最終話:現実と真実
「……⁉︎ ちょっと、お父さん。香澄が、香澄が……」
「大丈夫よ、お母さん。ちょっと足が動かし辛くなっただけだから……」
「そんな……なんで、なんでこんな事に……」
「生きてるだけマシだって、名倉先生は言ってたから。私もそう思うし、でも……」
箱根旅行から帰った長瀬夫婦は、自宅を留守にしていた間に最悪に見舞われた娘を見た瞬間に泣き崩れてしまった。
そして母親同様に、長瀬香澄も泣き始めた。
自分のしたことを悔やんでいるのか、それとも信用してくれる親友を失ったことを嘆いているのか。
どちらにしても、自業自得だとしか思えない状況に、思わず欠伸が出そうになった。
「本当に、本当によかったわね、涼ちゃん。これでお母さんも安心できるわ」
「う、うん。そう、だね」
僕が真実に辿り着いてから数日後、唐突に家を訪ねてきた長瀬夫婦に僕は一安心した。
母さん達はかなり驚いていたようだったけど、あの意味不明な手紙の主が絢香さんだと言う事は一応伏せておいた。
まだ本人の言質をとった訳でもないし、それに母さんにとって絢香さんは僕を家まで送り届けてくれた恩人な訳だし。
個人的にも、僕を導き守ってくれた絢香さんには、いたずらをする厄介な大人だというレッテルを獲得して欲しくなかった。
なんにせよ、長瀬夫婦が帰宅した時点で僕が推察した事がほぼ全て正しい事が立証された訳だ。
和人が故意に殺された事に付いては、あとで絢香さんに確認を取ろう。
「長瀬さん、本当によかったですね。私たちも色々と心配で心配で……」
ちなみに母さんは、あの手紙の件について長瀬夫婦には伏せておく事にしたらしい。それについては父さんも同意済みだ。
にしても、香澄がここまで早く目覚めるとは名倉先生でも思っていなかった事で僕も驚いている。
執念にも似た驚異的な回復力があったのかもしれないな、と霊的な観点から笑っている医師を見るのはもしかしたら最初で最後だったかもしれない。
名倉先生としては、救うべき対象が生きていてくれたのがよほど嬉しかったのだろう。
僕はちょっと複雑だけど……
「私たちが留守の間、香澄のお見舞いに何度も来て下さってありがとうございました。お礼はまた後日」
「いいの……じゃなくて、いいんですよ〜、香澄ちゃんは娘も同然ですからね。ね、涼ちゃん?」
「は、はぁ……」
母さんと長瀬のおばさんは、長瀬のおじさんの前だとなぜか敬語で会話をする。
僕の父さんの前でも同様だ。僕には到底わからない何かがあるのだろう。
って今はそんな事よりも、早く病院の入り口に向かわないと。
「あ、あの。僕はちょっと用事があるのでお先に失礼しますね」
「あら涼ちゃん、折角香澄ちゃんの目が覚めたって言うのに。ずっと待ってたn……」
「ごめん、母さん。ちょっと外せない用事だから」
この気持ちの悪い空間から逃げるように、早足で退室した。
九十八パーセント以上確定した香澄の本性。
知らない方がいい真っ黒な裏側を目撃した僕には、以前のような情が一ミリも湧いてこなかった。
そして心はスッキリとしている。
何ヶ月もつかえていた気持ち悪さから解放され、偽りの感情もない完全なるゼロからのスタート。
その一番最初に選択したのは、恩人とのドライブデートだ。
「おっ、やあ涼太くん。また探偵のような顔をしてるじゃないか。次はどんな推理を聞かせてくれるのかな?」
「一週間ぶりですね、絢香さん。この前の嘘は随分と困りましたよ。でも、助かりました」
「あはは。涼太くんはやっぱり面白いね。前も誘ったけど、ウチの組に入らないかい?」
「そう言う話は病院の入り口でするもんじゃないですよ、絢香さん」
