメイトが皆目覚めた所で、王女はクラス全員が意識を取り戻した所で王女から説明があった。



「勇者様よ!魔王を討伐してください!このグリューン王国はいま魔族に侵略されています!どうか勇者様よ この国を救ってください!」


(はい、テンプレだな。うん)


などと創太は思いながら話が進み始める。でもクラスメイトはそこまで冷静になれるはずもなく、皆が見んが困惑と不安を胸に抱えている。そしてまだ冷静の範囲にいた男子生徒一人が、王女に向かって質問を始める



「俺たちは向こうに……故郷に帰れるのか?」


とクラスの一人が訪ねる、それが普通な反応と言うものだろう。だがやはり帰って来るのは物語ではお決まり通りに進んだ。



「……いいえ、私達はどうすることもできません」


と 王女が申し訳なさそうに言い放つ、もちろん創太は”うん、やっぱりテンプレだな”と心の中で読み上げている。創太は現実でもいじめられていたのが功を奏したのか、これ以上の絶望はないと分かっていたのかこういうところで動じない、むしろ異世界という単語にワクワクしているように見えた。


だがもちろんクラスメイト達は違う。だからこそ王女に罵詈雑言を投げつける。



「はあ!!何言ってんだよ!呼んだんなら戻せるだろ!!

「そうだよ!戻せよ!!」

「もどしてよ!!」



などとパニックになったり泣き崩れる者もいたが、創太と同じ、いやソウタ以上の奴だっていた。


「もしかして、ハーレムとかいけるのか?」

「ぐふふ、ふふふっ」


などと笑っている奴らもいた。もちろん創太のいるクラスメイトにも一定数オタクと呼ばれる人間はいたのだ。


(こんなよくわからない状況で、チートなんて期待しているのか…?そもそもここが、どんな状況で、ここがどこかすら分かってないのに、か?…所詮。物語は物語か…)


と創太は思っている、もちろん創太もオタクの部類に入るが、それでも冷静に判断できる状況にあった。当然の判断、思考を創太はしたと言えるだろう。


そう、ここがどこで、今自分がどこにいて、どういう立場で、何をするべきなのか。最善の行動をとるための知識すら欠如しているこの状況で、夢を見る余裕なんて、本来はないはずなのだ。


「おい、王女!帰らせろよ!!」


などと言って殴りかかろうとしているクラスメイトもいた、これが普通の反応だ。と創太は首をうんうんと頷かせる。どこまで行っても余裕の表情である。まあ反応に疲れただけ、とも言える。のかもしれないが。


すると見計らったかのように王女がしくしくと泣き始めたが、これも創太は冷静な眼で王女を見つめる、クラスメイトからしたら状況に飲まれるかもしれないと思ったが、創太は”計算ではないか?”と


そう、創太の思考は最も現実的な思考。全てを鵜呑みにするのではなく。全てを疑う視線。思考。それが一番この世界で生き抜くための道なのだと、まるで創太自身が知っていたかのような自然な形で、”人を疑う”ことができた。


創太が少し怖ばった目で見つめたら王女がちょっと威圧気味の目線でこちらを見てきた、少し怪しまれたかもしれない、だが大丈夫だろう。ここで見放されたら終わりだ、なるべく目立ちたくないと創太は考えた。だがむこうもこちらを知らないのは同じだ。


「みんな、とりあえず落ち着いて!まずこの王女の話を聞こう!ほかにどうしようもできないし、僕たちだけではこの世界では生きられない」




と友樹が説明すると少し落ち着きを取り戻した多少はあのご都合主義者も考える頭があるようだ。王女がにやりと狐の様に笑っている、多分このクラスは友樹が一番発言力が高いという事を王女がつかんだのかもしれない。友樹が王女に誑かされたりしたらもうこのクラスは終わるだろうと創太は思った。そして現実としてその事実はもう確定だろう。


