虚実の戦闘(ユウゾウ視点でお送りします。)

「ロレンの野郎、中々粋な技を使いやがる。」


ユウゾウはロレンが何故野生の氣を用いて行ったのかは追求せず。ロレンがこの技をした意図をつかみ取った。


「こりゃあレナにはきついかもな。」


二人の師として弟子であり家族の二人がどういう生活をしてきたかは再会したときに感じ取れた。その意味では明らかにレナの場数の少なさは目に見えていた。そしてロレンの今しがた使った技の恐ろしさは自分であっても好んで相手取りしたくはないと思わせるものだった。そしてレナは身をもって知ることとなる。


恐ろしすぎるその技の本質を。


雨と共に紛れたロレンとファニの気配は残像を残しながら走っていくことでさらに紛れ込み分身のように見えた。観客でさえロレンたちが分身したように見えていた。観客よりも遥か上の動体視力を持つ二人は観客たちが3つの分身に見えるのに対しその約四倍13の分身を目で無意識に追っていた。


「[炎舞・人虎一体]」


ユウゾウは千と一体となり視野を広げることで本物との見分けまではいかないが気配による幻覚と残像による実体の区別はつくようにした。


「マッコリ[ラブする血筋ロマンス]」


俺はなるほどと思った。あのブラコンのレナのことだ、必ずロレンの実態と匂いを嗅ぎつけるだろうと自分が見たあの技はロレンの血筋を見つけるためだけに作った技。ある意味反則的なのだがこの国にいるがどこにいるか察知できるようにした。


「だが、ちっファニの分体と石が混じっていやがる。」


幻覚と理解していてもそこに実体のある小さなものを一緒に投げられてはこちらもづらい。さらに言うならば石やファニの分体一つ一つに幻覚の動きに合わせたものの起動と完全なる死角から放たれる攻撃を合わせたものをなにもないただの幻覚を織り交ぜ完全ランダムで繰り出される攻撃は絶対不可避の攻撃だった。


「本体の隠し方もうまい。」


攻撃しそうなときに攻撃せず攻撃されないと思いやすい防御されているところに重い一撃を本体が行っていくことで虚実を交えた戦闘という高度な戦い方をしていた。


「だけど、あまいぜロレン。」


地面を見つつロレンが来るであろう軌道線上にバレないようにこっそりと石を置いていくことでロレンを転倒させた。


そしてレナはロレンにそのまま攻撃を仕掛けにかかった。


「マッコリ[ホワイトクリムゾンニードル]」


乳の凝固成分のみを抽出したコラーゲンの塊が鋭い針となってロレンを突き刺した。


だがそれらは全て偽物だった。


「強くなったなあロレン。」


俺は死ぬほど喜んだ。弟子が師を乗り越える瞬間が見れるのかもしれない。それが今の楽しみだから。

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