「それもそうだね。じゃあ行こうか。今度は昼間の海岸だ!」
相変わらず大人の色気を全開にした服装の絢香さん。
そんな美人と今から海岸までドライブするのに、全く胸が高鳴らないのは少しだけ失礼に値する気もする。
「ん? どうしたんだい? 早く乗りなよ?」
「あ、はい。すいません」
前回のように漆黒の車の助手席へと乗り込み、シートベルトを着用する。
違うのは、もしかしたら殺されるんじゃないか、なんてドラマや映画の見過ぎによる弊害とも呼べる考えが一切ないと言う事。
どちらかと言うと、ここが世界で一番安全なんじゃないかと思っている。
「もー、さっきからぼーっとして。あの後色々と分かったんだろう? 私を怖がってないってことは、さ。それとも何かい、また銃で撃たれるとでも思っているのかい?」
「いやいや、あれはモデルガンですよね? 多分ですけど……恥ずかしながら、僕が勝手に気絶した、だけで……」
「ご名答! 流石は探偵くんだ。本当は睡眠導入剤で眠らせちゃおうかとも思ってたけどさ、それより前に真に受けて気絶しちゃったんだもん。お姉さん焦っちゃったよ」
絢香さんがバックミラーを調節し終えると、車は発進した。
前と同じ道を辿ると同時に、あの夜の自分の姿を思い出してしまう。
あれはとても恥ずかしい。ヤクザ映画に憧れを持つ少年だと罵られても否定はできそうにないな。
「でも、あれは絢香さんにも非がありますよ。話の構成がちゃんと辻褄が合っていたんですもん。それにその前からヒントになりそうな昔話も散々……」
「あの昔話は本物だよ。最初の部分だけね。でも君を助けるのにはうってつけだっただろう?」
「まぁ、そうですね。自分の本心を嫌という程思い知らされましたよ。浮気現場を目にして、真正面から振られて、加えて絢香さんの助言を無視してまで想い続けていたんですから」
「それは気にすることじゃないさ。人生は長いからね。今回で学べたならそれで十分。それに、涼太くんを助けたのはただのついでだったからさ」
「神崎先輩はまだ誤解したままですか?」
「うん。篤は普通にバカだからね。全く、後輩の涼太くんがちゃんと真実に辿り着いたって言うのに、私の弟ときたら……」
小さなため息をつきながらも、絢香さんは幸せそうな表情を浮かべていた。
この世で最もブラコンな美人姉にとって、あまり頭の回らない弟は至高の一品とも呼べる代物なのだろう。
庇護欲をこれでもかと言うほど満たしてくれる。最高の相手の筈だ。
「でも僕にとっては神崎先輩はいい先輩ですよ。色々と真っ直ぐで、今でも先輩みたいになりたいと思いますもん」
「つまり私の弟になりたいのかい? 全くもー、涼太くんはかわいいなー、このー」
頭をガシガシと撫でられ、絢香さんの言葉を否定するタイミングを失ってしまった。
まぁ、実際絢香さんと今以上に仲良くなれるのは嫌ではない。
「あ、それと一つ聞きたいんですけど……」
「あの手紙のことかい?」
「いえいえ、違います。あれは絢香さんが用意したのは分かってますから。僕の聞きたいのは和人の事なんですけど……」
「知ってどうするの?」
絢香さんの口調が少し尖ったような気がした。
つまり、僕が知らなくてもいい事なのだろう。
「いや、一応それだけが不可解なので……」
「んー、まぁいっか。あの後に西山のおっさんに聞いたんだけどさ、和人くんは薬やってたみたいなんだよね。だから処理したんだってさ。あんまり人には言わないでくれよ? 私と西山のおっさんの所は結構親密な仲なんだからさ」
「言いませんよ、そんな事。誰かに話してもどうにもならないです、し……」
って、あれ、薬? 違法ドラッグのことだよな?