先生がおろおろしているのも見えているが、安定のスルーで行こう。そうしようと創太は心の中で決めた。






王女の説明は長くなったので要約するとこうなった。

創太達を呼んだのはこの世界の神・プリムで、魔族の進軍を神の世界から見たプリムはお嘆きになり、創太達を呼ぶために王女に勇者召喚の知恵をさずけた。



余談だが、王女は巫女の才があるらしく神であるプリムのお言葉を聞けるらしいと、王女が顔を彷彿とさせながら語っていた。気持ち悪いと創太が思っているそして自分たち勇者には特別な神からの力と言える”ギフト”という能力が備わっているらしいという説明が成されていた。


帰るためには魔王を倒したら神が帰らせてくれる…ということを説明された。







(すごく曖昧だ、これは自分でも帰る方法を探したほうが良さそうだな、そして王女の言い方にも疑問がもてる、大体あの手の小説の王女には2通りある、まあもちろんこれが小説の世界とは限らないし、小説と同じ尺度でも図ってはいけないが、今回は状況が状況だけに仕方ない。)


(とりあえず小説通りだとして、あの手の小説は良い王女か悪い王女の2パターンだ、良い王女は本当に協力的。あの王女とは……違うだろう。だが悪い方は、奴隷にして戦争に行かせるとかしか考えない王女だ。多分この異世界だ。奴隷などもあるのだろうが…)


ここでの知識なんて存在しない。思考するためには知識が必要だ。創太は不本意ながら現実に存在していたライトノベルなんかの知識を頼りに思考のパズルを組み立てていく。思考する。ここではそれを止めてはならない。これは創太も気づかない。けど創太が行えていた事実だ。


そして辺りが混乱している状況下の中で、創太のみが冷静に状況を判断し、それを行動に移そうと決意を固めていた…。







話が終わった所で王女から紹介があった。



「私はグリューン王国第一王女。マリス・グリューンです、よろしくお願いします、勇者様。———今の国王、ランス・グリューンはこの大陸の帝国領に国交を結びに行っているので今はいません」

「もう1人、我がグリューン王国の騎士団長を紹介します。ランス・メルデです」

「これから勇者の剣術や体術を教えることになったランス・メルデだ!宜しくな、勇者たち!」



と軽快に声をかけてきたが、さすがというべきか筋肉、体格とかすごいことになっていた。


そうして一悶着あって、勇者の適正ギフトがあるか調べた結果。クラスメイトのほとんどは勇者の適正がなくとも、何かしらのスキルがあった。ステータスにも恵まれていた。だが創太だけがなくステータスも20代の平均値だそうだ、それに比べ勇者たちクラスメイトは僕の2~2.5倍ほどのステータスと、ある程度のスキルを持っていた。

そしてやはり、<ギフト>とは強力なスキルの事だという事が分かった。


「お前、勇者のスキル持ってねえんだろ。マジうけるわー」

「そうだ。向こうでの行いが関係してんじゃねえか、お前」

「そうだっ!それだ!!」 


などとクラスメイトの糞どもが言ってくる。

創太はここでもいじめの種ができたと少し顔をしかめて、厄介だなと創太は思ってしまった。最も慣れたくはないが、耳が自動的にシャットアウトしていることを見ると慣れてしまったのかもしれないと、創太は少しばかり頭を抱えた。


ちなみに本人が「ステータス」と言えばステータスがみえて 成長やスキルの発現などが見えるそうだ。





———でも創太のスキル欄にはスキルがあった、ギフトではないが、ギフトよりも強力で絶対的な、そして創太のこれからを左右する超極悪チートスキルが…。







===================================

ステータス

仲宮 創太

筋力: 1000

体力: 1000

耐性: 1000

敏捷: 1000

魔力: 1000

魔耐: 1000

スキル

全言語理解


解析LV∞


偽装LV∞


RIA BOOST

全ての生物のステータス×自分のステータスをかけて自分に与える。

相手のステータスを徐々に奪い自分の物にすることができる。


WORLD EDIT

自分の世界に入り、そこからあらゆる知識を自分の物にし、あらゆる物を創ることができる。

(自分の世界から出るときは、もう一度「WORLD EDIT」と唱える)



