第11話 想いを込めて

「それで、今に至るわけね」


生田さんと合流した僕達は、今までの経緯について詳しく説明した。


「じゃあ、本当に招待されてるってこと?」

驚きを隠せない様子の飛鳥。


「なんだ、マネージャーさんじゃないんだ……」

自分の推理が外れて落胆したご様子の未央奈。



(いや、最初からそう言ったじゃないですか……)


ハァとため息を吐く僕。



「未央奈も、飛鳥も、知らない人を巻き込んだらダ

 メでしょ!

 祐希さんだから良かったけど、本当に不審者なら

 どうするつもりよ!」


「……ごめんなさい」


とりあえず、これで2人からの誤解は解けたはずだ。


「祐希さん、この度は2人がご迷惑をお掛けし

 てすいません」


「いえいえ、僕の方もご迷惑になってしまって、

 すいませんでした」


正直、星野飛鳥と北野未央奈の2人と一緒に居た事がファンの僕としてはこれ以上にない幸せな時間を過ごした気がする。


まぁ、疑われてなければ更に良かったけど……



ちらりと腕時計を確認しながら、生田さんが言った。

「2人ともそろそろ集合時間迫ってるから先に行っ

 て。私は祐希さんを関係者席まで案内してからそ

 っちに向かうから」


「え、ヤバっ!

 もう最終確認の時間じゃん」


時間を確認した北野未央奈が驚きの声を上げる。


「飛鳥、そろそろ行こ?」


「あ、でもまだ私のリュックが……」


どうしてもリュックの中身が大切みたいだ。


「そんなに大切な物が入ってるの?」


生田さんが訪ねる。


「……ミサンガが入ってるんです」


……ミサンガ?足首につけるアレ?

それが大切なもの??


「私、楽屋に戻ってからそっちに行きます。

 すぐ戻りますから」


「あっ、ちょっと!」


生田さんが止めるより先に、星野飛鳥は楽屋へと走っていった。


「あぁ、もう……

仕方ない、未央奈は先に行ってて」


はーいと未央奈が返事すると、僕の方を見てきた。


「なんでミサンガ?って思ったでしょ?」


「え?えぇ、まぁ……」


「そりゃそうですよね。

 ライブ前にわざわざミサンガなんて必要なのかっ

 て思っちゃいますよね」


クスッと笑う彼女。


「でも、大切な物なの」


「私達……?」


「未央奈、もうそろそろ行かないと間に合わないわ

 よ」


生田さんに促される北野未央奈。


「じゃあまた会場でお会いしましょう!」


そう言うとぱたぱたと走り出していってしまった。


「さ、そろそろ行きましょうか」


「え、あ、はい」


結局、ミサンガの事について聞けずじまいでモヤモヤとしたまま、僕は生田さんと会場に向かう事になってしまったのだった。






































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