それなら西山コーポレーションの名前に傷が付く前に無かったことにするのが合理的だけど……
「多分察してると思うけど、香澄ちゃんも軽度の薬中毒だよ」
「……⁉︎」
「名倉っちから聞いたんだけどさ、その治療は私が隠してやってくれって言っといたから親バレとかはないだろうね。ただ、色々と支障が出るんじゃないかな〜、とは思うよ。と言うよりは、出てた、が正しいけどね。君なら何か知ってるんじゃないかい?」
香澄の変貌。誰かに仕込まれたかのように狡猾な嘘。
そして、気づかれたら一発でアウトな、思惑に存在した大きな欠陥。
やっと、全部。百パーセント繋がった。
「知ってます。でも……」
「薬はやったヤツが悪い。君が彼女に同情するのは無意味だ。それくらいは分かってるだろう?」
「はい。中学の頃に保体でも習いましたから……」
それでも、複雑であることに変わりはない。
薬のせいで全てを棒に振るってしまった。
和人に依存した事も、誰にもバレたく無かったのも、全てはくだらない薬のため。
香澄の部屋に薬関連の物が何も無かった辺り、和人が完全に管理していたんだろう。
可哀想……だとは思わない。それこそ自業自得だ。
ただ、香澄がなんで薬を始めたのかは分からない。
半強制的だったとしても、それを証明する証拠など存在しない。
騙されたのかもしれない。でも、それも証明はできない。
だからこそ、薬は最悪だ。
依存させる力を保有し、どんな形であれ使用した者を悪者にする。
ただ、依存度が上がる前に誰かに相談しなかったのは、香澄が悪い。
親……は難しいとして、せめて僕とかに……
「そんなに暗い顔をしないでくれよ。私が悪者みたいじゃないか」
「そんなことはないですよ。もちろん。ただ……」
「考えても無駄だよ。私も自分の部下が何人も薬に溺れていったから分かる。アイツらはただのバカだよ。彼氏に騙された奴もいるし、自ら手を出した奴もいる。でもね、そう言う状況になる事を許してしまった最初が必ずあるんだよ。香澄ちゃんだって、和人の誘いに乗った事は確実だ。だからどんな形であれクズだって事実は変わらない。まぁ、涼太くんにはちょっと理解が難しいかもしれないけどさ」
「……なんとなくは、理解しました。すいません」
「なんで君が謝るんだよ〜。全くもう、しょうがないからお姉さんが慰めてあげようか?」
「じゃあお願いします」
「えー、釣れないな〜……って、今なんて?」
「っぷ。冗談ですよ、絢香さん。僕もそろそろ学習しますって」
「…………。いいよ。いい。やっぱり涼太くんが欲しくなっちゃったよ、お姉さん。何がなんでも、絶対にウチの組に入ってもらうから。もう決定!」
ハンドルから片手を離したと思ったら、僕の目の前には豊満な胸が広がっていた。
歩道にいる人がこの光景を見たら、僕は美人のヘッドロックで窒息しそうな少年だと思うだろう。
そして目撃者が男だったなら、全力で睨みをきかせるほどに羨ましいシチュエーション。
僕が最初に女神さまだと思ったのは、やはり間違いでは無かったらしい。
「離して。死んじゃう。事故りますよ」
「大丈夫大丈夫、私は足でも運転できるからね」
そう言われて慌てて腕を振りほどき、視界を確保すると、絢香さんの右手はしっかりとハンドルを握っているのが見えた
「あははは。全く、涼太くんはかわいいなー。できるとしても足で運転するわけないだろうに」
「それを本当にしそうだから怖いんですよ」
と、軽い悪態をつき終えてのと同時に、車のフロントウィンドウが絶景を映すディスプレイになったのかと錯覚してしまった。
それ程に美しい海の景色。
キラキラと輝き、カモメが空を悠々と飛んでいる。
浜辺にいる人間の食べ物を狙ったトンビとの領空争いも、遠目から見ると自然の景観をより輝かしいものにしている。
近くで、特に浜辺にいる人たちにとっては煩わしい限りなんだろうけどね。
「おー、見えた見えた。やっぱり海岸ドライブは昼間に来るもんだね〜」
「ほんと、夜に来るところではないですよね」
本当についこの前の事なのに、全てが遠い過去のように思える。
いや、本当はとうの昔に決着のついていた話しだったはずなんだ。
ただ僕が、信じたくないという一心で現実を……真実を捻じ曲げていただけの事。
喜怒哀楽。この短期間で、人間の感情を全てを充分すぎるほどに経験できた。
