第2話

2120年。今とは違う100年先ほどの日本、ここは〇〇市の高校、そしてここが、有名になる『神隠し事件』が起こった場所になる高校。そこには休み時間なのにも関わらず今にも眠りそうな顔で窓から外の景色を見つめている一人の男子生徒がいた。名を中宮創太。


この中宮創太という男は、窓を見ながら憂鬱そうな顔をしているのは訳があった。一言で表すなら、『虐められている』のだ。


理由は2つ


1つ目に、創太の父親はとある一流ゲーム会社の社長で業績もなかなかのいい会社だった。創太もそこの会社の二代目として、社員にも伝わっていただが、会社が作り上げた体感型VRMMOがきっかけで会社が倒産し、それどころか会社に6億円の負債を背負ってしまった。


理由はVRMMOのゲームにバグができてしまいログアウト不可になり、一気にクソゲーだなんだと呼ばれ不評に終わった。このゲームの開発費6億が一気に水の泡と化し、社運を賭けたにも関わらず売れなくなってしまい、今に至るというわけだ。


そして創太の父は死亡、母も失踪している、残ったのは妹の彩だけだ。でも創太は親父を恨んではいないらしい、創太の生活費は父の貯金を切り崩し何とか食えている状況だ。


そして創太がいる学校にもその情報が伝わり、クラスのいわゆるガキ大将でありやんちゃ者三人衆。仲野翔太、樋野山 康、園部 裕次郎に目をつけられクラスメイトやその他も便乗し、一気に創太はいじめられっ子になってしまい、学校の中では堂々と大手を振って歩けなくなってしまった。


いわゆる転落というやつだ。家での評価がそのまま、創太の評価に代わってしまうという、漫画やドラマ、アニメのような創作物語でしか起こりえないはずの事態が、創太の目の前で起こったというのだ。




「お前みたいなクズいらねえんだよ!!」

「何でこんなところに歩いてんだよ、虫は地べたでも這いつくばっとけよ!!」




などと言われるのは日常茶飯事となってしまった、暴力の限りを尽くされるがこんなもの日常茶飯事である。



だが 創太にはまともに接してくれる友達もいた。



「おう、創太!大丈夫か、お前」

「まったくあいつらは。こんな弱いやついじめて何が楽しいんだか」

「弱いは余計だぞー。北川」

「あっはははははは、でもその通りだぜ、俺たちだけだぜ?こんな奴に構ってるの」

「まあいいじゃないか、こいつと居ると楽しい。それだけで」


創太の友達。中川 清十郎。北川 浩介はよほどの人格者なのか友達のまま事件の前の様に接してくれている。


昔から友達だった二人は、学校での創太の受けている虐めを知っている。止めようともしてくれていた。そして何より創太を友達と慕う数少ない人間となってしまった。つくづく学校とは魔境だと創太は知ったのだ。たかが親父の事業の失敗で、ここまで自分の評価がいとも簡単に下がった。普段から友達とはいかないまでもしゃべってくれる奴はいた。話かければ返事を返してくれた。だがいざ虐められているとなると返事はない。今もこの鬱蒼とした学校で普段通り話してくれる友達は、もうこの二人だけとなってしまった。


もちろん創太の事を聞いて友達たちはもちろん止めようとした。だが創太のお願いでやめてほしいと頼んだ。


「今止めたところでどうせぶり返すだろう、なら、まだ我慢するさ。どうせ何を言っても止まらないと思う、だから言わなくてもいい。大丈夫だ」


と言った説得の元、その2人も何とか黙認している状況だ。創太はもう巻き込みたくなかったのだ。2人を。これ以上自分のせいで友達の評価まで下がるのは嫌だったのだ。創太もまた友達のことを思いやれる人間だったというわけだ。


そしてそんな創太といつもの2人で尽きない話題の元談笑を交わしていると、またこの学園での面倒事が歩いてやってきた。




「創太君!ここ教えてほしいんだけど」


と駆け寄ってくるのこの4人は、スクール内でも特に皆から慕われ男子は当然女子からも学校のヒロインのように思われ扱われているスクールカースト上位の一人である雪風 優衣。




