第2話 Starry sky

今にもフワフワと浮いていきそうなこの気持ちをしっかりと自分の中に留めておきたくて掛け布団をしっかりと掛ける。


手紙をもらってから5日たったある日

階段から転げ落ちた傷はすっかりと治り今日めでたく退院となる。



‥‥あかん、手紙の事を思い出すだけでにや

けがとまらないぞ


看護師たちにはいつもにやけてる人として若干引かれた目で見られたし、担当の先生からは頭に異常があるのではとレントゲン撮影を勧められた。


でもそんな事気にならないくらい僕は幸せなんだ!!!

だってあのトップアイドル、西野麻衣からお手紙貰ったんだぞ!!!


しかし、生田さんと約束した手前、この熱い幸せを、友達にも、親にも言わずに今に至る。


‥‥足を滑らして階段から転げ落ちたって事にしてあるし、今のところネットにも情報は乗ってなさそうだし、生田さんとの約束は守れてるっぽいな


なかなかの好青年だなと自分を自画自賛してると病室のドアがガラガラと開いた。


「あ、祐希さんお久しぶりです!」

表れたのはマネージャーの生田さんだ。


「生田さん、お久しぶりです。」

「いや〜、今日退院するそうですね

体の方はもう大丈夫ですか?」

「えぇ、もうすっかり

お陰様で元気になりました」

「それは良かった〜」


あ、これこれと言いながら生田さんは手に持っているフルーツ盛り合わせのカゴをヒョイと持ち上げる。


‥‥今日退院するのにフルーツ持ってきます?


僕がなんとなく困った顔をしてるのにも気付かない様子で生田さんは次々と話し始める。


「お伺いするの遅くなり申し訳ないです。あの後、海外の方に行っておりまして…」

「あ、そういえば昨日、台湾でライブでしたよね?」


西野麻衣が所属するグループ “Starry sky”

はアジア進出の皮切りとして台湾でのライブをしたのだ。

スーパーアリーナを満員御礼で迎えた今回のライブは彼女達にとっても、日本のアイドル歴史にとっても貴重な1日だったに違いない。


そうなんですよーと言いながら生田さんは鞄の中から1枚の封筒を取り出した。


‥‥もしかしてまた手紙?


まるでエサを待つ子犬のような期待を込めた瞳で封筒を見つめてしまう。


「あの、来週、武道館で“Starry sky”の5周年

記念ライブがあるのですが……

チケットって持ってますかね?」

「あ、いえ…申し込んだんですけど当たらな

くて……」


武道館で行われる5周年記念ライブには沢山の応募があったらしい。

今の“Starry sky”の人気を考えるとなかなかライブは当たりづらいのが現状だ。


それは良かったと生田さんはボソリと呟いた


‥‥ん?どういうこと??


頭の上にはてなマークが浮かんでいる僕に対して生田さんから渡された封筒の中身は驚くものだった。


「この度は大変お世話になりましたので、何

かお礼ができないかと思いまして。

西野麻衣と運営スタッフが話し合った結果

記念ライブにご招待したいと」



‥‥なんてサプライズなんだ











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る