称号

異世界者

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団長からはスキルレベルは、10が人が到達できる上限らしく、1は初心者、3で一端、7で達人、9は名人、人に教えても何ら遜色ないレベル。それから上は未知の領域だそうで、いまだに人で至った者はいないとされている。



創太のステータス欄には確かにスキルがあった しかも解析レベル∞スキルを見て創太は思った。



(これってチートじゃないのか?…)



と。そしてある程度の知識、神についてを長々と聞かされた挙句、眠気を感じた生徒があくびをしたので、王女たちは急いで勇者達の部屋へと案内してくれた。ようやく一人になれた。と創太はほっとした。







だが創太は知らない。そう、その問いにもし答えを投げかける者がいたとするならば、もしそこで「正解」と言える人間がいたとするならば、創太の人生は大きく変わっただろう。この何も知ることのできない世界で、ただ一つの正解を得ることすらもできなかった創太は、不運といっても差し支えないかもしれない。


それだけ。このスキルは「異常」なのだ。「あってはならなかった」スキルなのだ。












その日、創太の部屋で寝ていると深夜にドアからコンコンッ。とドアがノックされた。



(誰だよ!こんな夜中に、ぐっすり眠りたいのにっ!) 



と思っていたら、なんとビックリ、皆のマドンナ優衣様だった。



「創太君!今大丈夫?ごめんね夜中に」

「ううん。全然そんな事無いよ!」



とたどたどしく返すが、顔の表情を隠すのに精いっぱいだった。



「どうぞ」



とグリューン王国の国産茶(ウーロン茶風味)を入れながら、優衣と創太は月がきれいに見えるテーブルに座った。



「単刀直入に…創太君ってここでのステータスって弱いよね?」

「うっ。た、確かにその通りだよ。優衣さん」



「で、心配に創太君が心配になって団長とかに色々聞いてみたんだけど、明日から訓練があるのは知っているよね。まあそれはいいんだけど、問題はその後、団長から聞いた話だけど「迷宮」という所に行くらしいんだ、私ね、この手の小説読んだ事あるけど、すごく怖い所で、簡単に人が倒れたり、死んだりするとか、そういうのあるじゃないだから創太君にはそこにはいかないでほしいんだ!」



「えっ??」




「だってさあ———私は嫌だよ、創太君にはそんな所で死んでほしくないんだ、団長には私が頼むし、クラスメイトも何とかする! 一週間もあるから 何とかする!だからぁ だからさぁ」




見てみると優衣は涙をポロポロと流していた。多分ずっと我慢していたのだろう、それでも決意のある目が宿っていた。



(たかが僕のために—————)



創太は「ごめん」と小さな声で言いながら。少しでも優衣をなだめるため、あのスキルが書かれていたステータスプレートを見せる。




「だったらさ、君には僕の力の一端を見せてあげるよ」





そうやって見せたのは、自分のステータスプレート。そこにあった、「WORLD EDIT」の文字。




「自分にもスキルはある。ギフトはある。でもね?僕はこれを秘密にしておかなくちゃならない。理由は…今は言えないけど、だからね?これは2人だけの秘密だよ」



「———創太君にもスキルが…う、うん!分かった!2人だけの秘密、ね!」

「誰にも言っちゃいけないよ?団長にも」

「う、うんっ。分かった!」




(優衣、ありがとう。僕の為に。ありがとう)



そう創太の心からその言葉が漏れてしまった。その後優衣が少し落ち着いて 他愛のない話をした後自分の部屋へと帰って行った。



「さて、どうするかな…」



考える理由は1つ、例の2つのスキルの事だが、睡魔に負けてしまい、創太は眠りについた。


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