この恋 恋愛禁止令を破っちゃいます!??
とべないうーいー
第1話 出会いは突然に
頭を強く打った衝撃がズキズキと脳に伝わって、意識がぼんやりとする。
‥‥ですか?大丈夫ですか?
薄れゆく視界の中、目の前の女性が僕に向かって必死に叫んでいるが上手く返事ができない。
‥‥確かこの女性が歩道橋の階段から落ちそうになったのを助けようとして僕が落ちたんだっけ
ぼんやりとした意識のなかでつい30秒前の出来事を思い出してきた。
‥‥よかった、この人はケガしてないようだな
最後の最後に救えたのがこんな綺麗な女性なら我が生涯に一片の悔いもないなと思った。
消えかけの意識がもう途切れそうだ
‥‥てか、この女性どこかで見たことある気がするぞ?
目の前で必死に呼びかける女性はマスクをして、目元はノーメイク、でもノーメイクでも目が大きくて茶色の髪がよく似合っている。人生最後に告白したいくらい、綺麗で可愛い。
‥‥いや、やっぱりそうだ、西野麻衣に似てるような??
西野麻衣はトップアイドルグループのセンターであり、グループの顔とも言える存在。
雑誌の表紙を飾ったり、テレビでよく見かける有名人だ。
そして、僕の推しメンだ。
握手会も行ったことがあるし、ライブも行ったことがある。
常に笑顔で、綺麗で、面白くて、可愛い。
そんな絵に描いたようなアイドル。
‥‥そんな訳ないよな?たまたま助けた女性があの西野麻衣だなんて
僕の目の前で必死に呼びかけてくれてるのが西野麻衣だなんて神様も死に際に随分と嬉しいサプライズでもしてくれてるのか?
‥‥ノーメイクでも可愛いなぁ
本物の西野麻衣な訳ないけどこの人も負けじと可愛いから僕は満足だ……
そう思うと同時に意識がプツリと途切れたのだった。
——————————————————
白い天井がぼんやりと見える
‥‥ん、ここは?
「あ、目覚めました?」
隣から女性の声が聞こえてくる。
もしかして……
期待に胸を膨らましながら横を向くと僕が助けた女性とは違う人が心配そうにこちらを見つめている。
「あの…お身体の方大丈夫ですか?」
「ええ、なんとか…」
‥‥ってかここはどこなんだ??
黒髪の女性は安堵したのか、ほっとした顔で僕を見ている。
「えーっと、どちら様ですかね…」
「あ!そういえばご紹介がまだでしたね
私、マネージャーの生田と申します
この度は西野麻衣を助けて頂き誠にありが
ございます。
本人の方が次のお仕事があってこの場に居
なくて誠に申し訳ございません」
ぺこぺこと頭を下げながら生田さんは今までの経緯を詳しく説明してくれた。
階段から落ちた後、病院に運び込まれたこと
そしてやはり僕が助けたのが西野麻衣だということ
やっぱり西野麻衣だったのか…
唖然とする僕をよそに生田さんはスマホをいじっている
「あの、よろしければ連絡先を…」
‥‥えっ、もしかして西野麻衣の!?
「もし何かあれば、これ私の番号なので」
‥‥そうだよな、何を期待してるんだ
相手はアイドルだぞ
心の中で自分を叱っていると生田さんはゴソゴソと鞄から何かを取り出している
「あ、あった!
これ、本人から預かってて…」
差し出された手には手紙が握られている。
「こっ、これって本人から僕宛に!?」
「ええ、本人からお預かりしてるものです」
(まさかの本人直筆の手紙……
何が書かれてるのかなぁ
もしかしたら連絡先とか?
いゃあ、そんなまさかねぇ〜)
まだ受け取ってない手紙に鼻の下を伸ばしていると生田さんが申し訳なさそうに言葉を発する
「あの…大変言いづらいのですが
今回の事についてあまり他言にしないでい
ただけませんか?
芸能人なのであまり噂になるのは…」
夢のように幸せな出来事はあまりにも現実味を帯びていなくて
生田さんが帰った後の病室にはただただ現実の世界が広がっているだけだった。
(そりゃ、そうだよなぁ
アイドルを助けたとはいえ、そんなうまいことは行かないよな
アイドルと恋愛なんてできる訳ないか…)
直筆の手紙は、まだ読んではいないが大体の内容は想像がつきそうだ
当たり障りのない言葉が書かれてるのだろう
(いやいや、人を助けたことは事実だし
それがたまたまアイドルだっただけだ!
なにより、ケガをしてなかっただけでも良いじゃないか)
自分の浮ついた心にもう一度喝を入れ直し
手紙を読み始めた。
————————————————————
今回、危ない所を助けていただきありがとうございます
お仕事の兼ね合いで直接お礼が言えなくてごめんなさい
貴方の顔を見た時、ビックリしました
いつも握手会に来てくれてますよね?
いつも会いに来てくれる貴方に助けて頂いたこと一生忘れません
良ければまた会いに来てください(ここまで書いておいて図々しいなぁって思ってます)
でもまた、いつものようにお話がしたいです
麻衣より
‥‥これってマジですか
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