第378話 恋愛とメッセージ
「いっそ、つきあっちゃえば?」
「!?」
その言葉に、華はいっそう頬を赤くし困惑する。
付き合っちゃえば?
付き合っちゃえばって、なに?
まさか、榊くんと!?
「ムリムリムリ!! 絶対ムリ!!」
「いや、そこまで拒否らなくても」
だが、これでもかと首をブンブンと振る華をみて、葉月は苦笑いを浮かべた。
さすがに、榊が可哀想だ。好きな女の子から、ここまで『ムリ』を連呼されるのは
「もう、なにがムリなのよ! つきあってから、始まる恋もあるかもしれないし、なんなら、私が二人の仲を取り持って」
「ダメ! 榊くん、今、私への気持ち忘れようのしてるの! だから、そんなことしちゃダメ!」
「……っ」
周りに聞かれないように、コソコソと話しながらも、華は必死に訴えた。
あれから、いつも通り友達として振舞って、今やっと、これまで通りの関係に戻りつつある。
それなのに、そんなことをしたら、また、榊くんを傷つけてしまうかもしれない。
「お願い。私もう、榊くんのこと傷つけたくないの……!」
葉月の手を掴み、華が必死に頼み込む。だが、葉月は、そんな華の言葉に小さく眉をひそめた。
華は言う。これ以上、傷つけたくないからと。だから華は、榊の望むとおり友達として振舞ってるのだろう。
でも……
「華、榊が本当に望んでるのは、それじゃないよ」
「え?」
一瞬、時が止まった。
葉月の言葉が上手く飲み込めず、戸惑いと同時に葉月を見つめれば、今度は、葉月が華の手を握り、まっすぐに見つめ返してきた。
「榊が華に、友達でいることを望んだんだろうけど、それは、アイツの本心じゃないよ」
「え? 本心じゃ……ない?」
「うん。アイツが一番望んでるのは、華の友達に戻ることじゃなくて──華に、自分を好きになってもらうこと!」
「……!」
キュッと掴まれた手に力がこもった。葉月の言葉が、直接胸に響いて、微かに鼓動が早まる。
「す、好きに……?」
「そう。華をこれ以上、困らせないために、あいつは忘れるなんて言ったんだろうけど、本心は違うよ。自分の好きな人には、やっぱり自分を好きになって欲しいって思うもんだし」
「………」
「なにより、アイツ中二の頃から、ずっと華が好きなんだよ、簡単にわすれられるわけないじゃん。華はホント、
「え? そうかな……っ」
「そうだよ。じゃぁ、改めて聞くけど、華はどう思ったの?」
「え?」
それは、さっきと同じ質問だった。でも
「華は嫌だった? 榊に好きだって言われた時」
「……え?」
葉月の言葉に、華は改めて、自分の心情を振り返った。
蓮にけしかけられて、正直、戸惑った。
榊くんの本気の思いを聞いて、凄く恥ずかしくかった。
でも……
「嫌、では……なかった……っ」
小さく、頬を染めながら呟けば、その言葉に、葉月は安心したように微笑んだ。
「そっか。じゃぁ、その気持ちだけは、伝えてあげなよ!」
「え?」
「『好きって言われて嫌じゃなかった』って、それだけは、榊に伝えること! アイツ今頃、華に嫌われたと思って、ビクビクしてそうだし」
「そ、そんなことはないと」
「えー、チャラそうに見えて、案外、繊細なやつかもよ〜。あと、スマホに何かメッセージが届いてるみたいだけど、大丈夫?」
「え? あ……!」
すると、葉月の言葉に、華はふと机の上に置いていたスマホを見つめた。すると、確かにメッセージが届いているみたいだった。
しかも、兄から──
「あ、ほんとだ。しかも、飛鳥兄ぃからって珍しい」
「また、あれじゃない? なんか買ってこい的なやつ」
「あー、そうかも───あれ??」
だが、その後メッセージを見れば、毎度恒例のお使いではなく、兄のメッセージには
《明日、なにか予定ある?》
と、一言。
(ん? 明日って、土曜日? なんだろ?)
意味深な兄のメッセージに、華はすぐさま返信する。
《何もないよ!なんで?》
《暇なら、買い物に付き合って?》
《OK!(猫のスタンプ) いいよ!なに買いに行くの?》
《服》
《服! じゃぁ、私のも買って〜!》
《いいよ。買ってやるから、ちょっと協力して》
ん? 協力?──と、また兄には珍しい返事が返ってきて、華は再び首を傾げた。だが、その後に続いた言葉に、華は
「ぎゃああああぁぁぁぁ!!!」
「え!? どうしたの華!?」
いきなり悲鳴を上げた華に、その瞬間、葉月だけじゃなく、教室中が驚いた。
「どうしたの、神木さん!」
「何かあったの!?」
「あ! うんん。なんでもない! ごめんね、いきなり叫んで!」
突然、喚いたことを詫び、華は申し訳なさそうに謝るが、その後、葉月にグッと近づいた華は、葉月の耳元でコソコソと話し始める。
「ねぇ、葉月、明日空いてる? できたら、買い物付き合って、私だけじゃ荷が重すぎる!!!」
「え? 荷が重いって、どういう」
「あ、えーと……今から私が話すことは、超極秘機密だから! 知られたら学校中が大騒動になるから! 絶対、誰にも言わないって誓える!? 親にも兄妹にも絶対だよ!?」
「いや、待って。何が始まろうとしてるの?」
まるで、世界レベルの秘密を知ってしまったかのように危機迫る華に、葉月は「誓う」といいつつも、ゴクリと息を飲んだ。
飛鳥さんのメッセージには、何が書かれていたのか?緊張の面持ちで、華の言葉を待つ。
すると華は、葉月の耳元に、これでもかと唇を近づけたあと
「あのね。明日一緒に、お兄ちゃんの女装服を、選びに行って欲しいの」
「へ??」
お兄ちゃんの──女装服??
✣✣✣
あとがきと次回予告↓
https://www.fanbox.cc/@yukizakuraxxx/
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