番外編 ⑬ お兄ちゃんと家族旅行
お兄ちゃんと家族旅行 ①
「飛鳥ー、旅行に行こう~!」
それは、今から3年前。
飛鳥が大学1年生。双子が中学2年生の初夏のこと。
突然、父が電話をかけて来たかと思えば、いきなり、そんなことを言ってきた。
「旅行?」
「そうそう! 飛鳥も、もう大学生だし、この先パパと一緒に旅行なんて行ってくれないかもしれないし、華も温泉に行きたいって言ってたしさー。だから、夏に俺が帰ってきたら、みんなで旅行に行こう!」
父が、ロサンゼルスに海外赴任をしてから、もうすぐ1年。兄妹弟3人だけの生活も、大分慣れてきた。
だが、正月や春休みなどの長期休みには、父の侑斗は、必ずと言っていいほど、時間をつくり帰省してくれる。だからか、次の夏休みにも帰ってくるそうで、その際に、家族で旅行に行こうと、父は楽しそうに話す。
「旅行か……まぁ、いいんじゃない? 蓮華も喜ぶだろうし」
そして、せっかく父が、連れて行ってくれるというのだ。決して悪い話ではなく。飛鳥が、にこやかに返事を返せば、この頃、淡々と旅行先を決め、神木家は、家族で温泉旅行に出かけることになった。
【番外編】お兄ちゃんと家族旅行
◇◇◇
「わ~、素敵~!」
それから、夏休みに入り、陽射しが眩しくきらめく頃、神木家は、とある温泉地に訪れていた。
美しい
純和風の優美な外観は、大正時代を思わせるような風情ある趣で、まさに、タイムスリップでもしてきたようだった。
だが、そんな大正ロマンを思わせる世界に降りたったにも関わらず、我らがお兄様は、今日も一際輝いていた。
なにより、金髪碧眼で、明らかに異国の姿をしているにも関わらず、不思議と様になっているのだから驚きだ。
「なんか、兄貴って、どこにいても馴染むよね?」
「やっぱ、顔がいいって最強なのかな?」
「そりゃぁ、うちの飛鳥くんは美人すぎるからなぁ。どんなに美しい景色も、立派な建造物も、飛鳥の前では霞んじゃうよねー」
「馬鹿なこと言ってないで、行くよ」
双子と侑斗が、しみじみと絶賛すれば飛鳥は、呆れつつ旅館の門をぐくった。
「いらっしゃいませー」
すると、中に入った瞬間、旅館の従業員たちが、にこやかに出迎えてくれた。
「ようこそ、お越しくださいまッ」
だが、礼儀正しくお辞儀をしたあと、従業員たちは、飛鳥の顔を見るなり、顔を赤らめた。
(な、な、なにこの子! すごく綺麗!)
(芸能人!? いや、もしかして天使なの!?)
そしてそれは、従業員だけでなく、ロビーにいた客たちをも、ザワつかせた。
「こんにちは。予約してた神木です」
だが、そんな中、飛鳥はニッコリ笑って挨拶をし、平然と受付を始める。
飛鳥をみて、ざわつかれるのは、いつものこと。
だからか、飛鳥はもちろん、双子も侑斗も、特に気にすることはなく、その後、スムーズに受付を終えると、店の人達に案内され、神木家は、ロビーを後にした。
だが、その後、四人が去ったロビーでは
「なぁ! 今の子、めちゃくちゃ美人じゃなかった!?」
「うん! 俺、あんなに綺麗な子、見た事ねーよ」
「俺もだよ!」
「あとで、ナンパしてみよーぜ!」
「えー、でも、親もいただろ!」
「大丈夫だって! それに、今を逃したら、あんな美女と出会える機会なんて、この先、一生ねーぞ!」
「た、確かに……!」
そして、その噂は、あれよあれよと広まり、宿中に駆け巡った。
そう、今、この旅館には、金髪碧眼で、とっても美人な女の子が来ていると──…
*あとがき*
https://kakuyomu.jp/works/16816927861981951061/episodes/16817330655465590392
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