第8話

「お前たちは絶対に逃げられないように慎重に洞窟へ向かえ、音で気付かれているだろうから気を付けろ」


「「「了解しました!」」」


 再び命令を受け洞窟へと足を向けた部下達。逆転劇はない、そう確信したのかその足取りは悠々としたものだった。


 一歩、二歩、三歩――――――。

 


「なッ!? これはッ! まさかッ!!」


「――――これで…………俺の勝ちだ……」


 先程まで死体だったはずのそれは緩慢な動きで立ち上がった。

 その脇腹は確かに切り裂かれ、血液は未だに流出し続けているのに、それでも彼は立ち上がった。


「確かに切り裂いたはずだッ! 一体何をした!?」


「アンタさぁ…………………そう、多分だけど……切る直前にって思ったんじゃないか?」


 その瞬間、リーダーは戦慄した。もしかしたら取り返しのつかないことをしてしまったのではないか、そう思っていた。


「これでお前たち悪神断ちは俺を無視して洞窟に行くことは出来ないし、殺して性質を消すことも出来ない、いわゆる詰みってやつだ……、ここを通るには…………俺を諦めさせて性質を解除させるしかないぞ………?」


「…………つまり何度も殺せ……と」


「その通り………さぁ、かかってこい……」


 それからは地獄絵図と呼ぶのが相応しいものとなった。


 斬っても、裂いても、叩き潰しても、最低限の修復だけをして血みどろになりながら立ち上がる。その姿を形容するならば西洋の化け物であるゾンビが的確だった。


「くそッ! 死ねッ! 死ねッ! 立ち上がるな! 動くなァ!」


 そんな罵声を浴びせられる度に、彼の力は増していく。

 もちろん彼だって何もせず立っているわけではなく、隙があればその手にある大太刀で切り裂く……というより叩き斬っていた。だが、無力化させるという意味ではこれ以上ないくらい良質な武器だった。

 気絶したのが五人に達したとき、彼の頭に血液は流れておらず、明確な判別がつく思考が出来ていなかった。


「(………血溜まりの半径は約三メートル……いや、四か………? まぁ、いいや………あと少し………ほんの少しなんだ……)」


 その時、彼の脳裏に陣が思い浮かんだ。

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