第12話 願いを叶えて
会場に向かう為、生田さんと僕はひたすら歩き続けていた。
生田さんの靴音がコンコンと長い長い廊下によく響いている。
その靴音の動きに合わすかのように生田さんの足首で紫色のミサンガが小さく揺れていることに、僕はまだ、気付いていなかった。
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(輪っかに通して、引っ張って……っと)
初めは付け方なんて分からなかったミサンガも、もう随分と手慣れた。
切れたら願いが叶うなんて言うけれど、5年たっても切れるなんて想像がつかないくらい頼もしくピンとしている。
バタバタバタッ
廊下から誰か走ってくる足音がする。
5年間も一緒に居たら足音だけで不思議と誰か分かるようになってくる。
ガチャリと扉が開いた。
「どうしたの、飛鳥?」
私はミサンガが着いた足首を見ながら言う。
この足音はきっと飛鳥だ。
「忘れ物取りに……
麻衣こそ何してるの?」
ハァハァと息を切らしてる飛鳥。
よっぽど急いでたんだろう。
「ミサンガ着けてたの。
てか、もうそろそろ集合じゃない?
他の子は行っちゃったし、早く行かないと」
「そうだね、私もミサンガ着けたら行くよ」
あったあったと自分のリュックを漁る星野飛鳥
ミサンガを取り出すと、ヨイショと椅子に座り
足首に着け始めた。
「……相変わらず、ミサンガ着けるの下手だね」
同じ5年間を過ごしてる筈なのに、飛鳥はミサンガ上手く結ぶ事が出来ない。
「ほら、貸して。
着けてあげるよ」
私は飛鳥からミサンガを受け取ると、足首にキュッと結んであげた。
「これでよしっと」
「ありがと」
照れ笑いする姿は今も昔も変わらない
アイドルの要素は彼女が1番持っていると私は思う。
「さ、行こっか」
「うん、もう皆んな待ってる頃だし
急がなきゃね」
私の少し前を歩く飛鳥の足首で、ぴょんぴょん揺れるミサンガを見て思う。
誰よりも似合ってるよ
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