第5話・万年食欲娘


「もう、あんたのせいで怒られたじゃないかぁ!」


「ハアッ!それはお前の声がデカイからだろうが!」


「なに言うか!あんただって、こ―――」


「ゴホンッ!!」


「にゃはは...サーセン!ほ、ほら、行くよシロ!」


「ガッテン!」


受付のお姉さんの威圧な咳払いを受けた私達は、ニガ笑いをこぼして

一目散にその場を逃げ出して行く。



――――――――――



「ふう...お腹いっぱい!久々の特上ランチの味は、心も充たされて

夢いっぱいだよ♪」


受付のお姉さんの説教から逃げ出したユーナ達は、ギルドの三階にある

食事処で久々に味わうご馳走を堪能していた。


「うむ...確かに満足のいく良い味だった。さすがは万年食欲娘の選ぶ店だぜ!」


「ちょっと待てぃ!もしかして...その万年食欲娘って、私のことか!?」


シロのディスり言葉に、ユーナがこめかみに青筋をピクッと立てる。


「たりめぇだろうが!食うことしか興味がない奴なんて、お前以外に

誰がいるっていうだよっ!」


ユーナの怒りもなんのそのという顔で、シロが更に追い打ちのディスり言葉を

投げかける。


「し、失敬だな!食うこと以外にも、ちゃんと興味はあるわいっ!」


「ほう...それじゃ、それを言ってみなよ~ほれ、ほれ~♪」


ユーナの言葉なんぞ、戯れ言と言わんばかりにシロが小馬鹿にして

煽りを入れていく。


「こ、この野郎、馬鹿にしやがって...いいか、その耳かっぽじって

よく聞きやがれっ!まず......」


まず...まず......?


...って、あれ?


あれれ!?な、何も思い浮かんでこない...だと......っ!?


イヤイヤ、何も浮かんでこないって、そんなの嘘でしょう!?


「え......も、もしかして、私って本当に食べ物の事しか、興味ないの...?」


私はその衝撃事実に愕然とし、両膝と両手を地面に突いて頭を垂れる。


「そんなに落ち込むなってユーナ。お前にはもう1つ脳をフルに使う興味事が

あるじゃねぇか!」


項垂れて落ち込むユーナを見て、シロが憐れと思ったのか、助け舟を

出してくる。


「おお、さすがは私のパートナー!私の知らない私を知っているなんて!

さぁ!存分にそれを発表したまえ!」


「発表しろって...俺の問いに俺が答えるのかよ!」


ユーナが屈託のない笑顔でシロをヨイショすると、それにシロが

呆れた顔で文句をこぼす。


「さぁさぁ!シロさんや、四の五はいいから、早く言いたまえよっ!」


「たく...こいつは。じゃ、言うぞ!」


「おう!どんとこいや!」


ユーナが胸をドンと叩いて、シロの言葉を身構える。


「お前が食うこと以外で、脳を使う興味事は.........」


「興味事は......ゴクリ」


「寝ることだよっ!ただただ、ひたすらグーグー寝る事だっ!」


「寝る事って、アホかああぁぁぁあ―――――――っ!!」


シロのあまりにもお馬鹿な答えに、ユーナが叫声を上げ文句を荒らげる。


「アホはお前じゃぁあ!お前の頭ん中は、食う!寝る!食う!の三拍子しか

ないだろうがぁああっ!」


「んなワケあるかあぁぁぁあああ――――っ!大体、それ三拍子じゃなく、

二拍子じゃねぇかああぁぁぁあ―――――っ!!」


シロの文句に、ユーナが喉が枯れそうな勢いで、ふざけるといわんばかりに

荒らげた声で言い返す。


そんな言い合いをしているユーナ達に、


「うふふ。忘れたのですか、シロさん?ユーナさんには他にもちゃんとした

ご興味がありますのよ。そうですわよねぇ、ユーナさん♪」


突如謎の人物が現れ、一人と一匹に声をかけてきた。


そして、


ユーナの座っているテーブルの上に、何かのコインをポイッと投げてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る