第2部完結記念・特別企画 (番外編⑦)

★ 眠れる森の飛鳥ちゃん ① (2021.8.5追加)

 *注意*


 このお話は、第二部完結時に、読者アンケートで決まった番外編です。comicoノベル終了につき、こちらもお引越。


 内容は、童話『眠れる森の美女』を神木さんのキャラで好き勝手書いたパロディです。(全4話)


 まず、キャラが崩壊しています。

 原作通り話が進みません。

 とにかく、なんでもありです。


 そんな、自由すぎる番外編となっておりますので大丈夫な方のみお進み下さい。



 ↓↓↓






◇◇◇◇◇◇


「え? 一枚、足りない?」


 ここは、とある国のお城の中──


 召使いの言葉を聞いて、この国の王様である"侑斗"が首を傾げました。


 先日、生まれた可愛い我が子。


 その愛娘の誕生パーティーを開くため、この城では、その準備が着々とすすめられていたのですが…


「すみません! 実は、先日一枚、俺が割ってしまって、魔法使いに出す皿が、12枚になってしまいました!」


 召使いの狭山さやまが申し訳なさそうに頭を垂れると、侑斗と、その妻である"ゆり"が顔を見合わせた。


 祝宴に招くはずのゲストの殆どは、親類や友人ばかり。


 だが、この国には古くから、使があった。


 そのため、先日生まれた姫のパーティーにも、この国にいる13人の魔法使いを、全て呼ぶことになっていたのだが……


「なんだ、そんなこと~。割れちゃったものは仕方ないし」


「そうだな。一枚足りないなら12人だけ呼べばいいし、気にしなくていいよ」


「国王さま、王妃さま! ありがとうございます……っ」


 寛大な二人がにっこりと微笑むと、召使いの胸は、じわりと熱くなりました。



 これは、そんな召使いのせいで、魔女に呪いをかけられてしまった美しいお姫様と


 そのお姫様を救おうと奮闘する若者たちの──波乱に満ちた物語です。







 『眠れるの森の飛鳥ちゃん!』








 ◇◇◇



「国王様、王妃様、この度は飛鳥様のご誕生、おめでとうございます!」


 後日、お城では盛大なパーティが開かれました。


 寒い冬の日。ですが、城の中はとても温かく、人々の笑顔が溢れています。


 何より、この国の第一子として生まれたお姫様──飛鳥アスカは、親譲りのをした、とてもとても可愛らしい女の子でした。


「では、私からは、美しく透き通るような声を──」


「私からは、優しく清らかな心を──」


 そして、パーティーも佳境をむかえ、招かれた12人の魔法使い達が、一人一人お姫様に『幸運』という名のプレゼントを授けます。


「俺からは、一生転ばないバランス感覚を!」


 10番目の魔法使い、大河が言いました。


「私からは、変態に出会わない回避能力を!」


 11番目の魔女 葉月ちゃんが言いました。


 そして──


「俺からは──」


 最後12番目の魔法使い榊くんの番になった時


 ──バタン!!


 と、突如、城の入口が激しい音を立てて開きました。外の冷たい空気が会場内を駆け巡ると、そこに現れたのは


「まぁ……みんな楽しそうね」


 なんと13番目の魔女──ミサでした。


 眩い金色の髪に青い瞳。


 とてもセクシーな黒い服を身につけたその魔女は、深い森の奥に引きこもっている魔女でした。


 てっきり森から出てくることはないと思っていたのに、どうやらミサは、一人だけ招かれなかった事を酷く怒っているようでした。


「あぁ、その子ね。先日、生まれたお姫様は……」


 そして、ゆりかごの中にいる飛鳥に近づいたミサは、愛おしそうに飛鳥の頬をなでました。


 まるで母親のように優しい眼差しで微笑むミサは、魔女ではなく、まるで女神様のようにも見えます。


 ですが、ミサはゆりかごの中にいる飛鳥を見つめると…


「なんて可愛い子なのかしら…でも、この子にこんなは似合わないわ」


 両親によく似た"茶色い髪"を見つめながら、ミサは深くため息をつきます。


 そして──


「そうだわ。私からもプレゼントをあげる」


 不敵に微笑んだミサは、なんと、その後とんでもない呪いを授けたのです。


「濃茶の髪は眩い"金色"に! そして瞳の色は鮮やかな"ブルー"に! この子は!」


 そして、ミサがそう唱えた瞬間、飛鳥の髪は、瞬く間に色を変えはじめました。


 茶色がかった黒髪は、ミサとおなじ赤みの入った金髪に、紫混じりの瞳は、海のように深いブルーに。


 その光景に、会場内が騒然とします。

 ですが、魔女の呪いはまだおわりません。


「そして、いずれ成長し20歳になった時、糸車の針に刺されて、長い眠りにつくのよ!」


 おっと、ちょっと原作と違いました。


 本来なら、ここで魔女は「糸車の針に刺されて!」と高らかに声を上げるのですが…


「せいぜい自分の娘が、元カノに似ていく姿を見て苦しむのね!」


 と、だったことを暴露し、地味に嫌な呪いをさずけたミサは、高らかに笑って去っていきました。


(うわ……修羅場だ)


(王様が魔女と付き合ってたなんて…)


(てか、姫様死なないんだ。12番目、どうするんだろ、これ)


