初夜の語らい
@reguman
第1話
「はぁ~、お兄ちゃんカッコよかった……」
「幸せそうないい顔だったよな」
「悔しいけど。悔しくてたまらないけど、認めざるをえない。あの顔を見させてくれただけでも、あの女を生かしておいた価値はあった」
今日、お兄ちゃんが結婚した。
ずっと一緒だった最愛の男性は、他人のモノとなった。
極度のブラコンと呼ばれようが、ヤンデルと言われようが、お兄ちゃんへの想いは増すばかりだった。
誰にも話したことはないけれど、何度かはお兄ちゃんに迫ったこともある。
結果?聞くな。お兄ちゃんに説得されたら、それ以上迫ることなんてできないんだから……
「お前、それ俺の前で言うかね……」
「……だって、あなただって思ってるじゃない。『姉貴の幸せそうな顔を見させてくれる。それだけがあの男の存在意義だ』って」
今日、姉貴が結婚した。
ずっと一緒だった最愛の女性は、他人のモノとなった。
産まれた時から側にいてくれた姉貴。
俺が泣いた時、姉貴が泣いた時、いつも一緒だった。
俺が笑った時、姉貴が笑った時、いつもいつも一緒だった。
「さて、こんな日は二人で傷を抉りあいましょ?」
「酒が入ると割といつも抉りあってるよな?初対面のあの日のこと」
「最愛の姉貴のデート現場に鉢合わせてしまった俺」
「最愛のお兄ちゃんの横にいる女に食って掛かっていく私」
「最愛の姉貴に罵詈雑言を浴びせる女を見つけた俺」
「最愛のお兄ちゃんと二人きりで歩いていた女にOHANASHIしている私」
「最愛の姉貴の前に立ちはだかる男を睨みながら、涙目になってる女をなだめた俺」
「最愛のお兄ちゃんを睨みつける男に殴り掛かった私」
「目が覚めたら最愛の姉貴に膝枕してもらってた俺」
「それまでずっと最愛のお兄ちゃんにOHANASHIされた私」
「説教されてるのに悦んでる女に引いた俺」
「目を覚ました"同士"に微笑みかける私」
「狂気の笑みに引いた俺」
「もう離さない」
「離しきれなかった……」
「私にとっては都合がよかったのよ」
「はいはい、どうせ俺は"都合のいい男"ですよー」
「あの女とあなたは一心同体だった」
「二卵性双生児なのになんでこんなに、ってねー」
「私はお兄ちゃんのことが一番好き」
「俺は姉貴のことが一番好き」
「あなたのことは、二番目くらいには、好き」
「お前のことは、そうだな、二番目くらいには好きになった」
「そうなるように差し向けた」
「策士。いつか策に溺れろ」
「お兄ちゃんからの愛にいつも溺れてるから平気」
「まぁ、俺にとっても都合よかったのは確か」
「うちだって言われてたよ、二卵性双生児じゃなくて一卵性双生児の間違いだろって」
「お前がいる所にはあの男がいて、その隣には姉貴がいる」
「あなたがいる所にはあの女がいて、その隣にはお兄ちゃんがいる」
「ならば、それぞれが結婚しちゃえば全て解決!」
「あなたこそ策士よ。なんでこんなこと思いつくのか」
「『一番好きな人よりも、二番目に好きな人と結婚しろ』って聞いたから。そして、あの男が一番好きなのはお前のことで、姉貴が一番好きなのは俺のことで」
「二人がデートしてたのは、妹自慢と弟自慢で話が盛り上がったから、ね」
2組の二卵性双生児による合同結婚式。
兄と姉。
妹と弟。
費用と手間を軽減するため、という名目で身内のみで行われる中、最も輝いていたのは兄妹・姉弟の笑顔であった。
初夜の語らい @reguman
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