プロによる試合

「司会者が倒れたため一時中断しましたが代替えして再開致します。先ずは実力、プロ冒険者ならではの実力をバトルロイヤルで行っていただきます。」


(ロレン、レナ、これは本気でやらんでいい。業魔は使うな。)


父が小声で話しかけてきた。正確には腹話術のような技術を用いて。


(つまりは派手な技を優先的に使うのか?)


ロレンはファニを用いて話していた。


(あくまで普通の一般人にもわかるレベルじゃないと意味が無いしな。言われなくてもわかっていると思うがバレてもいいの使えよ。)


ロレンとレナは小さくうなずく。


「では試合はこの特設闘技場、地形は岩石砂漠です。」


隠れるところがまるでない岩山が隆起した。


「互いに意気込みのほどをお願いします。」


司会者は父にマイクを向けた。


「まあ、ロレン達がどれほど育ったか見てやるさ。」


「流石2人を育てた父にして師というところでしょうか。何とも偉大な師ですね。そんな師を前にして立ち向かうお二人の意気込みも聞いて見ましょう。ではロレンさんから。」


今度はロレンにマイクを向けた。


「……………。」


「ロレンさん?」


ロレンは押し黙っていた。ファニもツンツンと触手で叩いていた。それと共に会場も静かになった。


「頂きは高いぞ。」


半分威圧気味に放たれたその言葉は恐ろしいほどまでに力強く、柔らかな孫を愛でる祖父のような声音でゆっくりと時を経たせる重厚な芯のある出だし。

静まった会場の1人がゴクリと唾を飲み込んだ。


「ここの景色を見に来い。」


最後は言葉の圧力を頂点にまで達して会場全てに、テレビで見ているであろう国民にも届くように空気が歪むくらいに響き渡った。辺りが再び静寂に包まれた時、ロレンは拳を上げた。それがきっかけとなった。


「「「Waaaaaaaaa!!!!!!!!」」」


人という人が叫び出す。会場は大熱狂になる。プロという頂きが今この場で観れるということがどんなに貴重かを理解したからだ。そしてこの男の言うことは確実な真実だと重く受け止めた者もいた。


「ロレンさんの後に聞くのも申し訳ない気がしますがレナさん。」


恐れ多いと言った感じでレナにマイクを向けた。


「観なくていい感じて。」


レナの言葉も、力が篭ったいい言葉であった。その言葉は観るのではなく身体全てで感じて欲しいというメッセージ。会場の人間はそれを飲み込んだ。


「それでは勝負を始めます!」


今ここに国滅の名にふさわしい実力を持つ者達が試合をする。試合とはいえこの闘いはマライア王国において歴史に名を残すものだと言うことを国民全てが予感した。

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