 いきなりの爆弾発言に、会場内の召使いや魔法使いたちが騒然とします。


 ですが、肝心の王様は顔を真っ青にしたあと


「そんな、飛鳥が金髪碧眼になるなんて!?」


 話題をかえるつもりなのか、元カノのことには触れず嘆き悲しみます。


 すると、その隣にいた、ゆりは…


「大丈夫だよ、侑斗さん! ほら見て。飛鳥、超可愛い~」


「いや、可愛いけどね!? むしろ黒髪の時より違和感ないけどね! でも、ここはショック受ける場面じゃないの!?」


 元カノのことにも触れず、超絶ボジティブな王妃様は金髪の飛鳥を見てにっこりと微笑みました。


「いいのか! 俺たちの飛鳥が」


「大丈夫。髪や目の色がかわっても、飛鳥は飛鳥なんだから。それに、この色が嫌なら、将来染めるなり、カラコンいれるなりすればいいんだし」


「そうですよ! 王様! ここはポジティブに考えましょう! あの元カノは、国一番の美女と有名なんです! それに、さっき姫様には優しくて穏やかな心をとまじないをかけました!」


「つまり、元カノみたいに性悪な女にはならず、姫様は心優しい絶世の美女に成長するだけです!」


「よかったですね! 王様! 元カノが美人で!」


「君たち、元カノ元カノうるさいな!?」


 チクチクと王様を責めつつも現状を前向きに捉える一同。だけど、どうしても前向きにはなれないことがありました。


「でも、問題は…20歳なったら、眠りについてしまうことだよね」


 ゆりが飛鳥を抱きしめ、不安げな表情をしました。絶世の美女に成長しても、その後姫は、糸車の針に刺されて眠ってしまうのです。


「大丈夫ですよ。俺のまじないが、まだ残っていますから」


 そんな中、まだ幸福をさずけていない、12番目の魔法使い榊くんが声を上げました。


「姫様は糸車の針に刺されて眠ってしまうでしょう。ですが、その後、姫様を救う5人の若者が現れて、その中で最も姫を愛する者のキスにより、姫様は眠りから覚めるでしょう」


 キラキラとした光が飛鳥を包むと、王様も王妃様も安心したように微笑みました。




 ◇


 ◇


 ◇



 そして、そんな出来事から、早20年──


 この国の第一王女である飛鳥は、金色の髪と青い瞳をもつ、眩いばかりの美少女に成長していました。


「姫様、20歳の誕生日、おめでとうございます!」


「うん、ありがとう~」


 美しく愛らしく、それでいて優しい姫様は、まさにみんなの人気者となりました。


 にっこりと微笑む姿は、まさに天使のようで、近隣からは姫を娶ろうと、数多くの王子達が詰めかけます。


 ですが、肝心の姫は、結婚には全く興味がなく…


「お姉ちゃーん!」

「誕生日おめでとう!」

「あ! 華、蓮」


 可愛い可愛い下の妹弟を、ひどく溺愛していました。


 ゆりが産んだ双子の妹弟、華と蓮は、飛鳥の5つ下の妹弟でした。たまに喧嘩もしますが、三人はいつも仲良し!


 華は大好きな姉に抱きつくと、満面の笑顔でこう言います。


「あのね!お母さんが、手作りのケーキ作ってくれるって!」


「母さんが?」


「うん。なんのケーキかは、出来てからのお楽しみだって」


「へー、楽しみだなー」


 王妃であるゆりが自らケーキを作ると聞いて、飛鳥は顔をほころばせました。


 するとそこに、今度は父親の侑斗が顔を出します。


「飛鳥!今日は絶対に、糸車に触っちゃダメだからな!」


「あぁ、例の魔女の呪いのこと?」


「うそ。お姉ちゃんて、本当に呪われてるの?」


「でも、もうこの国に、糸車はないんでしょ?」


 侑斗の話に3人は、首を傾げました。


 凶悪な魔女の呪いの話は、国中の人間が知っていました。


 糸車は、糸を紡ぐために生活にかかせないもの。


 ですが、姫の危機を聞いた国の人々(飛鳥のファン)は、姫様を守ろうと国中の糸車を燃やし、糸を作るために別の道具を開発しました。


 ですが、万が一ということもあります。侑斗はその旨を伝えると


「とにかく、今日一日は気をつけなさい!」


「分かったよ。仮に糸車を見つけても、触ったりしないよ」


 そう言って飛鳥が微笑むと、侑斗はパーティーの準備を手伝えと、華と蓮を連れていき、その後暇になった飛鳥は、城の外に出ることにしました。


 寒い冬の日。昨晩積もった雪は、陽の光を浴びてキラキラ輝いています。


  カターン……カターン……


「?」


 ですが、その時です。


 もう使わるれていない塔の中から、不気味な音が聞こえてきました。


(誰か……いるのかな?)


 召使いたちはみんなパーティーの準備をしています。この忙しい最中、こんな塔の中で、なにをしているのか?


 飛鳥は、ふと気になって塔の中に入りました。


 長い螺旋階段が続く塔の中は、とても温かく、飛鳥はローブをとりさると、ドレスの裾を少しだけ持ち上げて、その階段を登り始めました。


 そして、塔のてっぺん。

 最上階の小さな部屋の前に立つと


 カターン……カターン……


 さっきの音が、よりハッキリと聞こえました。


 飛鳥は、恐る恐るその扉を開けます。


 すると、そこには


「……君、誰?」


 なんと、自分と同じ金色の髪をもつ、ツインテールの美少女がいたのです。




 ②に続く

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