第2話 二人で平常心を保ちましょう。KAC3

班決めが始まって二十分。

僕の初恋かもしれない彼女は今だ他の男子と話している。

僕は妬いているのか、なんだかその光景を見ていると心が痛む。

彼女をずっと眺めていたいのは山々だが、仕方なく外を眺める。

あぁ、向井さんはあいつらと話してたほうがおもしろいのかな……。

そう考えると仲のいい奴らが憎くてたまらない。



班決めが始まって二十分。

私の最大の敵は今だ外を向いたままだ。

今直ぐにでもあいつに話しかけたいのにこの男共や、周りの女子の目があるからうかつに話しかけられない。

今直ぐにでもこの男達との会話を留美や真由佳に振りたいのに……!

そう考えると男二人が鬱陶しく、女子たちが使えないと思ってしまった。


『あぁ、クッソ、何とかならねぇか……』


見事二人の意見は一致した。

それからこの最初のグループ活動では一切の関りは無かった。


そして遠足の前、通常授業の日の事。

僕の仲のいい友達の一人が向井さんと席が隣だ。

これは使える! うまいこと話を動かして彼女との会話に漕ぎつけられれば!

僕は直ぐに席を立ちあがり、友達の近くに話に行った。


今日は通常授業のなんでもない日。

まさかこんな日に小さなチャンスが来るとは!!

なぜだか分からないけど太月が隣の席の男子と話してる!

これはチャンスだ! 何とかしてこの会話に入りたい!

私は体を気持ち彼の方に傾け携帯をいじり、暇なふりをする。


『……で、この後どうしよう……』


今のところ勢いのみで行動している二人。

もちろんノープラン。

「なぁ、この問題むずいんだけど、お前解ける?」

少し真面目ぶって僕は友達に話しかけた。

「えぇ……、俺はバカだからわからねぇや……あ、向井さんならわかるんじゃね?」

チャンス到来。

私はすかさず、

「ん? どうしたの?」

と乗っていく。

来た!

僕は心の中で小さな覚悟を決める。

「いやね、ここの問題が分からなくて」

僕は彼女に教科書を見せる。

僕は実行に移すと自信のなくなるタイプ。

少し遠めからページを見せていた。

「どれどれ?」

私は彼が遠めから教科書を見せてきた事をいいことにわざと腕を掴み自分に引き寄せる。

これが私必殺のボディータッチよ! これに勝てない男なんていないわ!

と意気込みながら顔をあげる。

私が座って彼を引っ張ったからだろうか。

太月の顔は私のすぐそばに。

「あ! ごごご、ごめん!」

私はてんぱってしまい彼の腕を離した。

「いいよ」

一切変わらない彼の表情。

うそでしょ……!

私は驚愕した。

いったい何があったのかは分からないけど急に向井さんに腕を掴まれ引っ張られた。

遠かったのはわかるけどなんで直接腕!?

ほのかに僕の腕に伝わる彼女の手。

温かく、小さく、柔らかい。

スキル発動『ポーカーフェイス』

クソ! また出ちまってるよ! もう少し素直な反応したほうが好感度上がるんじゃないのか!?

ってあれ? なんか向井さんの顔真っ赤だよ!? おおお、怒っちゃったかな!?

どどどどうしよう!嫌われた……かな……。ん? てかいったいどこに嫌われる要素あったんだ? なんで怒ってんだ?

ヤバいよ! 確実に変な人だよ! 落とそうとした男の顔にときめくなんて! 外から見たら急に腕引っ張って顔真っ赤にしてる人なのよ!

しっかりして私!へへへ、平常心を保つのよ!

「なんでもないわ……」

「ならよかった」

ならよかったですって!?

まさかこいつ心配してくれるのか!? まさに理想の彼氏じゃん!

……ほんとに大丈夫かな……? 向井さん少し顔色悪いかな……。 今何か聞くのは諦めよう。


結局なんだか晴れ切らない二人であった。


そして何とも言えない心情の中迎えた例の行事。


果たしてうまくいくのだろうか。


『ここで決める!』


さて、どうなることやら……。

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絶対に落としたい。 @Wisyujinkousaikyou

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