ラウンド ・アバウト・ミッドナイト
フランク大宰
第1話
場末の酒場で、幼い夢語る友人との楽しい時間が過ぎ、我々は”真実の世界には美しい女も夢もない”という侏儒(小人の意. 弱い人間として使用)の歴史学からすれば古典的な答えを出した。
そして今、我は”ボロアパート”という名の白亜の豪邸に帰る道中にいる。
最寄り駅に下車し、そこから離れた我が城に向かう。
歩道は暗く明かりがない。降り注ぐ電柱の光は余計に暗闇を際立たせるだけだ。寒さが黒いコート越しに体を震わせる。
しかし、暗闇の中を一人、”目線を下にしながら、コートの襟を立てて歩く”この行動には孤独の美しさがある。
暗闇の中で心地よい孤独に浸っていると、よく昔の事を思い出す。
今は”紫色の好きな女”の事だ....
いつの日だったか、彼女に紫色のペンケースをプレゼントした。これは偶然だった。赤いペンケースとどちらにしようか悩んだ末に、何となく異国人の彼女の好みそうは和柄で日本的な紫色のペンケースを僕は選んだ。そして彼女にプレゼントした。
彼女は「この色は私の好きな色なの 、なんというか故郷を感じさせるから」
不思議に感じた、紫色が彼女に故郷を思い出させることを。
彼女が僕に気を使って、そう言ったのかもしれない。しかし、僕は今でも信じている、少しは真実が含まれていたと。
嗚呼、なんて美しいセピア色に変色した思い出。しかしながらあまりに時が流れてしまった、彼女の感触も今では思い出せない、10000年は人間には長すぎる時間なのだ。それに暗闇では紫色は輝かないじゃないか。
今の僕に見えるのは白亜の豪邸までの黒く光る遥かな銀色の道だけ...
きっと20000000年後にはたどり着くだろう。
ラウンド ・アバウト・ミッドナイト フランク大宰 @frankdazai1995
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