まさにそれを地で行く作品。恐れ入りました。命綱を握られている緊張。根源的な恐怖に包まれながらの土壇場で告白。凄惨な物語と地の文で覆われてはいますが、終いには思わずすっ転ぶようなしっかりとしたオチまで付いて、私のお腹はユーモアで一杯です。告白とギロチンの手綱。成否を握られているという意味では同じくらい怖え。しかしながらそれだけではなく、作品に込められたテーマや背景も勿論。短編の枠に収まった起承転結は天晴れであります。
ここまでお題と、要求されたものをきちんとクリアしたKAC3の作品はなかなかないんじゃないだろうか……。ラブコメの、コメディの部分が非常に魅力的でした。掛け合いがめちゃくちゃうまいんです。あとは、主人公の性格が伝わってくるような文章。一人称のメリットを最大限生かしているなと思いました。読んでよかった。そう思うこと間違いなしの一作です。
確かにお題はシチュエーションラブコメでしたが、シチュエーション厳しすぎ!生か死か、断頭台の露と消えるか奇跡的に生きながらえるか。息の詰まる状況ですが、不思議と雰囲気は和やかです。これもまた、ラブコメでしょう。危機を乗り越えた二人の間は吊り橋効果でより強固になると言います。正直、なんで殺してくれって言われるのかは判りませんでしたが、それはまあ、いいのです。女の子なんてそんなもんです。ちょっと変わったラブコメを読みたい人にお勧めします。