アステリア学園中等部三年
声無き声
――――誰か、助けてください。
そう叫びたくとも、声を上げることは許されない。声にならない叫びを笑顔で隠し、生きるしかなかった。
何もかもが順風満帆。少なくとも周りからは、自分が幸せを謳歌しているように見えているのだろう。
けれど実際は違う。本当は、本当に自分が望むものは――。
知りたくなかった。知らずに、生きていきたかった。けれど知ってしまった。知ったからにはもう、知らない自分に戻ることはできない。
なのに今の自分にできるのは、知らぬフリを押し通し続けることだけ。
それが叶わなければ、きっと殺されるだろう。自分は、ここにいてはならない者だから。
死など厭わない。けれども、あの人の美しい手を汚させたくない。
お願い、邪魔をしないで。たった一つの救済の道を、閉ざさないで。
――誰か、助けてください。
あの人を愛していた。この想いを打ち明けることなど決してできないとわかっている。それでも、あの人を心から愛していた。
だから何故あの人なのかと嘆き、絶望し、打ち拉がれた。
自分がどうなろうと構わない。あの人だけは、この恐ろしい呪いの連鎖から解放したかった。
しかしどれほど祈れど願えど、この思いは届かない。自分の力では、結末を変えられない。
自分は所詮、囚われの身。
ならばもう、他の者に託すしかない。無力な自分と違い、未来を覆すことができそうな者に。
――――誰か、助けてください。救ってください。止めて、そして変えてください。
――――あの人と共にこの世界が向かおうとしている、悲しい末路を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます