圧倒的暴力

超技巧を使い飜弄していくロレンだがこれも長くは続かないと分かっていた。


それをねじ伏せるだけの力を持った年長者がそこにいるのだから。


「千[閻]」


漆黒に包まれた炎をユウゾウと共に纏う千。


その地獄の獄炎はステージ全てを溶かし尽くしロレン達の攻撃を止めた。


足場が悪くなり足音と足跡がついてしまい意味が無いと判断したからだ。


「マッコリ[凝固靴]」


レナはマッコリの乳の成分から靴を作り出す。靴の構造は弾力性のあるゼラチン質と脂肪を泡立てて空気の入るようにしつつ強度を確保、熱にある程度耐性を持つ靴を作り出すことで岩からくる伝導作用による火傷を防止する。いわゆるケロイド状態の皮膚を靴として再現していた。


「こりゃあ危ねえな。」


ロレンとファニは宙に浮いていた。ほんの数センチの熱が伝わりにくいように浮いていた。莫大な静電気を発生させ巨大な地球に匹敵する磁力を作り出すことでリニアモーターカーと同じ原理でその都度、磁極と磁界の大きさを変化させることで一定の間隔で浮くことを可能にしていた。


「おいおい二人ともそれで終わりか?」


ここからはユウゾウの時間だった。炎がすべてを蹂躙していく。一歩歩くだけでそこはマグマとなり危険地帯が増えていく。また、一太刀千の凶爪を振るえば地面が割れそこから噴射される熱地獄の津波が発生する。


観客たちはその地獄絵図のような芸術的ながらも恐怖の象徴にふさわしき姿を見て固唾を呑んだ。


「これがプロ冒険者最高峰のRランク、国滅の力なのか。」


観客の誰かが言った。


「圧倒的な暴力じゃないか。」


まさに弱い者いじめにしか見えない。そんな感想が観客たちに伝播する。


「ふ、勝手なこと言ってくれるな。」


「そうね、ロレン。」


二人は話す。こんなことは自分たちにとっては


「「幼少時の修行の一貫。」」


そう、二人は既に経験済みだ。


この程度の暴力は圧倒的とは言わない。むしろここからが正念場だ。


「たくましくなったな二人とも。だがまだ倒されるわけにはいかないぜ。」


さらなる火力をもった漆黒の炎玉がロレンたちに襲い狂う。


だが二人の目は諦めていなかった。


「ファニ[0/0answer][葉黒体生成]プラス[魔桜まおう創造]」


ロレンはフェスタの試合の時に見せた光エネルギーを根こそぎ奪う技を使用した。


「甘すぎるぜ、ロレン。」


そう漆黒では光エネルギーは生成されない。そのため葉黒体では魔桜を生やすことはできず苗木までしか育たなかった。


少しだけがロレンは顔をゆがめた。


だが、その目は何かに賭けていた。この圧倒的な暴力を前にしてたった一つのクモの糸と言う名の活路を見出すために。 

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