3月の雪
囲会多マッキー
第1話
「⋯⋯はあ。また部費が減らされたよ」
降雪部の部長である私は、お金のことに悩まされていた。もちろん、悩んでも増える訳では無いが、当てもなく動き回るのも得策ではないだろう。
「はぁ⋯⋯。今年はどうしよう」
「やっていけないなら廃部にしなさい」
知らぬ間に会計長が小さな部室に入り込んでいたようだ。⋯⋯まぁこの会計長も小さいのだけど。
「⋯⋯や、やれますよ! やってやりますよ!」
「せいぜい頑張ることですね」
彼は私たちのことを目の敵にしている。何かした覚えはないのだが、いつの間にかに
──────あれ? まさか、あれで目の敵に?
私は笑顔が冷たいと言われたことがある。名前も「雪」とつけられ、冗談まじりでいじられた。
テストの点数がたまたま良かった時にあまりの嬉しさで笑顔を見せた時がある。その時の顔が一番冷たいとよく言われた。その時に彼と目が合ってから目の敵にされている気がする。それが原因だとは思わないが⋯⋯。
「そろそろ、職権乱用で訴えてやらないとダメかな⋯⋯」と思い始める末期症状が出始めた。もちろん、訴えると私の居場所は無くなる。あいつは、私以外には良い振る舞いしかしないのだ。
「⋯⋯どんな手を使えば良いのだろう」
「心の声が漏れてるけど?」
「あ⋯⋯聞こえてた?」
よりにもよって生徒会の人間に⋯⋯。これでは既にバレていると考えた方が良いだろう。あいつの事だ。きっと盗聴器の一つや二つ⋯⋯。
「⋯⋯あ、あの子は犯罪行為はしてないからね?」
「やっぱり?」
彼女はあいつの双子の姉だ。私と同級生で、彼女とは仲が良い。しかし、今は敵の姉だ。さらに言えば、この姉は極度のブラコンである。
「
⋯⋯あ、ブラコンじゃなくてヤンデレに近いかも。でも、そんなことはどうでもいい。とりあえず、あいつの弱点があれば⋯⋯。
──────ブラコン姉からは聞き出せないよなぁ
この人、あいつの事を崇拝するレベルで好きだし。絶対弱点ないと思ってるやばいやつだからなぁ。
あいつは私より凄いし、弱点も分からない。でも、私はあいつの弱点を見つけないといけないのだ。さすがにストーキングするのはダメである。ならば、この方法を取るしかない。
「⋯⋯今日、家に泊まってもいい?」
「⋯⋯え? 私の家に⋯⋯ってこと?」
「うん。ダメかな?」
「⋯⋯まぁ、大丈夫だろうけど」
なんとか、家に泊まらせて貰えたが、生徒会が終わるまでもう少しかかるそうだ。家に連絡を済ませると、することが無い。ようやく終わった頃には八時を回っていた。
三人で帰るのは初めてかもしれない。もちろん、こんな変なヤツらと帰る人間はそうそう居ないだろう。下駄箱でいち早く靴を履き替えたブラコン姉が外に出ると、信じ難いことを言い出した。
「⋯⋯あ、雪だ」
「え⋯⋯嘘でしょ? スコップとかしまっちゃったのに」
あれ⋯⋯お姉さんには意外と普通の話し方だ⋯⋯。私にはそんな話し方しないのに⋯⋯。
三月の雪はふわふわとしていない、まるで氷のように痛い雪だった。
3月の雪 囲会多マッキー @makky20030217
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