我が心、神鳴りの如しされど静かに敵を制す

開始位置に歩いて行く。互いにパートナーは一匹ずつ。俺はファニ、レナ姉はマッコリ、父は千だ。


フィールドは岩石砂漠と銘打っているがその岩盤は本来の岩石砂漠よりも柔らかい。それによって足に入れる最適な力の幅が変わる。それに気づいているのは恐らく俺を含めた3人ともだろう。


だから、俺は感情を高揚させる。今回は野生に身を任せる。


「ファニ、楽しもうぜ!」


ムギュ


ファニはロレンに抱きしめられることで気分が頂点に達した。


プルプルと可愛いらしく震えてロレンを抱きしめ返した。


ムギューー!


ナデナデ


さらに追い討ちでナデナデするロレン。


「それでは試合開始!」


そしてその瞬間、ロレンとファニの氣当たりを感じ取った父とレナが各々の最高出力のわさを放ってきた。


「千[炎創魔風波]」


恒星の爆発、超新星爆発に匹敵する熱量を一点に留めた即死不可避の光のシャボン玉を放った。


「マッコリ[コロナインフルエンザ]」


人に感染するウイルスに置いて風邪と呼ばれる者は沢山あるがコロナとインフルエンザに限ってはその進化速度が尋常ではなく。それをスライムの技術によって合成し操ることで空気、紫外線にも適応した極悪なウイルスで包まれた毒素を集合体を放った。


「最高だぜ。」


そして野生に身を任せ切った2つの魂は恐ろしく柔らかな手つきで二つの攻撃をいなし続けた。


全てを上に向けて。


それは野生による五感を超えた第六感、名を勘。野生は幾たびの経験を遺伝子に刻み込みそれを引き出す手段として勘を用いた。


人は勘を失う対価として知性を手に入れた。知性は野生を理性に変えさせた。しかし幾ら知性を持ったとしてもこの超高温のウイルス空間に耐え切る術は思い浮かばない。


だがロレンの野生の勘は知っていた。幾多の遺伝子の経験が現在のロレンの行動へと導いたのだ。


そしてその行動は圧縮した力を爆発させ止まっていた大気を押し上げた。熱エネルギーは度重なる爆発により酸素原子を作り出し大気圏に突入すると一気にオゾン層にまで成長した。


ウイルス達は酸素を失い死滅した。


そしてその押し上げられた空気は高気圧に変わり雨を降らせる。


「ファニこっちからも行くぜ。」


雨に紛れ気配を分散させていく。観客達は見た。


ロレンが分身している様を


「こりゃあ氣当たりの極地か。それを理性の氣でやるならともかく野生の荒々しい氣でやるとは氣の定義すらひっくり返すことだぞ。」


義父ユウゾウはロレンの行った所業を理解した。同じく氣を操る人物であるユウゾウはその操り方の定義をよく理解していた。


人間が闘うに辺り基本的にどのような戦闘をするかを考えながら行い内に秘めるように氣を使うことを理性の氣と呼び本能を呼び覚まし野生のままに氣を曝け出して闘うことを野生の氣と呼ぶ。


ロレンの行った行為は通常考え無ければ行えない、理性の氣でしか成し得ないことを野生の氣でやったということだった。

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