第452話 妹弟と作戦


「それでは、今から作戦会議を始めたいと思います!」


 兄が喫茶店でくつろいでる最中、下の妹弟きょうだいたちは、神木家に集まっていた。


 一緒に夏休みの宿題をしようとエレナを招き、ちょうど宿題がひと段落した時、華がタブレット端末を持ち出して、パン!と手を叩いた。


 家族共有で使っているタブレットには、榊神社の見取り図が映し出されていた。


 そう、今度、夏祭りが行われる場所だ。

 

 そして、今から、何を始めるかというと、兄とあかりさんの仲を進展させるための夏祭り大作戦!!


「やっぱり、夏といえば夏祭りだよね! というわけで、飛鳥兄ぃとあかりさんの仲を進展させるための計画を練ります!」


 華が、はりきって指揮をとる。

 すると、向かいに座っていたエレナが、タブレットを覗きこみながら


「私、夏祭り初めて」


「え、そうなの! じゃぁ、いっぱい楽しまなきゃ! 出店もたくさんでてるし、花火もあがるよ!」


「ほんと! わー楽しみ! でも、お母さん、許してくれるかな?」


「大丈夫だよ、今のミサさんなら。それに、私たちも一緒だし。なんなら、ミサさんも誘おうよ。うちのお父さんも帰ってくるし!」


 ちょうど、夏祭りの頃、神木家の父・神木 侑斗も帰省することになっていた。


 そして、神木家、紺野家が総出で、あかりを誘い、夏祭りで、兄との仲を進展させる!


「でも、どうやって進展させるんだよ」


 すると、蓮が口を挟み


「それを、今から考えるんでしょ! とにかく、なんとしても二人っきりにするの! この前のデートもキャンセルしちゃったし、あの二人、それから全く会ってないみたいだし。このままじゃ、何も進まないまま、お兄ちゃんが、大学卒業しちゃうよ!」


 兄は、来年、社会人になる。


 そして、大学を卒業すれば、仕事を始めてしまうため、あかりと会う機会だって少なくなる。


 だからこそ、兄の恋を成就させるなら、大学を卒業するまでが勝負なのだ!


 しかし、あのモテまくってきたくせに、恋愛初心者の兄は、のんびり構えているだけ!


「全く、飛鳥兄ぃも、もっと攻めればいいのに!」


「攻め方しらないんじゃない? つーか、就職試験とか、色々控えてるんだし、恋に全集中ってわけにはいかないだろ」


「そうだけどー。でも、もう三ヶ月だよ! デートをドタキャンしたお詫びに、食事くらい誘えそうなものに、お兄ちゃん、待ってるだけで何もしないんだもん!」


 別に、待ってるだけではない。


 一応、定期的にLIMEは送ってるし、それなりに、アクションは起こしている。


 というか、双子が見てないところで、それなりに攻めている。


 しかし、デートをドタキャンした後から、飛鳥は、あかりに既読無視されていて、そのことを、飛鳥は双子には話していなかった。


 デートをドタキャンしてから無視されるようになったなんて言ったら、その原因をつくった蓮が気に病んでしまうから。


 つまりこれは、お兄ちゃんからの優しさである。


「でもさ、華。二人きりっていっても、どうするんだよ。だいたい、榊神社の夏祭りには、大学の人たちも来るだろうし、二人きりにして大丈夫?」


 昨年、兄妹弟3人で、夏祭りに行った時、兄が女子大生に取り囲まれていたことを思い出し、蓮が難色を示す。

 

 あの無駄に目立ちまくる人気者の兄が、後輩と二人きりで、夏祭りに来ていた。そんな噂が大学中に広まったら、あかりさんが大変なことになってしまう!


「うーん、そこなんだよね。あかりさんに迷惑はかけたくないし」


 すると華は、あごに手を当て悩み出す。


 家族ぐるみで夏祭りに行くとなれば、あかりさんだって、参加しやすい。特に、エレナから誘われれば、断ることは、ほぼないだろう。


 しかし、問題はその後だ!


 違和感なく、二人きりでも大丈夫な状況を作り出さないといけない!


「あ! 私が迷子になるのは?」


 すると、エレナが閃いた。


「え、迷子?」


「うん。私が、途中ではぐれちゃえば、二人とも私のこと探しにくるでしょ!」


「なるほど! 迷子を探すという名目なら、二人っきりにしても違和感がない!!」


「しかも、同じ目標を達成させることで、友情が、いや愛情が芽生える!」


「それだ! まさにそれだ!!」


 双子がエレナの意見で盛り上がる。

 

「じゃぁ、どういう流れでエレナちゃんが迷子なるか、事前にシミュレーションしとこう!」


「シミュレーション?」


「だって、あんな人混みで、こんなに可愛いエレナちゃんを、本当に迷子にするわけにはいかないでしょ! なにより、そんなことになったら、またミサさんが精神病んじゃうよ!」


「怖いこと言うなよ」


「だから、エレナちゃんがお兄ちゃんたちから、離れた後、私たちが保護する! そして、見つからないところに隠れて、時間稼ぎ!」


「なるほど」


「よし! そうと決まれば、神社の見取り図みながら、決めよう! 去年の夏祭りと、だいたい配置は一緒だと思うんだよね」


「だろうな」


 夏祭りの出店の配置など、記憶を掘り起こしながら、双子が計画を練る。


 なにより、昨年と変更があったとしても、榊神社が実家である航太に確認をとれば、なんとかなるだろう。


「よし! 計画をまとめたら、二人のスマホに送っとくから!」


「タブレットのデータは、消しとけよ。兄貴も使ってるんだから」


「わかってるよ!」


 その後、3人はわいわいと話をすすめ、夏祭り大作戦はの計画は順調に進んだのだった。




*あとがき*

https://kakuyomu.jp/works/16816927861981951061/episodes/16817330655860498909

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