腐令嬢、納得いかず
「そ、そうだ。ゲームが始まった入学式の夜から、やけに前世の夢見るようになったんだよね。最初に見たのは事故に遭った後、実は生きてました〜って
「僕も? 変なことさせてませんよね? BL沼に勧誘したり、信者にして腐男子化させたりしたら許しませんぞ?」
話題変更効果はてきめん、
「お、その手があったか。今夜も江宮が出てきたら、お気に入りのBL漫画を読ませてみよーっと!」
「やめてくだされ、気持ち悪い! 夢でも不快です! って今夜もって、そんなに頻繁に僕が出てくる夢を見てるんですか!?」
「うん、ほぼ毎晩。起きたらほとんど内容は忘れてるんだけど、江宮はよく出てくるっぽくてたまに覚えてるんだ。面白いでしょ? こんな変な夢を見るようになったのは、プルトナと一緒に寝るようになってからだから、全部プルトナのせいだと思う。怒るならプルトナによろしくどうぞ!」
語尾の勢いに乗ってペーン! とプルトナのケツを叩いてみせたけれど、反応がない。見るとプルトナはイリオスと揃って、小難しい顔をして考え込んでいた。
「そういえばアタシ、どうしてクラティラスなんかと寝るようになったのかしら? もしかして、アタシが与えた霊力と共鳴して呼ばれた……?」
「毎晩続く前世の夢……タイミング的に、気になりますな? いやでも妄想力の激しい
「呼ばれたんだとしたら、何に? 何のために? でもクラティラスの側にいなきゃいけないって気持ちになったのよね……こいつ、短期間で急激に胸が成長したから、その秘訣が睡眠にあると踏んで探ろうとしたのかしら? だったら夢の件は、アタシとは無関係……よね?」
「そうですなー……髪の毛一本、埃一片からでもBL妄想可能なキモウル
最後は一匹と一人で頷き合い、雑すぎる結論に到達した。
こいつらはそれで万事解決ってことでいいのであろう。だけど、私は納得いかない!
「が、願望なわけないし! 私の願望なら、何で夢でまでオタイガーなんかと毎日毎日会わなきゃなんないの!? ありえないでしょーが!」
「そ、それは確かにありえないですね……僕もウル腐には夢でも会いたくありませんから。高校を卒業したその日にスマホを新規で買い替えて、ウル腐から解放された記念に大量のいちごミルクプリンを買い込んで、一人いちごミルクプリンパーティーを開いたくらいですし」
頬を引き攣らせながら、江宮が言う。
こんのやろぉぉぉ……卒業した後に何回かメッセージ送ったのに全て未読無視だったのは、そういうことだったのか!
てか、いちごミルクプリンパーティーって何!? いちごミルクプリンは、生前の私の好物だったよね!? いつも食べてたから江宮だってよく知ってるよね!? 最上級の嫌がらせだな!!
「夢の話はもういいとして、プルトナさん、僕が『イリオスであってイリオスではない』と見抜きましたよね? あれはどうしてなんです?」
怒りに任せて私が投げ付けた枕をあっさり受け止め、イリオスがプルトナに問う。するとプルトナは、にゃふっと笑った。
「だってぇ、完全無欠のイリオス殿下があんなに絵がヘッタクソなわけないものぉ。王宮に行った時にこっそり部屋に忍び込んで、一人でこっそり描いてたところを見ちゃったのよねぇ。申し訳ないけど、人だとか化物だとかそんなレベルを超えて悍ましいヘドロにしか見えなくて、笑いを堪えるのに必死だったわー。でも本人は『女の子同士で仲良く手を繋いでる絵』のつもりらしくて、何度も眺めてはニヤニヤして、可愛い可愛いってずっと囁き続けてて……むぎょおんっ!!」
プルトナの全身の毛が逆立つ。かと思ったら、どてんと転がった。イリオスに強烈な雷撃魔法を食らわされたせいだ。
「へぇぇぇ……精霊って、人の秘密を覗いたり、それを暴露したりする無礼な存在だったんですねぇぇぇ……? 知らなかったなぁぁぁ……?」
ピクピク震えるプルトナの顎を掴み、イリオスが顔を寄せる。口元には笑みが浮かんでいるけれども、紅の瞳は凄絶な怒りに燃え狂っていた。
あらまぁ……これは完全にキレてらっしゃるわ。私、知〜らないっと。
「やめ……にゃめて、ぎにゃー! たたた助けて、オーカミュー! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、エミャー!!」
それからプルトナは火炎と雷撃を三発ずつ、氷結を七発と魔法攻撃三三七拍子を食らい、江宮が百合萌え地産地消する姿を盗み見したことを小一時間ほど詫びさせられた。ちなみに私は、クローゼット床下に隠してあるエログロBL絵を発見されてバレたらしい。まぁこっちはそんなことだろうと思ってたんで、ノーダメージだ。
しかし江宮はそうでなかったようで、私にも『誰かに言ったら雷落とす』『今後この話題を出したら燃やす』『聞いたことを忘れないと凍らせる』と脅してきた。
今更そんなことでからかうかっての。江宮がキモいのなんて今に始まったことじゃないし。
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