第14話開戦

出陣当日武装した武士達が集まり場の空気はいいとは言えなかった。


ある者は功績をあげようと血気盛んになりある者は昨日の会議の結果に不満を残していた。


勝家さんも不満を持っている一人だった。


そうこうしていると信長様が出てきた。


信長様が「出陣!」と叫ぶと昨日の会議通り出陣していった。


何事もなく行軍し美濃国境を過ぎ安八郡を過ぎると周りの雰囲気が一変に変わったのだ。


先行部隊が攻撃を受けたようだ。


「勝家とその部下は先行して!速く!」


信長様がそう言い放った。


「ハッ!行くぞ皆の者!我に続け!」


そういい勝家さんが行列から外れた。


それに自分達も続く。


馬を飛ばし先頭付近に近ずく。


なかなか信行様のもとには近ずけない。


信行様を囲むように敵味方関係なく死体が転がっていた。


それと共に森可成らが槍を振るい信行様も刀を取り近づく敵を斬っていた。


「信行様!ただいま参ります!」


そういい勝家さんも他の武士も槍を構え突撃を仕掛けた。


しかし敵の別働隊も到達。


なかなか進めなかった。


自分は見慣れない大量の死体を見て気分が悪くなっていた。


「新鬼!無理なら下がれ!死ぬぞ!」


「だ、大丈夫です!勝家さん!やれます!」


「ならいい。私の後ろから離れるなよ!」


そういうと勝家さんを先頭に切り込んでいった。


別働隊の足軽を馬で蹴飛ばし馬に乗ってる敵は槍で切り倒し進む。


そして信行様の近くまできた。


「勝家!なぜここに!?」


「信長様の命令です!決して勝手に来たのではありません!」


「そう。あの姉様が・・・。勝家頼んだわよ!」


「はい!」


「勝家!どうだ!ここで一つ賭けでもしないか!」


「可成か、軽口叩くぐらいには元気が有り余ってるのだな!いいだろうその賭け乗ってやる!」


そういうと勝家さんと可成さんは共に敵を斬っていった。


それに続くように織田軍の足軽達が反撃にでる。


あっという間に死体の山ができ始めていった。


「信行様、すみません!役に立てなくて・・・」


「新鬼も来ていたのね。役にたってない訳じゃないわ。あなたの顔を見たら笑えてくるのだもの。」


そういい信行様は戦場のど真ん中だというのに笑いだした。


「信行様、自分の顔になにか着いてるでしょうか・・・!?」


「ふふっ、今のあなたの顔吐く一歩手前みたいな顔しながら人の心配してるのよ。そんな顔笑わずにはいられないわ。だけどおかげで元気が出たわ!ちょっと暴れてくる!新鬼は木陰で吐いて来なさい!」


信行様は馬にまたがり戦場を駆けだしていった。


自分はお言葉に甘えて吐かせてもらう。


朝食べた分は出きっただろう。


一度吐くと楽になった。


「後ろ貰ったぁ!」


そういい足軽らしき人物が槍で突いてきた。


それを紙一重でかわした。


体がとっさに動いたのだ。


自分でも信じられなかったがそれが現実だった。


そしてすぐに自分も槍で突いた。


しかしかわされる。


可成さんに教わったとおり急所をめがけて即座に突く。


「戦場では油断大敵だぁ!」


そう言い放ち突くと偶然にも相手の心臓を貫いていた。


相手は倒れ込む。


殺したのだ。


自分は生まれて初めて本当の戦場を見てそして人の命を奪ったのだ。


そう考えるとまた気持ち悪くなった。


出る物もないのに吐きたくなり胃液だけでも吐いてしまった。


そうしていると本隊も駆けつけ戦況は一変。


敵は退却を始めていた。


「お前がやったのか!?こいつ!?」


「可成さん・・・はい・・・僕が殺りました・・・」


「やるじゃないか!新鬼!見たところ槍で一突きだな!初陣のわりにやるな!」


そういい可成さんは豪快に笑いだした。


その後隊列を整えたが死者、負傷者が多く退却する事になった。


こうして自分の初陣は幕をしめたのだった・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る