「ちょっと待ってよ!」


など言いながら優衣のもとに駆け寄るのはこれまたスクールカースト上位に君臨する2人目、速水 凜。




「おいおい。また創太のところかよ…こんどは何だ?一体」


と話しているのは3人目、斉藤 竜太郎。




「ちっ…」


思わず舌打ち一回を挟んでしまう。この4人組に会うのは厄介だ、と今の創太は思っているで手早く終わらせようとする。が



「また、いじわるされたの?」



と優衣が僕の気も知らないで聞いてくるのに対して、またお門違いな事を言い放ってくるもう一つの人影。


「だめだぞ。中宮もちゃんと立ち向かわないと」


などと僕の神経を逆なでしてくる事を言ってくるのは坂上 友樹。正義感の強いお人だ。


それでもこいつらだけはいつものように接してくる。坂上友樹のこのお門違いも甚だしい言葉から放たれる鬱陶しい感じも相変わらずだ。


そして創太は、なぜ自分にこいつらが絡んでくるのか、その理由に大体の当たりをつけていた。




まず雪風 優衣はクラスのマドンナで同学年はともかく、3年の先輩からも好意を寄せられている。やたら創太に絡む筆頭。というか四人組の中でもこの優衣しか創太に自ら絡もうとは思ってないだろうと創太は推測している。理由は特に思いついてはいないが、大方残念な立場にいる時分の事を案じてくれているのだろう。と適当な考えしか持てていないのが現状だ。

だが残念ながらこれが創太が虐められる2つ目の理由だと創太は知っている。クラスのマドンナがただでさえこんな現在評価最低の創太に構ってくれているのだ、みんな創太を見る時の嫉妬や憤怒は、もはや人を殺せるぐらいだ。関係も興味もない創太にはただ迷惑な話である。




2人目は 速水 凜は優衣と並ぶ女子人気度ランキングで優衣と同じく上位に君臨する、泣く子も黙るサムライガールで速水一家の剣術道場もやっている、多分優衣がそうしているから同じ対応しているのかなあ…と思っている。



3人目 斉藤 竜太郎。4人目の高校からの友達らしく、この男を一言で表すのならば筋骨隆々が一番ふさわしいと思えるくらいガチガチだ。この男はそんな創太の事件なんて気にしていないという感じだ。と創太は予測は立てている。



4人目 坂上 祐樹。創太はこいつが一番苦手なのだ。祖父は刑事、父はとある有名な弁護士だから正義感が強く、疑うということを知らないのだと創太は考えている。だから事件や問題が起こってもどちらにも理由があり、単なるアクシデント、悪意などないと思い込むご都合主義。これに速水などは苦労していることだろう、これはあのご都合解釈の目にはどうやって映っているか分からないので予測が立たない、どう映っているのか創太も知りたい。

そして創太の予測。実は大体あっているという事実を知ることは、多分永劫にないだろう。



というのが創太の学校生活。正直言ってただ苦しいだけだった。






———だが知らなかった。この退屈で鬱蒼とした世界が、劇的に”変わってしまう”瞬間が訪れることを。


————こんな苦しいだけの生活が劇的に変わってしまったのは1週間後の2時間目のチャイムが鳴ったころに起こってしまった。それは”現実”から”非現実”へと向かう電車の片道切符のプレゼント。







「勇者様よ!!この国をお救いください!!!」







そんなアナウンスと同時に、クラスの教室の床が発光し、同時にファンタジーの代名詞ともいえる魔法、それを発動する魔法陣らしきものだが浮かび上がる。


「な————」

「きゃ—————」

「なんだ—————」

「!!!—————」


そしてクラスメイトの皆々様は、悲鳴を出す暇もなく、強制的に片道電車へと乗り込んだ。≪異世界≫という、現実ではありえないファンタジー世界へと向かう地獄とも天国ともいえる、未知の世界へと強制的に拉致されるその電車へと。


そしてクラスメイトは皆、異世界へと転移されられた。

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