だからこそ、無駄ではなかった。
終わりと始まりが同じ意味を持っていたとしても、その途中にこそ意味があった。
神崎先輩に救われた事。
千野先輩に気づかせてもらえたもの。
親友達から支えられた事。
それに、見ず知らずの弟の後輩を助けてくれた絢香さん。
たくさんの仲間に支えられて、僕は一歩成長できたんだから。
「それじゃあ、ちょっと浜辺にでも降りて遊んでから帰ろうか。夏休みの延長戦って事で」
「はい。喜んで」
それから僕は、絢香さんとの時間を大いに楽しんだ。
この感覚が……感情がどういうものなのかその時は気づかずに、純粋な気持ちで。
ここに辿り着くまでの経験を、僕は大人になったら誰かに伝えるんだろう。
絢香さんが僕にしてくれたように、現実と真実を乗り越えた先には、新たな道が待っているという事を。
今の絢香さんと同じ立場から。
-------------------------------------------------------
暗闇の中、僕の元想い人は何かに悶え苦しんでいた。
「ただの禁断症状だよ。他の病棟に移すと神崎の姉さんに怒られちゃうから一応個室を与えたんだけど、たまに苦情が来るんだよね……」
「色々ありがとうございました、名倉先生。そう言えば、あの時に渡してくれたストラップって……」
「ああ、うん。あれは姉さんからの贈り物だったよ。なんだか騙すような形になってしまってすまなかったね。山田くんを鍛えるためだ、と強引に押し付けられてさ。許してくれるかい?」
「勿論ですよ。それじゃあ、一人で行ってみますね」
「あぁ、一応気をつけてくれよ。何かあったら……はいこれ」
と名倉先生から渡されたのは、鎮静剤だった。
僕が注射の打ち方を知っているわけはないだろうに。
名倉先生も、それは分かっていて冗談のように注射器を手渡してきた。
医師としてこの行為はどうなのか……
「じゃあ一応受け取っておきます。それと、また夜に病棟に入れてもらってありがとうございました」
「いいんだよいいんだよ。じゃあ頑張ってね」
ガラガラ、と病室の引き戸が閉められ、月明かりのみが差し込む部屋に僕は放り込まれた。
目の前のベッドで苦しそうにしているのは、昼間まで必死に禁断症状を隠していた長瀬香澄。
両親には心配をかけられない、と思う心はまだ残っているようだ。
「香澄、僕だけど、分かる?」
と声をかけると、ガタガタと鳴り響いてたベッドの軋む音が鳴り止んだ。
どんな表情をしているのかは見えないが、香澄はじっとこっちを見つめ始めた。
「りょ……涼太? どうしたの、今は面会時間すぎてるでしょ?」
「僕は案外顔がきくんだよ。だから特別に入れてもらえたんだ」
「……? 本当に、涼太なの? なんか違う……」
「あはは。そう言ってもらえて嬉しいよ。でも香澄こそ、僕の知ってる香澄じゃないみたいだね」
「…………」
平気なふりをして浮かべていたであろう作り笑いが消え去った。
重く、真剣な雰囲気に部屋が包まれ、美しいはずの月明かりさえ気味の悪いものに感じられた。
それでも、僕は持参したあのノートを提示する事にした。
「これ、見させてもらったよ。僕に渡したかったんでしょ?」
「……っち。なんであんたが……」
怖い、と先週までなら感じていたかもしれない。
でも、海からの帰り道までに絢香さんから薬の中毒者について色々と教えてもらった。
そのお陰もあってか、香澄の態度が急変したことにも動揺することはない。
「野田さんまで騙して、この事知った時泣いてたよ?」
「なんで、なんで真帆にまで言ったのよ! それにどうやってそのノートを……ってまさか、私の部屋に? でも、どうして? なんでお母さん達はアンタを……」
「おばさん達は旅行中だったのもう忘れちゃったの?」
「あ……」
記憶力。思考力の低下。
目先の目的のためならば手段を問わない、猟奇的な犯罪者だと思って対応しなさい。と、絢香さんは言っていた。
実際にその光景を目にすると、どこか悲しくなってくる。
「ねぇ香澄。香澄が薬に手を出したのが……」
「私は嫌だった。でも和人が……」
「そう。そうだとしても、悪いのは香澄だ。それくらいは今の君でも分かるだろう?」
「うん。ごめんn……」
「謝罪を求めてるわけじゃない。それに僕に謝ってどうするんだよ?」
「……怖い。涼太、怖いよ」
怖い? 何が?
