第9話 山を抜け

第9章  山を抜け


汽車は、完全に山々を抜けた。別世界。

こんなにも大変な山々を越えて現れた出羽の国・山形。

福島から見た時は、こんな奥羽山脈・吾妻連峰のむこうに、陸地なんてあるのかどうかさえ、おぼつかない気持ちだったのに。

日本地図で東北を見るとなんてこともない地続きに見えるが、山形・秋田さらに庄内に行くには、おおきなおおきな奥羽山脈という障壁があることを思い知らされた。

昔、蝦夷地だとか、陸奥だとか、みちのくだとか、言われ、京から見れば、想像もつかない未開の地だったことにも頷ける。


 関根駅を過ぎて、平地の田畑を走るようになった。米沢盆地だ。

 赤いED78は、心なしか元気を取り戻したように、スピードをあげた。カタン、コトン、カタン、コトンと軽やかなステップを踏み出すように。 

車窓から、眼下に米沢の街が見えてくる。

どこまでも広がる緑と黄緑の田畑。青い山の稜線。赤い屋根の家々・・・。

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