第2話 時がたって...

「瑞希」

「何」

「...あのさ、俺」

「用がないなら話しかけないで」

「...悪い」

なんでこんなことになったんだ...



僕たちは中学生になった。

「昂汰!」

「な、なに?」

「一緒に学校行こうよ!」

「いや、一人で行きなよ」

「なんでそんなこと言うの?」

「別に。どうだっていいだろ。」

本当は一緒に登校したい。でも僕は瑞希と釣り合わない。瑞希はみんなの人気者。でも僕はいじめられてる。いじめられていることが情けなくて、瑞希にはばれないように何とかやっている。

「おい。昂汰」

僕の嫌いな声で名前を呼ばれた。

「何?圭太君」

「悪いけどジュース買ってきてくれない?」

「分かったよ。何がいい?」

「黒い炭酸」

「分かったよ」

財布を持って教室を出て、笑い声を背中で受け止める。情けないことにこれをやっていることに恥じらいはないし、むしろこれだけで済むなら喜んで承る。と、止めていた足を動かすと、後ろで何やら僕の嫌いな声が何かを叫んでいる。機嫌が悪い時に圭太君に絡まれると面倒なので急いで自動販売機のある1階まで向かった。


「買ってきたy...え?」

そこには、床に倒れこみ頬に手を当てて鋭い目つきで僕の目の前にいる人を睨んでいる圭太君がいた。

「圭太君!」

僕は急いで圭太君のもとへ駆け寄った。

「へー。そっちの見方するんだ。」

聞きなれた声がしたので声がしたほうを見ると僕の好きな人とよく似た背格好の女の子が踵を返して去っていくのが見えた。その時、僕はやっと我に返った。

「待って、瑞希」

急いで後を追いかけた。


僕は今、屋上に来ている。走ったため、口、鼻から白い息が蒸気機関車のようにあふれ出す。白息を隠そうと試みるがこの寒空と気温を生み出す地球には逆らえない。そして、僕が追いかけてきた瑞希だと思われる女の子は、未だ僕に背中を向けたままだ。

「ねぇ。瑞希。」

こちらを向いてくれる気配はまるでない。僕がもう一度彼女の名前を呼ぼうとしたその時。

「なんで言ってくれなかったの?」

彼女のその問いかけに、僕はただ黙ることしかできなかった。

彼女の声が震えていたから

「そっか。もう昔とは違うんだよね。昔みたいに無邪気に遊びに誘ってくれたり何でも話してくれる昂汰が好きだったのに。」

僕の頭は破裂寸前だ。今、好きだったと言われた。僕の好きな女の子に好きだったって。ん?”だった”過去形だ。僕は」焦って弁解しようと試みた。

「違うんだ。瑞希に迷惑かけたくなくて。それで」

「今頃言ったって遅いんだよ。やられてばっかで。もう悔しいとかやり返してやる。とかそんな感情は微塵もないんでしょ。私は悔しかったよ。昂汰がやられてるのに気づかなかったこと。でも今は昂汰がそういう感情を持ってないことに何よりもムカついてる。もう顔も見たくない。さよなら。」

瑞希の口からとめどなくあふれてくる言葉に何も言い返すことができなかった。すべて瑞希の言っていたことが正しいから。先まで弁解しようとしていたことがすごくみじめに感じた。もう何もかもが遅かった。好きだった子に見放され、未だ友達は誰一人としていない。

「終わったんだ。」

そうつぶやき先ほどまで彼女がたっていた場所に行くと一枚の紙切れが落ちていた。そこには、

『待ってるから。』

濃く太く力ず良い文字でそう書いてあった。僕の目から一筋の線ができた。あごの先から落ちた雫は小さな手紙の上に乗った。彼女が濃く書いた字の上に乗った水滴はしみこむことはなくただただ地面に落ちていった。顔を上げると空一面に雨雲が広がっていた。僕は急いで手紙を胸ポッケにしまい、扉を開け屋上を後にした。その顔つきは少し歪んだものだった。

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君と出会った後悔の果てに @paruharu

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