第十二話 完全殺意

「今の発言はどういう意味なのかね。」

「どうもこうもなく、そのままの意味よ。」

「正気かね。」

「赤以外のスーツは全滅させる。そして、人間は、今現在このスーツの殲滅によって甘い汁を啜っている人間を全員滅ぼす。そういう意味よ。」

「何故、黒と白の、灰色のスーツは残すのかね。」

「単純な話よ。赤スーツには、赤スーツだけが暮らす完全な自治組織を持った街を与えるの。そこで暮らしてもらうわ。つまり、赤スーツに関して言えば、こうやって交渉することも可能だわ。だったら、このまま何かしらの権利を与えて、協力を仰ぐ方が得策よ。」

「つまり、それぞれの組織の幹部クラスから、政府の要人まで殺して回ると、そういう解釈で問題ないのかね。」

 その時。

 赤スーツが手を上げた。

 気が付くと、鎖とベルトは赤スーツの足元に落ちており、何の音も立てることなく大人しくしていた。

 白衣の研究員が驚き、ちかづいてくるが、そこはあたしが目で制した。

 問題はない。

 少なくとも、この赤スーツは、今、この議論に乗ろうとしている。

「それ以上動かないでね。殺すわ。」

「僕の意見は簡潔だよ。確かに、その意見は凄く魅力的だと思う。そうやることで、実際にスーツたちは楽しく暮らせるだろうしね。」

「だろうしね。というのはどういう意味。」

「そのままだよ。希望的観測に過ぎないね。僕たち赤スーツは人間を滅ぼすために動いている。ここがぶれることはない。」

「つまり、あたしたちと協力することはないと。

「あるとは思う。でも、最終的に赤スーツは人類を滅ぼすために動く。」

「それは無意識による行動なの。」

「僕は、この感覚を固定化された意思、だと呼んでるよ。」

「交渉は決裂ね。」

「僕は最初からそのつもりだよ。」

「じゃあ。」

 あたしは立ち上がった赤スーツの背中を見つめながら、手の中に赤い林檎を生み出す。

 あたしの能力は。

 手の中に赤い林檎を生み出し。

 それを視界に映る人間の首を挿げ替える。

 基本的に即死の技。

 これだけの近くでは外さない。

「赤スーツ。少し、話したいんだがね。」

「僕、もうすぐ死ぬけど。」

「少しで良いんだがね。」

「手短に。」

「正直、そこの女子高生、つまりは僕の仲間が言ったことはかなりぶっ飛んでいる話だがね。僕も今、初めて聞いたし、かなり動揺している。でも、実際に今の政府の状況ではこのままやったところで、上層部の手元にお金が溜まるきっかけを生み出すだけで、余り、僕らにとって良い側面はないんだがね。」

「だから。」

「ここで、一つ相談なんだがね。君を半殺しにまでして、ここに捕まえた男がいる。それはこのDAGHARRYの双子の幹部、そして手伝いに来ていた幹部三人。指示を出しだ、機関長。合計四人は関係しているんだがね。もしも、君さえよければ、僕と彼女で手伝って、その復讐をさせてあげてもいいんだがね。」

 あたしにとっては白衣の研究員が今の話でここまで肩入れしてくれるとは思っていなかった。やはり持つべきものは友なのだろう。

 皆、不満なのだ。この状況に。

 皆、不安なのだ。この環境が。

 DAGHARRYの今出た、六人。

 それらを全員殺せば、確かに簡単にこの機関を本当に乗っ取ることはできる。

 現実的な案へといつの間にかグレードは上がっていく。

 予期せぬところで、嬉しい誤算が生まれていた。

「二十人くらい仲間ができれば、勝てると思うんだがね。」

「いや。強い仲間が入れば十五人で十分だよ。」

 赤スーツが首を傾げる。

「僕が入るんだから、仲間は十五人でいい。」

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