自分が責められるのが怖いのか? それとも僕がこの事を誰かにいう可能性が怖いのか?
ただ分かることは一つ。香澄は、自分自身を怖がっている様子は微塵もない。
薬に溺れていた、自分自身を嫌悪する事は今の彼女には到底不可能だ。
「僕にした事はこの際どうでもいい。それはとうに終わった事だからね。でも、野田さんやおじさんおばさんには謝ってあげてくれよ。みんな香澄が昔のままだと思っていて、結果騙されるような形になっているんだから」
「…………私は、なんで、なんで……」
「なんで、どうした?」
「どうして、涼太は今ここに来てくれたの?」
話を逸らした……わけじゃないかもしれない。
「香澄が心配だからだよ。それは嘘じゃない。同情してるわけでも、好きなわけでも、大切に思っているわけでもない。でも、なんとなく心配だから来た。だって香澄は今一人でしょ?」
「……うん」
その返事は、昔に一度だけ聞いたことのある香澄の涙声だった。
どこかに残っている昔の香澄が、今の香澄の目に涙を生成している。
僕が好きだった頃の香澄が。野田さんが信じていた頃の香澄が。
そう考えて、無性に悔しくなったのは何故だろうか。
使用者の浅慮も大きな原因だけど、それ以上に薬が与える影響は計り知れない。
こんなものがなければ、香澄は何も失わずに済んだ筈だ。
事故の怪我で今後まともに歩くこともできない。
これから先も薬を使っていた頃の後遺症のせいで苦労をする。
そして何より、誰も香澄の側にはいてくれなくなる。
香澄が特別な人ではない今も、ただ一人の人間が薬によって人生を失うのに無性に腹が立っている。
「だからさ。頑張って。ただそれを言いに来ただけだから。どんなに苦しくても、たとえ誰も助けてくれなくても絶対になんとかなるから。僕はみんなに助けられたけど、きっと大丈夫だから。だから、ね?」
「……うん。ありがと、涼太」
「じゃあ僕はもう行くから。もしまた会うことがあったら、その時は普通の香澄に会える事を願ってるよ。バイバイ」
「ありがと。本当に……ありがと」
ガラガラ、とドアを閉め、僕は真っ暗な廊下を一人で進み始めた。
名倉先生はどうやら他の用があるみたいだ。でも、今は丁度いい。
あれだけ怖かった孤独。でも今、それを一番欲しているのは不思議だな。
これも成長の一つなんだろうか。
それとも、覚悟の現れなんだろうか。
もしかしたらそのどちらでもあるのかも知れない。
ただのヘタレな僕が、誰かに感謝される。
それが元彼女であったとしても、どちらかと言えば嫌いかも知れない人物からであっても、とても嬉しい事だった。
それに、絢香さんは色々と冗談を言っているよわけでもないようだし、そういう道を進路先として一考する価値はあるかもな。
人生経験以外で得たこの感情。
怒り。
表で活躍する医者もカッコイイし、立派だと思う。
でも裏の仕事の方が、僕のやりたい事を達成できそうだ。
現実と真実のように表裏一体な役割。
社会の統制に不可欠で、誰も知らない部分で互いに手を取り合っている仕組み。
だからこそ僕は、絢香さんからのオファーを受けることを心に決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます