第十三話 ベッド・ブラッド・イン

 赤スーツを部屋に残し、あたしと白衣の研究員は外へと出た。

 何もしゃべらなかったのは、部屋の中で喋ったことが全てであって、これ以上何も必要などなかったからだ。

 あたしは自分の手の中に林檎を作り出し、それを齧りながら上へ上へと昇るエレベータに乗っていた。

 十五人。

 という仲間の数は確かに妥当かもしれない。だが、相手は幹部クラスなわけで、人数はもっと多い方が良い。

 それこそ。

 二十人。

 これは固い。

 あたしと白衣の研究員。

 そして、あの赤スーツ。

 残りは十七人となる。

 赤スーツは他の赤スーツを勧誘するのは難しいと言っていた。

 VAPに恨みがあるような赤スーツはみんな、VAPとの戦闘を経験したということでもああり、赤スーツは今のところすべてで負けている。つまり、個人的な恨みを持ったうえで、生き残っている赤スーツは今、この施設で監禁されている先ほど話した赤スーツのみということになる。

 こちらの仲間になる理由がないし。

 正直。

 赤スーツは何を考えているのか分からない。

 そう、あの赤スーツは言った。

 お前も赤スーツではないか、とは思ったが、なんとなくその言葉の意味が分かったので黙っておくことにした。

 引き入れる仲間については何となく考えていた。

 あてはある。

 幹部の一人である、女子高校生モデルは、今のVAPに不満を持っている。

 つまり。

 貴方を主軸において反乱を起こし、乗っ取った暁には貴方を機関長に、とでも言えば食いつくと思う。

 もちろん、上手く行ったら後は十九人でリンチして殺す。

「本気でやるつもりなのかね。」

「まぁね。」

「お姉さんのことかね。」

「まぁね。」

「実際、今のVAPにも仕事人や研究員を取り巻く制度にも限界を感じてるし、不満もあるがね。その前の時だって、反乱を起こして今の状態になった訳だし、意義も感じてはいいるがね。」

「だったら。」

「本気で成功すると思っているのかね。」

「無理に決まってるでしょ。」

 あたしはエレベータの音を確かめる様に壁に寄りかかってあくびをした。眠くなってくる。

 白衣の研究員は頭を掻き、あくびをした。

「反乱が起こせるだけの力が集まったとして、それだけの大所帯になる限りは絶対に裏切り者が出てくる。幹部クラスの能力だって、それぞれかなり高い。一発で全滅だってある。」

「つまり、僕と君とでチームのメンバーを集め、チームを作り。」

「最初に裏切る。そして、その作戦の内容とメンバーを全て機関長に売って、顔と媚を売り出世する。あたしは、そのレベルになってそこで本当に、反乱を起こすためのチームを作るべきだと思ってる。間違ってるかな。」

「今の状態で反乱するという正義感ぶった判断を下す方が、およそ間違っている。と思うがね。」

 すべては上手く行っている。

 このまま、ある程度それなりに戦力になって、かつ、あたしの出世の邪魔になりそうな人間を仲間に引き入れて、焚きつけて反乱を起こさせる。

 この時に間違っても、これが捨て反乱だと思われてはいけない。

 本当に反乱を起こすつもりだが、あと一歩力及ばずといったあたりがいい。ある程度の脅威は感じるものの、しっかりと対処すれば恐れるべきものではない。という風にしなければリアルな感じが出ない。

「赤スーツを仲間にしたのには、理由があるのかね。」

「研究員側からも協力者を出したいの。その時に、あんたを利用して無理矢理赤スーツを解き放った裏切り者がいるという設定にしたほうがいいから。」

「僕は被害者になれるわけかね。ありがたい話だがね。」

 半年もあれば、捨て反乱は起こせる。

 そして。

 一年もあれば、本当の反乱が始まる。

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